児童が生き生きする「読み」の指導
2009年4月2日
児童が生き生きする「読み」の指導
~立命館小学校での実践から~
MPIアカデミックコンサルタント
立命館小学校英語科アドバイザー
田縁眞弓
レポート:小学校英語の現場から
3)アルファベットの音素または音韻認識の指導
アルファベットの大文字や小文字の指導を、『ペンマンシップとフォニックス練習帳』を使った単なる書かせる活動とするのではなく、音と結びつけ、聞こえた英単語の語頭のアルファベットを書くといった活動にした。それに先駆け、松香フォニックス研究所の『Active Phonics』などを使い1文字1音のジングルをAからZまで26セット作成し、そのジングルをモジュールや授業の中で何度も繰り返すことで、子どもたちの1音1字の音素認識を促した。

これらの一連の活動によって、子どもたちはアルファベットには名前と音があるということを知り、それと同時に、様々なカテゴリー(動物、食べ物、身の回りのもの、動詞)をアルファベット順に並べて新出語彙として紹介した。さらに、語頭の音素を認識させるような歌、チャンツや絵本も積極的に取り入れた。 Active Phonics テキスト フォニックス・アルファベットポスター 大判

このような指導法をいわゆる初期の「フォニックス指導」と呼ぶ場合もあろうが、本校においては、フォニックスという言葉の意味する「音声と文字を結びつける」ためのルール指導というよりは、むしろ「子どもの気づきや発見を後押ししてあげるPhonemic Awareness(音韻認識)の指導」と位置づけ、これを本校の「フォニックス指導」のスタートとした。

また、授業の中では、「教える」というよりは、ジングルとして繰り返し言わせるという活動に始まり、ペアとなる2つの子音の聞き分けや、それらの文字で始まる単語集めなどを、7分から10分程度の時間の活動に収めた。その後、3文字単語(子音母音子音よりなる)がある程度読めるようになった時点で、語頭ならびに語尾の音を聞いて書き取らせる活動や、3文字からなる単語の書き取り活動もクラスで順次取り入れていった。ただし、その場面においても、中学校でよくみられるスペル重視のいわゆる「書き取りテスト」にならぬよう、必ず音声を伴った聞き取りを加えるなどの工夫を重ねた。

トップダウン指導

開校時より、本校ではたくさんの絵本やグレードリーダーを使用教材に採用している。その選択は、子どもの興味に合わせ、あまり内容が幼稚すぎず児童の学齢に合わせて知的好奇心をくすぐるもの、繰り返しがたくさんあって子どもたちが一緒に読めるもの、カラフルで楽しいもの、そしてストーリー性のあるものなどを用いてきた。

その指導形態は、(1)子どもたちを前にして教師が本を見せながら読み聞かせる、(2)デジタルボードに絵本を投影し、教師が読み聞かせる、(3)デジタルボードに投影された絵本の文字を教師と一緒に読んでみる、(4)ペアとなった児童が実際に本を手にして交互に音読をする、(5)個々の子どもが本を手にして音読をする、(6)個々の子どもが本を手にして黙読するなど、学習年数と学齢に合わせてさまざまな実践を行ってきた。

ただし、この場合の指導は、文字を音声化し「読み始める」ことだけを目的とせず、内容理解を伴った読む力の構築を最終ゴールとした。したがって、母国語話者の子どもたちを対象によく用いられ、一般的なフォニックス指導に使われる本(フォニックスのルールを示す単語ばかりを集めて書かれたもの)は、読み始めの音読活動には使ったが、その後は内容の興味深さやメッセージ性を伴った本の読みを優先するようになった。

開校当時、3年生で編入学してきた児童を対象に行った本校独自のフォニックス指導の時間数と、音読の活動に使った本の総数は、右表のとおりである。
内容 3年 4年
フォニックス指導 47/93コマ 10/90コマ
全員で音読 16冊 24冊
読み聞かせ 15冊 22冊
自由読書 30冊 31冊
文字を目で追わせての
読み聞かせ
0冊 8冊

具体的にどういった読みの指導を行ったかは、次の通りである。

音読指導の実践
10語~50語程度の短い絵本を電子ボードに映写し行う全員音読
2人に1冊の本を与えページごとに交互で助け合いながら読み上げる音読
5~6名の班に1冊の本を手渡し順に読む音読
個々が文字を指さしながら行う全員音読

教材は、松香フォニックス研究所で推薦している絵本はほぼ全タイトルを使用するとともに、引き続き、登場人物が同じでストーリーが展開していくグレードリーダー(Pearson LongmanのStory Streetシリーズ、OxfordのOxford Reading Tree)を使ったり、児童にはすでに馴染みになって暗記しているような本の要約英文プリントを作成して用いたりするなど、現場の教師が児童の様子を観察しながら工夫を加え、授業の中に適宜取り入れた。