こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2021年8月20日

英語のデイキャンプ

聖学院大学人文学部児童学科
小川隆夫

夏休みもあっという間に過ぎてしまいましたね。8月末から2学期がスタートしたところも多いようですが、コロナ禍の影響で夏休みの延長や分散登校を実施するところもあると聞きます。

今月、私は英語のデイキャンプに参加しました。一昨年までは130人の小学校6年生、20人のALT、30人の日本人指導者と一緒にバスで清里高原に行き4泊5日を英語だけで過ごすという大がかりなイベントでしたが、今年は小学校を借りて、人数を半分にしてさらに10グループに分けて少人数で英語に親しむ活動をするデイキャンプになりました。外は最高気温を記録するような暑さ、冷房は入っていましたが窓はほぼ全開で全員マスク着用となかなかタフな環境でしたが、参加した子どもたちはマスク越しにも笑顔が分かるほど楽しんでいました。

子ども達は1日で5人のALTと接して母国の話を聞いたり、ハンバーガーショップの客と店員になってやり取りをしてみたり、スキットショーを自分たちで作りました。ALTのGo straight!Turn right.などの指示に従って歩く校舎内探検も行いました。この探検では子ども達が進んで行くといくつかのポイントに到着します。そこには左の写真のような人が立っていて英語で質問をしてきます。うまく答えられるとカードをもらえる仕組みです。ポイントを6か所巡ると一つの単語になります。

私が初めてこのイベントに参加したのは2014年でしたが、その頃の子ども達と比べると最近はずいぶん違っているように感じます。当時は高学年に週1回の外国語活動が始まった頃ですから、まだまだ英語を話すことに自信がなく恥ずかしがっている子がいました。やり取りも一往復で終わっていました。しかし、今年の子ども達は英語にもALTにも慣れている様子でした。授業で勉強した表現をALTが言うとすぐに反応する子が多くなっています。スキットショーを作る時にもしっかりパンチライン(おち)を考えることができるのには驚きました。最近、こうして小学校英語教育の効果を実感することが増えてきました。もう少しかなと思うところはチャンツや歌で英語のリズムを体得しているにも関わらず、いざ英語を話すとなると英語らしい強弱リズムのある言い方から平坦な日本語と同じ言い方にしてしまう子がいることです。英語を日本語で棒読みをしているように話す子が少なくありません。そこで、今回のキャンプではALTにリズムを強調して言うようにさりげなく子ども達を導いて欲しいとお願いしておきました。子ども達はもともと英語のリズムがたくさんインプットされているのですから、こうすることで瞬く間に英語らしい言い方に変わっていきました。多くの子どもたちが英語の表現は英語らしいリズムで言った方が言いやすく自然であることに気付いたようです。リズムがあるとはっきりわかり聞きやすくなったと言った子もいました。

今回、このデイキャンプで大活躍していたのが2人の英語専科の先生方でした。2人とも担任の経験がありますし指導的な立場にいる先生方です。子ども達の動きをよくわかっていますので、6年生はこんなことを恥ずかしがって、こんなことで喜ぶ。こうして一言声をかければ頑張ると知っていて行動していました。英語専科の先生方の英語の指示、連絡は簡潔で分かりやすく無駄がありません。やさしい表現で的確に話していますので子ども達によく伝わります。これから小学校英語は専科教員が教えるという計画が推進されますが、小学校で担任の経験がある先生や小学生と小学校教育をよく理解している先生にお願いできたらいいなと思いました。

9月になっても暑い日が続きそうです。読者の皆様、どうぞご自愛ください。

このコラムを担当する聖学院大学の小川先生の最新刊が2021年8月25日に発売になりました。


編集後記
このコラムを担当する小川先生の最新刊が発売されました。文科省の最新情報を反映させた小学校英語関係者必携の1冊です。

「小学校英語 はじめる教科書 改訂版 外国語科・外国語活動指導者養成のために - コア・カリキュラムに沿って -」

対象大学で小学校外国語指導法及び外国語に関する専門的事項を担当する教員、学生、現職教員、J-SHINEの講座受講生など
著者聖学院大学 人文学部児童学科 特任教授  小川 隆夫
聖学院大学 人文学部欧米文化学科 教授  東 仁美
監修上智大学 名誉教授・日本英語検定協会会長 吉田 研作
形態B5版 204頁
価格2,420円(税込)
発売日2021年8月25日発売

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