こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2018年6月29日

ある小さな自治体の試み(1) 担任のドキドキSWITCH ON!®

小学校英語支援団体 Friendly World
神戸女子大学 非常勤講師
長谷川和代

2018年6月よりある小学校英語の取り組みを外国語活動の支援者の長谷川和代さんにレポートをしていただきます。現場の先生方と子どもたちの様子が手に取るようにわかるレポートです。毎月1回、来年の3月まで綴っていただきますのでどうぞお楽しみに!mpi広報

目的

筆者が支援させていただいている自治体は、2018年度から『小学校英語 SWITCH ON!®(以下、SWITCH ON!)』が導入されました。その目的は、次の3点です。

① 聞く力、話す力の育成。

聞くこと、話すことの積み重ねにより、英語だけではなく他教科でもその力がついたとの研究結果があり、実際にその小学校を見学し、話を伺うことで確信を得ました。

② 生の英語に触れる時間の確保。

担任の先生が子どもたちと一緒に英語に触れることができます。担任の先生の英語力向上も図ります。

③ 英語のinput量の保証。

同じ指導案でも指導者により児童が受け取る英語の量は異なります。あるクラスはall English,別のクラスはほとんど日本語ということも起こりえます。でもSWITCH ON!だけは、どの小学校、どのクラスでも同じ量のinputとなり児童への英語のinput量の保証となります。

説明会

さて、時はさかのぼり、2017年度末のことです。

「これ、どう使うんでしょう?」
「いつ使うのでしょう?」

先生方の手にはSWITCH ON!のDVDがありました。教育委員会から届けられたのです。私からすると待望のSWITCH ON! 先生方からすると、戸惑いのSWITCH ON!との出会いでした。

「2018年度から使うことになっています。これで先生方も子どもたちと一緒に英語に触れてくださいね」

とお答えしました。すると、先生方からの返答は、

「来年度使うんですね。分かりました。では、今年度の担当者会で使い方を教えてください。使い方を知りたいです」

でした。そこで、外国語活動担当校長の提案で、2017年度の担当者会を30分延ばし、3回にわたり、SWITCH ON!の説明会をすることになりました。まずはその前に担当の先生に説明です。とにかく、扱い方を知りたいとのことでした。

翌月、担当者会に行くと、会議室は、プロジェクターがデンと置いてあり、先生のPCがセットされていました。『SWITCH ON!って何?』がテーマでした。担当の先生がGrade 1 Lesson 1 (Story 1, Good Morning!)を再生されました。小・中の担当の先生方、そしてALT、一同が身じろぎもせず、真剣なまなざしでStory Good Morning!を鑑賞。担当の先生の「何がきこえましたか?」の問いには、目をパチパチ。

「え、何が聞こえたか言うの? どう言うの?」
「これ、おもしろい?」

と声が聞こえてきました。

担当の先生は、とりあえず、全て見てもらおうと、

「では、次に行きます。次は、歌(Hello. How are you?)です」

先生方は歌も表情を変えずに凝視されていました。

「では、次に行きます。(The alphabet A to Z)です」

プログラムはどんどん進んでいきます。

SWITCH ON!のおもしろい物語、明るい歌、楽しいアルファベットと進む中、先生方の表情は、まるで難しい話を聞いているように眉間にしわがよっていました。そのまま1回目のSWITCH ON!説明会は、無事にというか何事もなく終了したのです。

2回目の説明会は、『SWITCH ON!を自分たちで使ってみよう』」でした。ボランティアの先生が前でPCを操作されました。まだ先生方の頭の中は「?」マークが大部分を占めていました。私には、先生方の心のつぶやきが聞こえてきました。

「これで?」
「聞くだけで上手になるの?」
「子どもたちはついてこられるのか」

3回目は『Grade1からGrade6までどう進んでいくか』です。

「ほんとうに?」
「難しいです!!」
「これを使うとこんな難しい英語も分かるようになるんですか」

3回目も担任の先生方の心の声を察知した私でした。

そうして、2017年度が終了し、私たちを引っ張ってくださっていた校長先生たちが定年退職されました。

本当にできる?

いよいよ2018年度が始まりました。移行期で時間数が増えています。例年のごとく、2018年度も多くの先生方が初めての外国語活動をされます。指導案には、4月初めての授業からSWITCH ON!が入っています。私の心配をよそに、先生方は軽快にクリックされています。尋ねると、

「先週、学年で練習をしました!」

のお返事。私は、思わず頭が下がりました。支援者がいるから聞けばいい。代わりにしてもらったらいい。と考えがちですが、そうではなかったのです。スムーズな出だしです。

子どもたちは(Story1, Good morning!)が始まると、どの子も目が画面一点に集まりました。

「あー!あれ、俺」
「わぁ!顔洗うの速い!!」
「フライパン使うのめっちゃうまい!!」

いよいよ担任の先生の出番です。これがSWITCH ON!の一番大切なところです。見っぱなしではないのです。

「何が聞こえましたか」
「なんでもいいよ。聞こえたのを言ってね」

担任の先生の「言葉かけ」は素晴らしいです。その言葉を受けて、子どもたちは一斉に手を上げました。

「Wowが聞こえました!」
「lionが聞こえました!」

担任の先生は、一人ずつに、

「よく聞いていたね。すごいね」

と誉め言葉をかけておられました。

もう一度同じStoryをかけます。「Let's watch the DVD again.」2回目は更にどんな小さなことでも聞き逃すまいとする子ども達。その気持ち分かります。どんなことでも聞こえたことを言ったら、先生に絶大に褒めてもらえるんですから。

昨年の『あのう…これ、おもしろいですか…』は危惧に終わりました。今年の『本当にできる?』という心配も吹っ飛びました。担任の先生の「言葉かけ」、「誉め言葉」で、子どもたちは嬉々としてSWITCH ON!をスタートしました。

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