こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2018年7月23日

ある小さな自治体の試み(2) 担任の慣れてきたかなSWITCH ON!®

小学校英語支援団体 Friendly World
神戸女子大学 非常勤講師
長谷川和代

SWITCH ON!®の進め方

この自治体は3、4年生が15時間、5、6年生が50時間です。外国語活動の45分の中にSWITCH ON!®を組み込んでいます。モジュールシナリオ案は自由に応用ができるようにワード版もあります。そこで、モジュールシナリオ案を参考程度にして、中学年の15時間、高学年の50時間に合わせて、自分たちで組み立ててみました。組み立てながら、
『自分たちのやり方で本当に英語の聴く力、話す力の基礎力の積み重ねができるのか』
時間の制約がある中で、シナリオ案通りにできるのか、どう積み重ねていくのかよいのか。モジュールシナリオ案を読み込み、幾度となく話し合いました。話し合いの資料として、その繰り返しの進度を表にしてみました。そうすると、見えてきたものがありました。

SWITCH ON!®は大阪府教育委員会とmpiが何年間もかけて、子どもたちの記録を取り、試行錯誤を繰り返しながら作り上げていった教材です。易しいものを幾度も手法を変えて取り組み、それがいつの間にか言えるように、読めるように組み立ててあります。読み込んでいくたびに、モジュールシナリオ案が良くできていることに気づかされました。
私たちにとって、時間的な制約が一番のネックでしたが、子どもたちの様子を見ながら、モジュールシナリオ案通りに進めてみることにしました。多読もそうですね。簡単な英語に数多く触れることで実力がついていきます。それは自分の教室で実証済みなのです。そんな裏事情も関係なく、授業の中では子どもたちはSWITCH ON!®に触れています。

嬉しい驚き

今回は、うれしいニュースがあります。1回目でご紹介した(Story1 Good Morning!※) (Story2 Happy Birthday!)が字幕なして一通り終わりました。次は、「字幕ON」で、もう一度、最初のGood Morning!に戻ります。この始まりがうまいなぁと思うのは、まず、小鳥の声、そして、目覚ましの音と映っていっても画面の下に台詞はないのです。その間に、子どもたちは口々に、

「あー!これ知ってる!」
「もう、見た! 先生、これ、もう、見たって!」

と声を上げます。そして、主人公が寝ている姿が映り、“This is Jim.”とナレーションと共に字幕が出ます。あれほどやかましかった子どもたちが突然シーンとなりました。じっと、字幕を見ています。それと同時に担任からの指示もないのに、台詞を繰り返すことを始めました。

『みんな、どうしたの』

担任の先生の視線が私にやってきました。私たちは目を合わせてビックリでした。次の週はもっと大きな声で、今度は、画面と一緒に言い始めました。台詞と同じリズム・イントネーションです。最後のウインクは「パチーン!」と効果音まで言ってくれています。どうしたことなのでしょう。噂には聞いていましたが、もうこんなに早くこの光景が見られるとは驚きでした。このリズムやイントネーションを教えるのが大変なのに、子どもたちは自然と言っているのです。学校のクラスで、みんなで一緒に言う楽しさがそれを後押ししていると感じました。

もう一つ、嬉しい悲鳴があります。それは、挙手の多さです。担任の「何が聞こえましたか」の問いかけに、子どもたちの手がいっぱい上がることです。先生方はできるだけたくさんの子に発表させてやりたい思いで次々と指名し、褒められます。SWITCH ON!®の時間が延びてきます。支援者としては時計を見ながら、ハラハラです。でもね、先生の気持ち、よく分かります。これだけ笑顔で挙手されたら、たくさんの子に発表してもらいたいですよね。
※こちらの動画は字幕ONの状態です。

担任の「言葉かけ」のコツ

前回、見っぱなしではなく、担任の「言葉かけ」があるから、子どもたちの英語の聴く力、話す力の積み重ねができると書きました。今回は、その「言葉かけ」のコツを書いてみます。

「何が聞こえますか」だけの問いかけのクラスと、「次は、登場人物は誰かな?場所はどこだったかな?」と次の段階の「言葉かけ」をしているクラスでは、子どもたちの聞く姿勢が異なっていました。子どもたちは「何が聞こえますか」の言葉かけには、いつまでも、「“Wow!”と聞こえます」で良かったのですが、登場人物、場所を聞かれた時は、人の名前に注意して聞いていました。子どもたちの中には、登場人物の名前を聞くとすぐに挙手してくれますが、しばらくすると、「あ、忘れてしまった」と手を下ろす子たちも現れ、一生懸命に耳を傾けてくれているのがよく分かりました。

何を聞くのか対象を示唆すると漠然と聞こえていた英語を、自分の意志で聞こうとしているのです。聞く力は技術(スキル)です。それを段階的に上げていくのは、担任の先生の「言葉かけ」も大事な要因です。
これは担任の先生は本当に上手です。他の教科でもこのようにされているんでしょうね。
そこで、モジュールシナリオ案にある「言葉かけ」を以下のように表にしてみました。STORYが変わってもこの繰り返しですね。

慣れてきたかなSWITCH ON!®

授業は最初のあいさつが終わると、直ぐにSWITCH ON!®に入ります。これは毎回同じです。
字幕が入るようになると、少し操作が要ります。先だっても、子どもたちから、
「先生! [字幕ON]になってないよ」
と声がかかりました。子どもたちは、実によく見ています。
操作が早くわかるのは子どもたちの方かもしれませんね。デジタル世代にはかないません。
この頃は、担任の先生から質問が来るようになりました。
「ラウンドクイズの答え合わせですが、直ぐに正答画面に行くのはどうしたらいいですか?」
「間違って同じところをクリックして始まってしまった場合、どのように最初に戻ればいいですか?」
主に操作に関してですが、車の運転と同じで、最初は基本的な操作に一生懸命です。そのうちに景色も存分に楽しめるようになると思います。
一度クリックしてしまうと、担任も子どもたちと同じように口を動かされています。【SWITCH ON!®は担任が教えなくても良い。一緒に楽しむことができる】まさにこの状態になっているのを私は、今、目の前に見ています。
それと共にこんなことも言われるようになりました。
「ジングルは欠かせないです。子どもたちが大好きです」
そう言ってクリックされる担任は、授業をしている担任の姿です。4月から戸惑いながら始めたSWITCH ON!®です。6月になり、担任の先生たちは、徐々に自分がマネージメントして進められるようになってきました。
私にとって、今一番楽しいのが、Trace and Writeです。子どもたちは、
「速い!」と言って、「ピューン、ピュン」音と共に空で字を書いています。担任も一緒に、「ピューン、ピュン」です。
SWITCH ON!®が始まって2ケ月、こうやって、担任は英語の教え方を身に付けています。

SWITCH ON!®についてのお問い合わせはこちらから
https://www.mpi-j.co.jp/switch_on/


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