―中学校の英語授業で『フォニックス学習』を取り入れるメリットは何でしょうか。
最大のメリットは、「小学校外国語活動」の成果を中学の英語学習に活かせることだと思います。
小学校で聴いたり真似したりして触れてきた英語(主に音を中心とした)は、実はこれから英語学習の長い道のりを歩き始めるための大切な準備運動だったことが、フォニックスを通じて実感できます。
中学英語学習入門期にフォニックス学習を取り入れることで、歌チャンツやゲーム体験を、英語を読み書く力へつなげることが可能になりました。
☆「フォニックス」とは、英語の「音」を「文字」に結びつけるためのルールです。参考記事はこちらから
―フォニックスは、中学校の勉強にどのように役立ちますか?
大きくは以下の4つに役立っています。
・既習、未習にこだわらなくなる
・どんな単語でも自分で読み解こうとする態度が育つ
・暗記が苦手な生徒に読み書きの拠り所を与えられる
・つづりの精度が上がる
―フォニックス学習を取り入れたことで、生徒たちの英語に対する反応は変わりましたか?
英語の音を奇異に思うのではなく、面白がるようになりました。
r, th, fなどを聞かせると「あれだ!」「きた~!」など笑顔になり、ひときわ大きな声で真似しようとします。
また、中1は音のたし算が大好きです。バラバラの音を少しずつくっつけて、一つの単語にする時は全員が注目して音に耳をすまします。
―フォニックス学習を取り入れたことで、生徒にはどのような成果が出ていますか?
音に敏感になりました。また、読み書きに困難を感じ、白紙解答だった生徒が、英語を書き始めました。
初出の単語を「習っていません」と言わなくなりました。
―通常の中学英語授業に、フォニックス学習をどのように取り入れられるでしょうか?
1)まずは英語に対して不安を持っている生徒を安心させよう!
「日本語は音を聞けば、文字が(ほぼ)ピタッと決まる言語だが、英語は違う文字が同じ音になったり、2文字セットで別の音を作ったりするので、最初だけはどうしても読みにくい。
でも、(英語って読むのは難しそう)と思うのは、世界中の誰もがそうなので大丈夫!今から秘訣を教えよう!」
といったような話をして、フォニックスが英語の友、お助けツールであることを印象づけます。こうすることで、生徒の英語学習への興味が変わります!
2)毎回、アルファベットの「音」を繰り返し唱えることで体に覚えさせる(中1教科書ではアルファベット表のページに音源があります)
「アルファベット26文字には基本の音がある。 D/dをディーと覚えていても役立つのはDVDを読むときくらい!」と説明をしながら、アルファベットジングルを練習します。
“A says a,a ant.” “ A! a, a apple.”など多少唱え方は違いますが、どの検定教科書もアルファベットの音をリズムに乗せた音源を用意しているようです。これを授業のウォームアップに使うだけでも、生徒の読む力を助けます。 最初にくどい程に繰り返し音を練習しておくことが、後でじわじわと効いてきます。
3)「セットで1音」の存在を早めに知らせる
フォニックスというと、アルファベット26文字の音の練習!と思いがちですが、実は中学生にとってはth, sh, ch, oo, ou など、2文字セットになると別音になるのがあるらしい、という情報がとても役立ちます。新出単語で該当するルールが出てきたときなどにさらりと提示するのがオススメです。
4)3年間通してのフォニックス指導
フォニックスはいつ始めても遅すぎることはありません。 また1回2分で終えることもできるし、50分の活動をさせることもできます。指導者の頭の隅に、読みの手助けとしての音と文字の基本対応ルールがあれば、3年間通して生徒の読みを支援できます。
―既にフォニックス指導を授業に取り入れている場合、更にレベルアップした授業内容にするにはどのようなアイデアがあるでしょうか。
・新出単語導入時に、フォニックス・ルールも提示してみましょう。
・自作のカードでは、色を変えたり、文字を囲んだりして、ルールの有用性を感じ続けさせましょう。
・生徒に教科書本文中にあるフォニックス・ルールを探させてみましょう。
・未習単語であっても、日常生活で生徒に馴染みがあり、しかもフォニックス・ルールで読み解ける長めの単語をピックアップし、音を与えずに自力で読む練習をさせてみましょう。
・フォニックスリーダー(学習したフォニックス・ルールで読み解ける読み物)で読書させ、自力で読める実感を与える。ましょう。
―副教材を使用した、効果的なフォニックス学習の導入事例を教えてください。
まずは、教材『Active Phonics』を使った授業の進め方をご紹介します。
毎回授業の始めに、『Active Phonics』に掲載されている8ジングルの一つ、または二つを全員で唱えます。
授業のウォームアップには、「早読み」や「クイズ」など皆でできる活動を行います。
週に一度、15~20分フォニックス学習時間を取り入れ、テキストの順番に沿って活動します。
DVDが使える環境がある場合は、『Active Phonics DVD』に収録されている「ルールの話」、「歌」、「ジングル」などを流しておくだけでも楽しく学習できます。
「単語練習」、「音のたし算」などは、一時停止ボタンを使いながらそのまま小テストとして利用することもできます。
その他、『フォニックス・ルールカード』の裏にマグネットを貼り、70枚いつも持ち歩いています。
母音(赤)無声音(黄)有声音(緑)と色分けされているので、印象に残りやすく、板書の一部に使えます。
1年生の入門期には、『DVDでフォニックス』の視聴も有効です。(事前に内容を確認し、一時停止のタイミングをつかんでおくと楽しく学習できます。)
―DVDが使えないクラスでは、どのような教材がおすすめでしょうか?
CDとICTを組み合わせればDVDと遜色ない指導ができますが、カードとCDだけでも十分です。
『フォニックス・ルールカード』がとても役立ちます。
―フォニックス教材を選ぶ時は、どのような点に注意するといいでしょうか?
ルールを知り、定着させるためのドリルと共に、学校の授業だからこそできる「皆でできる活動」が入っているものを選んでいただきたいと思います。
―最後に、英語を学ぶ子どもたちにとって、「中学英語」はどのような時期と捉えるといいでしょうか?
中学英語は現時点では、読み書き入門期であると同時に、高校でLEEに対応できるようにコミュニケーションの基礎を築く時期だと思います。
小学校外国語活動が始まったことで、子どもたちは中学に入学する前に、英語の音や文字に触れる機会を持てるようになりました。 小学校時には、音声だけでもいいので、できるだけたくさんの英語に触れておくことが望ましいです。 そうすれば、中学入学時にフォニックスで提示できる単語が増えると思います。 定着を過度に期待せず、子どもを信じて、まずは英語のインプットを増やしてほしい、その量が多く、バラエティに富んでいるほど、中学校の英語授業で整理整頓しがいがあるのでは、と感じています。
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