なぜ、フォニックス学習が英語習得に有効かと注意点

mpiは、日本に初めてフォニックス学習を紹介した機関です。それから、長く、「日本人の子どもたちのための教材、カリキュラム作り」を実践してきています。

★ なぜ、フォニックス学習が英語習得に有効か。

1、英語語彙は、「音」が主なものである。

人の記憶は、音からが一番残りやすいと言われることがあります。もちろん、目の記憶、においの記憶、動作の記憶などもありますが、CMの歌など、知らず知らずに覚えてしまうことがあります。

特に英語は、絵のような成り立ちの漢字と違い視覚としてアルファベットの組み合わせを目で見て覚えることはできず、実は、音の記憶として、頭に蓄積されています。英語を黙読する時であっても、頭の中で、つづりを音になおして、頭の中の辞書で検索していると言われます。「文字を音になおせば、意味が即座にわかる仕組み」です。初めて読む単語でも、「音にしたときに知っている単語」であれば、意味はわかります。

その「文字と音の関係のルール」がフォニックスルールです。

2、初めて文字に接した単語も音になおせたら、音で聞いたことがある単語の意味がわかり、自分で本をどんどん読んでいける

本を読めるということは、英語語彙の幅を自分で広げていけるということです。読書というのは、いろんなことを自分でしていける機会です。 文字を音になおせ、知っている単語と認識でき、その力で、新しい語彙を「音」としても、インプットできる素晴らしい英語練習機会です。

3、文字を音のルールでインプットすることで、書く時に役立てる。

「たかかが英語のつづり、これが英語力の第一歩、単語を書くテストで満点がとれないのは、努力不足。英語力が無い」と心配される保護者が多いです。しかし、英語は、フォニックスルールで解決できる単語の他、外来語も多く、それらの単語は、つづりが不規則で、それらの単語は、それぞれを覚えなくてはなりません。 「たくさんの漢字が書けることが賢い証拠」となっているのかもしれませんが、「たくさんの英語単語が正確に書けないとこまる」というのは、「単語テスト」だけで、社会に出るとパソコンでつづりチェックができます。もちろん、正しいかどうかの判断もパソコンでチェックできます。センター試験に「英単語を書くテスト」は無く、次世代共通試験のライテイングでも、きっと「つづり間違いの単語で引かれる点数」は、高くないと思います。

それでも、フォニックスルールで習得できた単語は、長期記憶としてインプットできるので、書く時にとても役にたちます。ただし、ルールをしっかりインプットしていたらのことです。

4、フォニックスは、聞いたり、話したりする時にも役に立つ

大昔、とても有名な進学校の英語の先生が、「手が覚えるから、音はいらない」と言ったと聞いたことことがあります。また、「日本語英語で困らない」と言う人もいますが、子音に母音がついている日本語英語で話せば、やはり、何を言っているかわからないと思いますし、なにより、「相手の英語がわからない」という現象です。

今の社会では、人と心を通わすコミュニケーションがとても大事であり、それは、母国語だけにとどまりません。 「もう、翻訳機械があるから」と実際に話す必要が無いと安心されている大人はいると思いますが、「難しい情報は翻訳機械で伝えても」、心を通じ合う会話を翻訳機でできるでしょうか。

「ばりばりの日本語英語でも、話さないよりは話したほうがまし」というのは、「音声学習をしっかりする機会にめぐまれなかった大人」には、通用することでしょうが、スマフォを使えば、英語が聞こえる現代で、「日本語英語でいいと育った」子どもと「英語で心を通わすことができる練習を重ねてきた」子どもでは、将来、立っている場所が違う気がします。

フォニックス学習で、英語の基礎の音をしっかり練習すれば、きちんと聞こえる耳ができます。話すときにも役立ちます。

★ フォニックス練習の注意点。

母国語を「ひらがなを書けることから習得した」という人は、いません。話さずに読めたり、書けたりしていることもなく、また、「日本語文法を知っている」だけで、日本語を話せる方もいないです。まず、たくさんの「音のインプット」があって、話せるようになっていきます。

