児童が生き生きする「読み」の指導
2009年4月2日
児童が生き生きする「読み」の指導
~立命館小学校での実践から~
MPIアカデミックコンサルタント
立命館小学校英語科アドバイザー
田縁眞弓
レポート:小学校英語の現場から
3.読みの実践からわかったこと
上述した読みの指導の実践を経て、学習経験を2年経た4年生の半数近くが、語数73語の英語の本をスラスラ音読でき、単語レベルでは全員が読みを始めたということが、昨春の調査によって判明している(2008 小学校英語学会 田縁 岡本)。また、特記すべきことは、歌やチャンツを大きな声で歌うことやゲームのようなアクティビティを苦手とする子どもたちが、こういった読みの指導そのものや、またそれを通して獲得した知識をよりどころに、生き生きと活動をし始めた点である。
その具体例として、次のような点があげられる。
(1) 音声だけの記憶を頼りにした場合、挨拶に加えて1往復程度の会話しかできなかった活動が、英語が読めることにより、英語で書かれた質問などのメモを頼りに、自身の本当の情報を交換するコミュニケーション活動、意味のあるやり取り(meaning interaction)へと内容が広がり深まった。
(2) 読書活動およびその後の読後活動が授業に取り込めた。そのことが、みんなで読んだお話の内容の主人公の気持ちを類推したり、自分の感想を述べたり、Show & Tellをするといった児童の知的レベルに合わせた発表活動にもつながった。

4.その後の指導

本読みを始めた子どもたちの力を、「理解を伴った読み」へと導くために行った指導を、以下にご紹介する。

1)文字を目で追わせながらの読み聞かせ
児童が絵と文字を目で追う状態で、教師が200語程度の絵本を読み聞かせした。児童の発達レベルを考慮にいれ、また内容的に興味を持たせる絵本を選んだことで、自力で読むには多少困難を感じるが、聞いて目で追えば児童たちも読んだ気になり、達成感を味わえることのできる読み聞かせ活動となった。(9か月間で4回)

2)検索読み・拾い読み
1)の活動に引き続き、「お話の振り返り」というかたちでプリント学習をした。絵本の内容を要約した英語のオリジナルプリントを配布し、教師の問いに対する答えを探し出す検索読み(scanning)、文の概要をつかむ拾い読み(skimming)を通して、“情報を得るために読む”という、異なる読みの力の育成を試みた。(9か月間で4回)

3)リスニング教材を用いた読む活動
3つないし4つの絵の選択肢を与え、教師の読む英文を聞いて内容にあった答えを選ばせるリスニングクイズの後、英文テキストを児童とともに音読しながら、ヒントとなった言葉を探して答え合わせをする。こうして聞き取りによって得た情報を、読むことで確認し答え合わせをするというかたちで、リスニングと読みを統合した活動を行った。(9か月間で10回)

4)CDを用いた家庭での反復練習
3冊の50語レベルの絵本をネィティブ教員が音読し、それをCDにして英文を添えて、長期休業期間前に児童に配布した。休み中何度も練習するよう指示した上で、休み明けに音読発表会を行なった。音読の評価が低かった児童が、この活動で自信をつけ、とても積極的に発表できるようになった。

上記の実践以外にも、児童に絵本を手渡し、これらの本を読む時間を授業内で7~10分程度とった後、ブックリポートというかたちで決められた書式に必ず感想を書いた上で、発表を行なった。

5.最後に

以上ご紹介させて頂いたような実践は、スタッフや最新の教育機器にも恵まれた私立小学校であればこそ可能だったという部分も大いにあるかと思うが、基本的なアプローチについては、民間の英語教室であれ、公立小学校における英語活動であれ、対象が小学生という学齢の子どもたちであるということから共有できる部分は多々あるのではないかと思う。

本校における3年間の実践で、文字から自立した読み、さらには読解に導くのに、特に有効だと思われた指導指針を挙げると、

その具体例として、次のような点があげられる。
(1) たくさんのABCジングル(基本・動物・食べ物・身の回りの物・動詞・国名)を使っての音韻認識と語彙習得
(2) 音声を伴ったペンマンシップ
(3) チャンツや歌などのインプットを豊富に取り入れた文字と読みの指導
(4) 読み初めの時期を逃さず始める「楽しみながら」できる読書

であった。

今回、松香フォニックス研究所所長の松香洋子氏とともに執筆させていただいたコースブック『WE CAN!』のシリーズに含まれる『We Can! Phonics Workbook 1,2,3』(英語版)(McGraw-Hill)は、上記4つの要素を十分に取り入れたものとなっている。今後、日本の子どもたちの英語の文字指導の1つの方向性を示すものになれば幸いだと思う。

*編注
『WE CAN! Phonics Workbook 1,2,3』(英語版)と『WE CAN! フォニックスワークブック 1,2,3』(日本版)  (日本版とは:英語版の英語での指示文の下に日本語訳を付記したもの)の両方を松香フォニックス研究所より発売しています。

『We Can! Phonics Workbook 1』(英語版)
「WE CAN! フォニックスワークブック 1」(日本版)