1.はじめに 文字指導あるいは読み書きの指導は、2011年度から小学校5年生6年生を対象に全国で導入が決定している外国語(英語)活動の指針の中でも、慎重に進めることが示唆されている。新学習指導要領では、「外国語でのコミュニケーションを体験させる際には,音声面を中心とし,アルファベットなどの文字や単語の取扱いについては,児童の学習負担に配慮しつつ,音声によるコミュニケーションを補助するものとして用いること」と明示されている。
しかし、そもそも、文字指導がコミュニケーション指導の対局となる「スキルベース」の指導であるという位置づけは正しいのだろうか。
読み書きや暗記を中心に英語を指導することによって、小学生に余分な負荷をかけることはもちろんあってはならないことであり、「コミュニケーションの素地を養う」という新学習指導要領の指針とも大きく外れる。しかし、中学年や高学年の子どもたちの知的好奇心や学習スタイルを考慮に入れると、「読みの力」は総合的コミュニケーション能力を伸ばすときの大きな「助け」となりうる。
「きめ細かな指導と精選された指導内容で、『読みの力』を子どもたちに構築することができないか」ということを研究課題に取り組んできた私立小学校での実践を、ご紹介したいと思う。
2.読みの指導の実践
ボトムアップ指導 そもそもアルファベットの文字指導には1)名称、2)形、3)音という3つの要素が考えられる(Cameron 2006)。
1)アルファベットの名称指導 AからZまでのアルファベットの名称をチャートで見せて言わせたり、アルファベットソングを歌うことで覚えさせたり、カルタ取りのようなゲームにして授業に取り入れるような活動である。現在拠点校に配布されている「英語ノート」では、6年生版でいくつかこういった活動が扱われている。本校においては、主に歌を歌うことや、子どもたちが身の回りでよく目にするアルファベットのサイン(JR、USJ、CDなど)を電子ボードで見せて言わせることで定着を図るような活動を、低学年のうちに行った。
2)アルファベットの形指導
アルファベットの1字1字がどういった形なのかを指導する。『ペンマンシップとフォニックス練習帳』(松香フォニックス研究所)などを使い、サンプルのアルファベットをなぞったり、書写させて大文字や小文字の形を認識させたりする。本校の特徴的な活動としては、この指導を単なる書写活動ではなく、次に述べる音の指導と結びつけた点にある。
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