こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2022年4月7日

外国人児童生徒は13万人

聖学院大学人文学部児童学科
小川隆夫

いよいよ春本番ですが、年度末・年度初めと慌ただしい毎日が続いていますね。この4月、私の教え子11人が小学校と特別支援学校の現場に立ちます。新潟や茨城、埼玉、東京、千葉とみんなばらばらですが、子どもたちや保護者に信頼される素敵な先生になって欲しいなと思っています。

先週、大学では在校生の健康診断が行われ、久しぶりにたくさんの学生がキャンパスを歩いていました。お昼になるとベンチに座って春の日差しを浴びながら友達とおしゃべりしている姿も見られました。こんな光景は何年ぶりかなと嬉しくなり思わずカメラを向けてしまいました。

さて、今回は先日訪問した小学校のことをお伝えしたいと思います。その学校は1学年に3学級ずつありますが、どのクラスにも外国籍の児童がいて全校で100人近くとか。国籍は中国、ベトナム、ネパール、フィリピン…とまちまちですが、アジアの国々の子どもが多いようです。校内には日本語教室があり専任の先生も数名います。外国籍の保護者には、自分の子どもに日本の教育を受けさせる義務がありません。様々な教育を選択できますので、全ての子どもたちが日本の学校で学んでいるわけではありませんが、社会的・経済的な理由などで日本の学校に通う子どもたちが多くなっています。

こうした児童にとって、日本の小学校での生活は日本語の勉強だけでなく学校生活そのものも簡単なものではありません。私は1990年代、文部省(当時)の指定を受けていた帰国子女外国人子女の受入れ推進校に勤務し、多くの外国人児童の担任をしていました。日本語指導の専任教員もいる当時としては恵まれた環境でしたが、子どもたちはずいぶん苦労していたと思います。特に高学年になってから初めて日本語での教育を受けた場合は特に大変だったと思います。現在は、外国人児童が増え、この学校のように母語、文化、宗教、生活習慣などが異なっている複数の児童が日本人児童と同じ教室で学んでいることも珍しいことではありません。この学校では宗教上の問題で給食が食べられず毎日弁当を持参している児童もいるそうです。

外国人児童たちにとって一番重要な問題がやはり言葉です。日常生活に必要な会話、これを日常言語能力といいますが、2年位で母語話者と同等のレベルになるくらい比較的早く身に付きます。しかし、学年相当の学習をするための言語能力、これを学習認知言語能力といいますがなかなか身に付かないのです。6年から8年かかると言われています。

この日、5年生の英語の授業を見学しましたが、英語にとても興味を持って頑張っている外国人児童の姿を見ることができました。担任の先生によれば、英語はみんなとスタートが同じため、英語を母語としない外国人児童にとっても馴染みやすいのだそうです。彼らの力を順調に伸ばすことができれば、将来3か国語を使えるようになるかも知れません。これからますます外国人児童への支援が大切になってくるでしょう。折しも3月21日のNHKニュースで文部科学省の調査を発表していましたが、日本にいる小中学生の年齢にあたる外国人は約13万人、そのうち日本語の指導が必要な児童生徒が52,369人だそうです。ぜひ、彼らに良い教育を受けてもらいたいものです。

私はこの4月から中国人留学生2人をアドバイザーとして担当します。彼らはコロナ禍になる前に日本に入国して日本語学校で日本語を学んでいた学生たちです。これからの4年間、日本の大学でしっかり学んで日本での生活を大いに楽しんで欲しいなと思い、そのスタートに当たって精一杯応援しようと思っています。


編集後記

この記事を担当してくださっている小川先生のJ-SHINEセミナーの2022年のスケジュールが決定いたしました。

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