耳からインプットし、口でもインプットするということ

突然ですが、まだ、10年前ぐらいの話です。塾の先生が「英語の音が聞けたり、言えたりなんて、あとで、できることは、今は必要ありません。」と言われました。

「ただ、問題が解けて、書けたらそれでいいんです。」と。

そんな音の無い苦しい英語学習をこなせるのは、よっぽどそういうことを得意とする生徒だけだと思います。

口で繰り返すかわりに書いて覚えるという人たちもいます。その時に、心の中で英語を音にしながら学習していると思いますが、その音は、日本語英語になっているかもしれません。

音の訓練を受けていないと「英語を日本語英語の音にして」学習すると、とても楽です。

すると、本当の英語の音を聞き取る力は養われないままです。

実は、とっても無駄な時間の過ごし方になっています。

もし、はじめから英語の音に慣れていて、「あとですればいいんです」と言われ、結局「できない」ことになってしまう力を、先につけておけば、どんなに楽でしょうか。

もちろん、音を身に着けるということは、「普段の生活の中に取り入れる」工夫が必要です。

幼児さんたちなら、「ママと楽しく遊ぶ時間」と思って英語の歌を歌ったり、低学年なら、「ママに褒めらることをしている時間」と思ってCD学習をしたり、中学年なら「教室で友達と会話を楽しむために練習している時間」と英語を練習する。

そんな風に生活に英語を取り入れるのが成功の秘訣と思っています。

耳からインプットし、口でもインプットできる力が高学年になるとついて、そこに文字が加わることで、五感からインプットする力の基礎ができていくと思います。

ひたすら繰り返すとどうなるか?

当教室の小学4年生と5年生。昨年の奈良県で行った英語発表会でスピーチをしました。毎週、スピーチアドベンチャー1と2で、少しずつ言える英語を増やしていき、最後の、発表に向け、皮膚感覚になるまで、練習を重ねました。

これは、自分について語るというスピーチでした。

先週、体験授業に来た生徒に向け、自己紹介をさせたところ、さらさらとこのスピーチが口をついて出てきました。11月末にスピーチをしてから、一度も、口にしていなかった英文10文以上です。

一度、しっかり定着した英語なら、しばらく話していなくても、ちゃんと使えるということです。それまでに、数えきれないほど口にしている英文たちだから、こんなことができています。

ここまで、繰り返さなければ、穴があいたバケツの水です。

しかし、これらの英文は話していなくても、毎週、英語自体は、話しています。サラサラ言える口ができています。

第二言語習得の鍵は、「言える口」と「繰り返す」ということが基本です。

ひたすら繰り返すということ

私たちが日本語を習得するには、同じ言い回しを本当に数えきれないくらい、聞いたり、使ったり、読んだり、書いたり。

それなのに、英語をマスターしようとしたとき、「一回授業で教えたから覚えて当たり前」となってしまうのは、どうしてでしょうか?

インプットされたことは、定着するまで、繰り返さなければ、すぐに無くなってしまいます。穴が空いたバケツに水を入れ続けるようなものです。

「だから、幼児から、小学校からする必要はないですね」という声も聞きます。

なぜ幼児さんから、英語をするのでしょうか。それは、言語は、文字だけではありません。音があるのです。英語の音は、日本語の音と違います。つまり、アルファベットの音素は、日本語には、無い音ばかりです。また、日本語とは違う世界に入るには、とても勇気のいることです。大変な異文化交流です。その気持ちも育てられます。

音をマスターするのは、小さいうちがベストです。ただし、やめない覚悟がいります。2、3ヶ月でも、音を聞かさなければ、すぐに忘れてしまいます。

当教室で、すばらしい音が出せるのは、年少さんクラスのみんなです。アヒルの鳴き声が入っている絵本を一緒に読んでいて、クワ、クワと叫んでいますが、実は、破裂音(k)の音の練習をしています。のどを使う音で、日本語にはありません。これは、英語を発音するための「のどの器官」を鍛えています。でも、楽しくてしている行為です。

これを高校3年生、英語発音訓練0の生徒にさせても、できないばかりか「したくない」と顔を書いてありました。

しかし、幼児さんでも、うまく英語世界に入れないと、「逃げたい」というのが本当の気持ちのようです。無理をさせないのが大事。4,5歳さんで、もう、違いが出ています。

そんな音訓練満載の歌を歌って楽しめる年齢で、どんどん正しい音の英語をインプットしていけるのが小学1,2、3年生。しかし、1年生でも、初めて英語世界に来ると「ぴっくりして、こわくて、逃げたくて、パニック」になる生徒もいて、かわいそうです。

そして、そろそろ、英語が話したくてしょうがなくなっているのが、3,4年生。しかし、歌の訓練をしてきていないと、日本語英語になってしまいます。

5年生になると、文字を写したり、読んだりがしたくなり、初めて英語音声に触れた生徒は、もう拒否感いっぱいになる場合もあります。「英語を学ぼうとする気持ちを育てる」が、文科省が定めた小学校の指導目標の一つです。

ひたすら繰り返す、それしか無いのですが、つまり、日常生活に入れてしまうしかありません。国際語が我が家でいつも聞こえている。ご家庭にも国際化の波が来てしまいます。これは保護者の方にも、大変なことだと思います。負担と感じるご家庭と、ラッキーと感じるご家庭があるかもしれません。

それぞれのご家庭のご事情に合わされるのが、無理なく繰り返す環境を作ることになるのではと思います。

外国人が日本語を習得する時

私は、イギリスで日本語を教えていた時期があります。イギリス人が日本語を習得する時、文字は、とても、難しい領域です。基本、外国人が日本語をマスターする最初は、「話す」という行為からです。

