こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2019年2月5日

ある小さな自治体の試み(6) 屋外ステージでのイングリッシュ・フェスティバル

小学校英語支援団体 Friendly World
神戸女子大学 非常勤講師
長谷川和代

私が楽しみにしているのは、この自治体恒例の「イングリッシュ・フェスティバル」。ある小学校が、SWITCH ON!を発表しました。タイトルは、Story1 "Good Morning!" ナレーター役、かつらをかぶったJim役(二人)、フライパンをもったお母さん役、新聞を読んでいるお父さん役の5人がステージに立ちました。まず、
「ウィ アー 〇〇 エレメンタリー スクール スチューデント」
と大きな声で挨拶。その発音を聞いて、私は少しドキドキ。なぜなら、完全なカタカナ英語だったからです。そして、Storyに入りました。すると、当初の心配は吹っ飛びました。いつものDVDの英語と同じ抑揚で、
"This is (紹介するように) Jim."
"Hi, Dad." (歩きながら)
"Good morning, Jim. How are you? Wow!" (新聞を読んでいる。Jimを見る。声がひっくり返ってWow!)

と続いていきました。動作をつけながら英語を言うのは実際やってみると大人でも難しいものです。
また、大きな声を出すように指導すると、子どもたちは言いやすいカタカナ英語になりがちですが、Storyになると違いました。それは、以下の2点が大きいと思います。

  1. カタカナ英語よりも先にSWITCH ON!の英語がそのまま入っている。
  2. 担任がカタカナ英語に変換していない。

カタカナ英語よりも先にSWITCH ON!実際の英語を何度を聞いて、心で言う、実際に言うというところまで繰り返していることは非常に大きいです。また、担任の先生が、
「これは、こう言ったんですよ」
と、子ども達全員が言えるようにとの配慮でカタカナ英語に言い直さないで、ファシリテーターとしての役割を果たしていることも発音の自然さに寄与しています。だから、大きな声で発表しても英語らしさを失わない発表になっていました。

私は今まで、子どもたちの英語劇を見てきました。カタカナを振って一生懸命に暗記したんだろうなと思える劇がほとんどで、指導者のご苦労や子どもたちの努力が徒労に終わると悲しくなることが多くありました。だから、今回、心配が先回りしてしまいました。ごめんなさいです。この指導には、私たち支援者はタッチしていません。担任だけで指導されました。とても素晴らしい一歩でした。フェスティバルが終わった後で、担任の先生にお伝えすると、お礼と共に、悔しがられてる声が返ってきました。
「もっともっと楽しくできたのに、オリジナルじゃないとダメだと思い込んでいました!!来年はリベンジ―したいです!」
とても前向きな担任の先生からの声でした。そうやって担任の先生は育っていかれるのですね。次の段階まで行けると思わせた子どもたちの存在があってこそです。

ここに小学校の担任の先生が指導する意味があります。

  1. 普段の授業を見せる。発表だからと新しく特別なものをしない。
  2. 無理をしないので、子どもたちがついてくる。
  3. 授業でしているので、観覧している子ども達が理解できる英語となる。

これらの3点は、英語が達者な支援者が指導すると仮定すると、自戒も含めてこんな反省が生まれます。

  1. 特別なものを入れてしまう。シンプルさが我慢できない。
  2. 簡単な英語なので、無理をさせてしまっても分からない。
  3. 見ている子どもたちは分からなくても、「すごいなぁ!」と思ってくれると信じてしまっている。

担任の先生が変わった

2学期も終わりかけると、担任の先生が変わってこられたのが分かります。

  1. PCの扱いに慣れてきた。(時間短縮)
  2. 子どもたちの好みが分かってきた。(へ~!こんな反応を示すんだ!)
  3. 子どもたちの観察力に驚愕を隠せなくなった。(先生、気がつかなかったわ!よく見てるなぁ!)

子どもたちが変わった

1学期に、押し間違えて次のステップのOrigamiが流れたことがあります。すると、子どもたちからは、 「難しい!」 「分からない!」 の声がたくさん出ました。後ろから見ている私の目には、子どもたちの頭の上に「?」マークが羽ばたいていました。改めて、そんなに分からないものなんだとメモした次第です。

現在、Origamiを見ていますが、「?」マークは飛んでいません。文で聞き取ることができる子、女の子の名前が分かった子、「タラ~ッ!」と繰り返す子、そして、もっと聞こうとしている子、いろんな聞き方で、それぞれが成長しているのが分かります。みんな同じ理解をしなくてはならないのではなく、子どもたちがそれぞれ自分なりに成長することができることを保証する時間があることは、子どもたちの情意フィルターを開かせることに繋がります。

Switch On! Grade 1 Story4 Origami

登場人物への親しみがわいてきていますOrigamiでは、
「あーっ! Polar bearになった子たちと同じクラスだ!」
担任は、「ほんと!? 先生きづかなかったわ。次に見てみるわ」
2回目を見ると、
子ども達:「ね!」
担任:「ほんとだ! みんなすごいねぇ!」
担任の先生が驚いて褒めてくれると、子どもたちは喜び、もっと観察しようと思います。これは子どもたちが「覚えなければいけない!」と思っていては出てこない発話です。
SWITCH ON!の最初は、子どもたちは繰り返しながら見ることに抵抗がありました。
「これ、もうしました!」「先生、まちがってます」
との声が聞こえていましたが、今は、繰り返すものだと納得している模様です。歌が好きで一緒に歌いたいという新しい要求も出てきました。音楽でもできるようにすぐ楽譜が出てくるといいですね。

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