こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2022年8月2日

ALTは日本人

聖学院大学人文学部児童学科
小川隆夫

6月も下旬になり暑さがどんどん増してきました。私は現在埼玉県が生活の拠点ですから、毎朝熊谷の予想気温が出る度に「えっ38度、今日もそんなに暑いの?」と思いつつ大学に向かっています。うちの庭にはまだアジサイがきれいに咲いていますが夏の花も徐々に増えてきました。

今月は久しぶりに東京都の23区内ではなく市部にある小学校の授業研究会に伺いました。この日は天気が悪く朝から雨が降ったり止んだりの状態でしたが、子どもたちは元気いっぱい。3年生のクラスでは授業の始まる前から笑い声が聞こえてきました。

この日の外国語活動の授業は担任と日本人のALTで授業を行っていました。最近はALTもいろんな方がいます。英語圏と言われる国の方々だけでなく、ブラジル、サウジアラビア、ネパール、インド、スリランカ、インドネシア、そして、フィリピン…。一番多いのはフィリピンのALTかも知れませんが、こうして日本人のALTがいる学校もあります。また、担任、ALT、日本人英語アドバイザーの3人で授業を行う学校もあります。日本人のALTの良いところは打ち合わせがスムーズ、日本人が苦手な発音や言い方がよく分かっていること、子どもたちの生活や勉強方法を理解していることでしょうか。

さて、この日、授業が始まると担任の先生の英語が流暢なことにびっくり。これはどこかで英語を使う仕事をされていたなと勝手に決めつけました。放課後、伺ってみると小学校英語の専科を数年間やっていらしたとか。どうりで!!と納得です。最近、たくさんの小学校で授業を見せていただいていると流暢な英語を話す先生が増えているように思います。その中にはこれは仕事で使っていたなとか、英語を話す環境にいた方だなと直感でわかる先生もいます。外資系の航空会社で客室乗務員をしていた方や海外勤務が長かった方などにもお会いしたこともあります。こうして先生方のバックグラウンドも多様になってきているようです。

この日の授業はLet's Try! 1のUnit 4、I like blue. でした。リズムボックスの軽快な音が教室に響く中で、担任の先生が“I like purple.”と言うと実際に紫が好きな子どもたちが立ち上がって“I like purple.”と言います。ALTが“I don't like bananas.”と言うと、バナナが嫌いな子たちが立ち上がり”I don't like bananas.”と言います。こんな単純なやり取りがずっと続きましたが、なんとも楽しく微笑ましい時間でした。先生が最初に言う表現をしっかり聞いてないとすぐに立つべきか座ったままでいるべきかの判断ができません。その後、お互いに好きなものをグループで発表し合い、最後には”Who am I?”クイズをしました。定番の流れでしたが、子どもたちは授業をしっかり楽しんだせいか正答率の高いこと。久しぶりに3年生からパワーをもらいました。

2020年に小学校外国語科が始まり3年目の夏になりましたが、6月22日の読売新聞オンラインによると、文部科学省が2021年度に全国の4割の小中学校で行ったデジタル教科書の実証事業の結果では、デジタル教科書を使った授業で。2~4割の児童生徒が授業後に目や首、肩などに疲れや痛みを感じているとのこと。外国語科と相性が良いと言われるデジタル教材ですが、これからどう使っていけばよいのか早急に考える必要がありそうです。

いよいよ7月、大学の授業は7月いっぱいで終わりです。私が担当して9年目を迎える荒川区の6年生の英語合宿World Schoolは清里で復活しそうですので、その準備もそろそろ始まります。夏バテをしないように頑張りたいと思います。皆様も夏を楽しみましょう。


編集後記

この記事の著者である小川先生が講師を担当するJ-SHINE講座がまもなく開講します。
J-SHINE資格を取得して、未来を担う子どもたちをサポートしませんか?

小川先生からは以下のようなメッセージをいただきました。

2020年4月に小学校外国語科が教科になって3年目になりました。小学校現場ではICTの活用が急速に進み外国語の授業でも大いに活用されています。児童は様々な資料にアクセスすることや知らない単語を調べ、発音を聞くこともできます。Show and Tellの画像もいとも簡単に作成してしまいます。しかし、英語専科教員がまだまだ少ない現状の中でより質の高い英語の授業を実践しようと思えば、ICTだけでは補えるはずもなく、担任の先生は多くの時間をかけて準備をしなくてはなりません。

現在、多くの自治体で英語アドバイザー、英語支援員、ALTとしてJ-SHINE資格者が活躍しています。その方々のサポートによって担任の先生は生き生きと授業を行い、児童は充実した授業を楽しんでいます。mpiのJ-SHINE講座では小学校で英語を教えるための専門知識を学ぶことができます。興味がある方はぜひ受講し日本の英語教育、そして、子どもたちの将来のために貢献していただけると嬉しく思います。


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