こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2018年9月28日

素敵な英語の授業は、まず「始めのあいさつ」からー2018年9月のmpiコラム

聖学院大学人文学部児童学科
小川隆夫

あっという間に秋が深まってきましたが、皆さん、お元気ですか。私の大学は3連休の最終日9月24日から秋学期がスタートしました。ガラガラの電車に乗って出勤しましたが、今は月曜日の振替休日や祝日はほとんどの大学で普通授業です。もちろん授業数確保のためですが昔よりずいぶん厳格になりましたね。
さて、9月になり小学校では英語の授業研究会がたくさん行われています。私はこのところ週に1回ペースであちこちの学校にお邪魔しています。

それは都内の小学校の3年生の研究授業の冒頭部分でありました。その学校では担任が主導で授業を行うことになっていますが、ALT、アドバイザーもいる授業でした。元気よく挨拶から始まったのですが、こんなことになっていました。

  1. Good afternoon, Ms. Sato.
  2. Good afternoon, Mr. Bob.
  3. Good afternoon, Ms. Yoko. (使用している名前は例です)

1は担任の佐藤先生です。
2はALTのボブ先生、ニックネームで呼んでいます。
3は日本人アドバイザーの洋子先生で、ファーストネーム(名前)で呼んでいます。

不思議なことに3人に敬称をつけています。
実は他の学校でもよくあることなのです。英語にはファミリーネーム(=ラストネーム:名字:姓)に敬称をつけるというルールがありますので、ニックネームやファーストネーム(名前:名)に敬称をつけることはしていません。
英語ではお互いにファーストネームで呼ぶ機会が多いため、日本語ほど敬称を意識する場面は少ないかもしれませんが、初対面の人にはしませんし、使い分けにはルールがあります。

こうした英語の敬称のことを知ることも文化を知ることの1つですね。2003年位から小学校英語を研究する学校が増えましたが、その頃、子どもたちが「佐藤先生」をそのまま英語にしてSato Teacherとか呼ぶようなクラスがありました。これについては「先生たちの研修もなしで小学校英語をやるからだ、このまま使うようになったらどうするのか」と小学校英語反対派(いわゆる慎重派)の方々にお叱りを受けたものでした。しかし、実際にMr.やMs.を名字だけにつけるということを学んでこない、もしくは知らない先生方も多かったのです。

これはどうにかしなくてはと考えたのがきっかけとなり2004年に『リズムでおぼえる教室英語ノート』という本が生まれました。ここには単に教室英語をまとめて収録しているだけでなく、小学校の先生たちにぜひ知っておいて欲しい表現、間違えそうな表現を何気なく入れて、使っているうちにそのまま覚えて欲しいという願いをこめて細かな解説は入れていませんでした。

 

これは「始めのあいさつ」というページです。先生と子どもたちとのやり取りでまとめていますが、子どもたちのあいさつ部分には
Hi, Ms. Nakazawa!
Good morning, Mr. Ogawa!
Good afternoon, Sue!
と入っています。
中澤先生、実は当時の私が勤めていた学校の校長先生でした。そして、私の名前、もう一人はスーという優秀なオーストラリア人のALTでした。SueはSusannaの愛称です。SueにはMs.をはずしています。
先生やALTをあいさつで呼ぶときの方法をこんな風にするといいよというメッセージを込めたのですが、今でも今回のようなクラスがあるわけです。

 

最近、Good morning, Ogawa-sensei.とMr. やMs.をつけないで「先生:sensei」をつける学校もありますが、子どもたちがこれを言うとそこだけ英語のリズムから日本語のリズムになってしまいがちです。研究授業では、あいさつが生き生きとできているクラスは先を見るのが楽しみになります。英語の音を大切にしている担任の先生の姿勢が見えるからです。
授業の冒頭から英語のリズムで発話できるのはやさしいようでなかなかできないものですが、ぜひあいさつを大切にして素敵な授業を展開していただきたいなと思っています。

リズムでおぼえる教室英語ノート
https://www.mpi-j.co.jp/c/item/6212/&category_id=01


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