1、英語の音の練習から始める。

フォニックス学習を中学1年生で取り入れている学校は、現在、とても多いです。しかし、フォニックスルール習得には、時間がかかります。なんとなくサーと終わらせても習得には、いたりません。まず、ルールを知っても、それを役にたてるには、その音の組み合わせの単語を「音として習得している」必要もあります。

本格的に明示的インプットでフォニックスを始めるのは、英語世界でも小学校に入ってからが多いですが、それまでに子どもたちは、「たくさんの英語を知っている」という条件がついています。 意味もわかって音として知っていることばを「文字と結び付ける」ことで、ルールを習得していきます。

日本の生徒たちであっても、「たくさんの英語の音が聞ける、まねできる、言える、意味は分かる」という条件が整っていて、フォニックスルールへと進めます。

英語は、リズムが大事です。そのリズムを習得したり、音に慣れたり、たくさんの英語を知るためには、「英語の歌」、「英語の絵本」がとても有効です。

13歳で、「むすんでひらいて」の英語の歌を歌いたくないと思いますが、英語を話す子どもたちであっても、まずは、こういう歌からスタートして、「英語が話せる口」を作っていきます。日本人にとっては、英語の音と日本語の音は、完全に違うので、口の形を作る練習から始めます。

2、生徒によって、習得の進度は様々。

第二言語習得成功者の資質として

1、言語分析能力が優れている 2、音声認識能力が優れている 3、記憶力が優れている

と言われることがありますが、生来の資質として考える場合とその資質が現れるきっかけがあるということもあるようです。教室で同じ練習をしてもインプットできる量が違うかもですが、生徒それぞれの習得速度で身に着けていきます。

★ 日本で英語を習得しようとしていることについて。

海外で暮らし始めた思春期前の子どもたちが、自宅で母国語、学校で英語の2言語の環境になった時に、

{1年目  英語を聞くだけで話さない  2年目  少し、聞こえる英語がわかりだす   3年目  日常会話ならできるようになる  5年目 やっと学校の授業がわかるようになる}

と言う調査結果もあります。 これは、「英語を使って暮らしていくために必要なレベルを目指している」ということで、「日本で英語を習っている目標」とは違いますが、「英会話教室に行かせたら、すぐにぺらぺらになる」という幻想をいだけないと思います。

さて、「今は、ネットで1対1の英語学習方法があるから、それをさせれば、ぺらぺらになる」と思われている保護者もいると思いますが、「2000時間の英語インプット時間の多聴英語学習方法、100万語以上を読むことを目指す多読学習方法」という観点からも、短い時間、英語話者と話したら、「英語がぺらぺらになる」ということが起こりえるのかと考えてもいいと思います。フォニックス学習のためにも、たくさんの英語インプット時間が必要です。そのために、自宅練習がちゃんとできる「自立した学習」に、生徒たちがなっていくことが、とても大事なことです。

また、フォニックスルールを学習するだけが、英語習得ではありませんので、

「英語の単語、フレーズ練習機械があるから、それで、たくさん練習するだけ、英語単語を書けるようになり、英語文を覚えたらいい」というお考えの保護者もいらっしゃると思いますが、英語も人のことばです。人と話せる英語でなければ、役にたちません。

英語習得では、

◎英語を知っていること  ◎英語を使えること

の両方が必要です。 たくさんの時間、英語でコミュニケーションを実際にすることで、英語を使える力がつきます。

「英語授業と自宅英語環境の連携」で、「第二言語習得順序に沿ったステップバイステップのカリキュラム」を上っていくことで、少しずついろんなことができていくと考えるのが自然だと思っています。

最後になりましたが、まず、母語がしっかりし、自立した学習者であり、テイームワークができる思いやりのある人間になることが、いろんな文化の違いがある人と英語というツールを使って交流できると思います。