文字は、ひらがなにしろ、漢字にしろ、とても負荷が高いものです。それを習得してから、日本語を学ぼうという人は、ほとんどいないと思います。

話せること、聞けること、アルファベット化されたものを読むこと、そして、ひらがなをマスターすること、漢字へとの段階です。

日本人のように、「まず、文字を覚えて」ということしか、言語をマスターできないとう事情は、他の国では見られない現象かもしれません。

イギリスで、ペラペラと英語を話すイギリス人以外の人で、「英語が読めない、書けない」人は、たくさんいます。

その認識を持った時、語学の習得は音声からという考え方がすっと理解できてもらえるかなとご紹介しました。

音声からのインプットに支障が無くなると、インプット量が大幅に増えます。もちろん、本を読めるようになることもそうです。mpiメソッドは、インプット量を増やすことが、語学習得に欠かせないという基本的な言語習得の理論に基づいています。

保護者の方々には、「自分たちが英語を学んできた環境と今は違う」とご理解いただければ、嬉しいです。

模写という練習

自分で自由に英語を書けるというスキル獲得には、

1、書きたいことがあること
2、書きたいことの英語が言えること
3、言える英語を文字にすることができること
4、単語のつづりを速く書けること
5、アルファベットを速く書けること

が必要と思います。

5と6の練習は、自由に英語を書くための大切な要素ですが、練習を楽しく、繰り返しさせることが、必要です。5と6は、小学生でも楽しめる領域です。

模写をさせているのは、そのためです。

中学生以降は、この「書く」力が優れているのではと、私自身は思っています。6年生までは、本当に個人差があり、その個人差に応じた指導が不可欠と思っています。

毎日英語を書く時間がある場合とたまにししか書かない場合。1~5のどの部分を鍛えるかを選ぶことは、指導の点で、留意しています・

英語で書く作文について

mpi教材では、レベル4になると英文を書かせることをしていきます。

それは、十分に言えるようになった英文を書いてみるということです。フォニックスルールの応用だったり、もちろん英文習得のための練習だったりします。

しかし、では、いつも、それが書けるようになるのを目指しているかというと、目的はそこにあるわけではないかなと私自身は思っています。6年生までの目的は、「英作文ができる生徒を育てる」ことではなく、それまでの準備をする段階と認識しています。

我が家の子どもたちが、英国で、現地私立小学校でお世話になった時に、5歳であっても絵日記(英語)を毎日、授業で書いていました。毎日、英語の中にいて、毎日、英語を書いているという中で、少しずつ覚えていっていたと思います。

しかし、小学校6年生までは、日本では、そういう環境にいるわけではありません。中学になると英語が日常となります。音声インプットをしっかりしてきた生徒たちは、「書く」ということだけに集中できるので、どんどん書いていけるのではと思っています。

英語を読むということ

小学1年生が文字を覚えた時に、「さあ、絵本は自分で読んでね」と渡しても、読めません。初めは、「あ・か・お・に・が・・・」としか読めないからです。「あかおにが・・・」と読めるようになるまでには、練習が必要です。

フォニックスで英語の単語を読めるようになるには、

1、単語の音声を聞いた時に、音がわかり、意味がわかっていること
2、単語の音の成り立ちに気づけるということ。
3、単語のつづりのルールを知っているということ(フォニックスルール)
4、いろんなフォニックスルールが使えるということ
5、単語を音声化し、すぐに何の意味か認識できること
6、知らない単語でも音声化できること
7、すぐに音声化できること
8、実際に本をしっかり読んでいくこと

の段階が必要です。当教室では、6までを終了したら、7の訓練のために、フォニックストランプを使用しています。文字認識の訓練です。子どもたちは、これが大好きです。

当教室では、「遊ばせるためにゲーム」をすることはありません。「ある目的を達成させるための活動」としてゲームをしています。子どもたちは、楽しみながらスキルを獲得していきます。

英語も人のことばです。私たちが母語を習得してきたと同じように、様々な力が必要です。

この7の力は、高校生が長文を読むときに本当に必要です。「正しく速く音声化できること」が速く読むには欠かせません。これができないので、読むことができない生徒もいます。(黙読をしている時も心の中で文字を音声化しています。単語の意味を頭の中で検索する時に、音声情報が欠かせません。)

「英語学習というものは、単語が書けて、文法が分かって、和訳ができること」という認識がまだまだ定着していることに驚くことがあります。
また、学校英語という領域でだけ学習していると生徒たちの認識も大学生になって「もっと英語の音が聞けたり、言えたりしたら良かったのに」と嘆くまで、気づかない生徒も多いと思います。

英語を習得するために「書く」ということ

私たちが英語学習をしてきた中で「書かないと覚えられませんよ」とよく言われました。書くことがあって、英語を習得できたのでしょうか?

五感を使って覚えるということが、今、有効な手段だとわかってきました。「書く」という行為は、手を使って作業をするということで、五感の中の領域です。英語を習得する中で、「聞く」「読む」「話す」「意味を理解している」「使う」などなど五感を使うことは、たくさんあります。「書く」はその中の一つと思います。

書くことが好きな生徒は、きれいに英語を写してきます。しかし、英語がわかってしているわけではなく、また、それを使える力ではありません。

その英語が、「聞けて」「言えて」「使えて(意味がわかって)」「つづりのルールがわかって」書いているのであれば、習得するための手助けに「書く」こともなっていると思います。

私たちのカリキュラムでは、高学年には、書くことをさせます。それは、文字に興味が出て、また、覚えていく手助けにもなる時期だからです。でも、それまでに、たくさん音の世界を経験しているから、書いている英文も心に残っていきます。