聖学院大学人文学部子ども教育学科
小川隆夫
寒さが急に増した12月14日、聖学院大学では『小学校英語指導者養成講座』が開催されました。今回はシンポジウムで以下の4人の先生方をお招きして「これからの小学校英語教育 指導者養成をどのようにするか」をテーマにご意見を伺いました。
池田 勝久氏(文部科学省初等中等教育局主任 教科書調査官(外国語))
加藤 拓由氏(岐阜聖徳学園大学准教授)
黒木 愛氏(筑波大学附属小学校教諭)
松崎 奈穂氏(昭和女子大学附属昭和小学校教諭)
会場は大学のチャペル、最後にパイプオルガンの演奏が行われ、その荘厳で美しい音色に日々の忙しさを忘れ心が穏やかになるようでした。
この講座は今回が24回目、日本の大学では一番長く開催されている講座ですが、ここ数年、小学校英語に対する先生方、世間の関心が低くなっているのがこの講座でも見て取れました。昔はこの講座は年3回やっていましたが、徐々に2回になり、コロナでオンライン、そして今回は対面での久しぶりの開催となりました。小学校英語が教科になる前は九州から青森まで全国から小学校の担任の先生が毎回たくさん参加してくださりその熱量に圧倒されたものでした。
しかし、今回は担任の先生はかなり少なくなり、専科の先生、小学校英語に関心のあるリピーターが多かったようです。そこには英語専科が増えたことや教科担任制のため英語を教える担任の先生が少なくなっているという現状があるようです。
実際、私の教え子も毎年20人ほどが教壇に立っていますが、この3年間、担任として英語を担当していたのが2人だけでした。参加した小学校の校長先生によれば採用されてから英語を全く担当することなく次の学校に異動する先生もいるそうで、5,6年間も英語に全く触れることなく新たな学校で英語を担当することになったら大丈夫だろうかと心配されていました。
シンポジウム後の茶話会や一緒に居酒屋に行った先生方によれば、ただ単に英語専科といっても中学校の英語科担当から小学校へ移ってきた先生、地区の中で英語を推進してきたベテランの先生、初任者でいきなり英語専科になった先生、会社員を長く経験した後、教員採用試験を受けて初任者で英語専科になった先生、この先生は英会話ができるというだけで英語専科になったそうです。各地でいろんなパターンがあるようですが初任者にも関わらず数校を掛け持ちしている専科の先生で他の先生になかなか相談できずに1人で悩みながら英語の授業を続けている方もいました。
しかし、一番気の毒だと思ったのはずっと小学校英語を勉強し実践してきた先生が持ち時間の調整のため英語の授業を担当できずに経験の浅い専科に任せていると聞いた時でした。小学校英語についてはこうした現場の声をしっかり受け止めてこれからも考えなくてはならないことがたくさんあるようです。
12月25日、文部科学省は学習指導要領改訂に向けた検討を中央教育審議会に諮問しました。外国語教育では自動翻訳機などが普及する中での外国語教育の在り方などが検討される予定です。
今後、文部科学省は2026年度中に中教審より答申を受け取り、新たな学習指導要領を策定し2030年度以降小学校から実施する予定です。学習指導要領は10年ごとに改訂されますが、外国語教育はICTの進歩とともに新たな局面を迎えそうです。どんな答申が出るか2026年度にかけて目が離せなくなりそうです。これを機に小学校英語に対する担任の先生やみんなの情熱が復活することを願っています。