こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2022年9月29日

8か国のALTと英語キャンプ

聖学院大学人文学部児童学科
小川隆夫

夏休みも終わり2学期が始まりました。この夏、私が長年携わってきた英語キャンプ:World Schoolが再開しました。

このWorld Schoolは東京都荒川区教育委員会が2004年度から毎年実施してきた6年生対象の英語キャンプです。私は2014年度から担当していますがコロナのために一昨年度は中止、昨年度は区内の小学校を会場にして2日間のデイキャンプが行われました。そして今年度、8月末に120名の児童が参加して4日間で実施されました。場所は山梨県の清里高原、ここは一昔前までは軽井沢のように若い人たちや家族連れが大勢集まる避暑地としてにぎわっていましたが、最近はずいぶん静かな場所になっています。

子どもたちはここにある荒川区立清里高原少年自然の家で3泊4日を英語だけで過ごしました。レッスン班は15グループ、それぞれにALTとJET(日本人指導者)が付き9レッスンを行いました。彼らを支援するスタッフはALTが20名、JET(日本人指導者)は現職教員10名と教員を目指す私の学生5名の15名、それに生活指導を担当する現職教員8名、教育委員会等が10名の総勢50名以上になります。そして、私がレッスンプログラム、教材、ALT・JETの事前研修、現地での指導を担当しました。

初日はバス5台に分乗し午前8時半に区役所を出発して清里に向かいました。清里は都内より標高が高いため徐々に体を慣らす必要があり途中で休憩と昼食をはさんだため13時過ぎに到着しました。自分たちの部屋に荷物を置くとすぐに開校式が行われ、その後に最初のレッスンが始まりました。各グループとも初めて出会う子どもたちの集まりですので、準備してきた名刺を使って自己紹介からスタートしました。

このキャンプは英語を積極的に使いコミュニケーションを楽しむこと、友達・ALT・JET・スタッフと良い人間関係を築くこと、そして、国際理解教育を目的としています。そのために様々な工夫がされていますが、そのうちの1つが国際色豊かなALTがいることです。今回のALTはウズベキスタン、南アフリカ、スリランカ、フィリピン、カメルーン、アメリカ、ガーナ、シンガポールの8か国出身の方々でした。普段は日本各地の小学校で活躍しているALTですが、英語が母語でない方も多く、母語、英語、そしてもう1か国語と3か国語を話す方もいましたので、英語がいかに世界共通語になっているかがよくわかりました。母語の名残りのある世界各地の英語に触れるとまさにWorld Schoolだと実感できます。

レッスンは1日目が1レッスン、2日目、3日目が4レッスンずつ。その合間に清泉寮までのハイキングや夜にはキャンプファイアーもありました。しかし、なんと言ってもWorld Schoolの最大の呼び物は4日目の午前中にグループごとに短い劇を行うグランドフィナーレです。そのためにレッスンで使った表現をもとに台本を作り5分間の劇を完成させます。

ほんの短い練習で協力し合いながら徐々に劇を完成させていく過程がとても大切です。リハーサルではなかなか思うようにできないグループもありますが、数回の練習で子どもたちは瞬く間に上達し本番では堂々と劇を楽しむ余裕さえ出てきます。毎年、JETは胃が痛くなるようですが私は子どもたちの力がわかっていますので絶対に完成すると信じています。短時間集中で英語劇を完成させる成功体験は子どもたちのこれからの英語を勉強する上での大きなモチベーションになります。日本の英語教育にもこうしたチャレンジを取り入れるとかなり力がつくのになと思います。

今年度の子どもたちを見ていると私が担当になった2014年度より格段に上達が早くなっているようです。これは小学校英語が教科化されたこと、また荒川区は1年生から英語を始めていることが大きく影響していると思います。やはり英語に触れている時間が長いことはインプット量がそれだけ多くなっていますし、知っている英語表現も多く、たくさんの表現をすでに自分の言葉として使える子どもも多くいます。教育委員会によるとWorld Schoolは児童、保護者ともに満足度が大変高いイベントだそうです。近い将来、こうした英語キャンプに日本中の子どもたちが気楽に参加できるような環境が整ったらいいなと思っています。

いよいよ9月、暑く天候が不安定だった夏から、ほっと一息つけるようなカラッとした天気の秋になって欲しいですね。


編集後記

小川先生に講師をお願いしているJ-SHINEプログラムがこの秋に始まります。

J-SHINE資格取得のための必須プログラム全6回です。2020年より小学校で英語が教科化されました。小学校外国語活動・外国語を熟知した小川先生他がセミナーを担当。新指導要領に即した、具体的・効果的な指導法を学べます。

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