こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2024年11月30日

日本の英語力116か国中92位

聖学院大学人文学部子ども教育学科
小川隆夫

毎年11月末になると聖学院大学の図書館前では巨大なクリスマスツリーの点灯式が行われます。今、チャペルではパイプオルガンと讃美歌が響き、クリスチャン大学が1年で一番華やぐ時を迎えています。

さて、今年も世界中に語学学校を展開するEF(Education First)が、英語圏以外の国・地域の2024年版の英語能力指数を発表しました。これは116か国及び地域の18歳以上を対象にし、およそ210万人が受験したデータに基づいています。その結果、日本は116か国中92位でした。1位はオランダ、2位はノルウェー、3位はシンガポール。日本は前年より5つ順位を下げて、アジア圏でも韓国、ベトナム、インドネシア、中国を下回り、アジア23か国・地域で16位でした。

「えっ、こんなに小学校英語に力を入れてるのに、どういうこと?」と思う方も多いでしょうが、J-Shineでも活躍されていた上智大学言語教育研究センター教授・センター長の藤田 保先生は調査結果と課題について次のように述べています。

○日本の英語能力が具体的に下がったというよりも、日本が変わらない間に他国が上がっていると思われる。

○日本に英語教育を良くしようという機運があるのは確かだが、なかなか変わらないという面もある。大学入試にスピーキングを導入しようとしても実施できなかった例などからも「変わらなきゃいけない」と思いながらもそれを変えたくない、という社会構造がある。

○日本が伸びていない理由のひとつが国内的なマーケットの広さにある。外に行かなくても日本で食べていける。同じアジアのなかでも韓国が伸びていて、日本が伸び悩んでいる要因となっているのでは?

○留学の価値のなかには、言語能力の向上だけでなく、価値観や文化を柔軟に受け入れられる力や特定の考えや味方に固執してしまわずに受け入れる力の向上がある。実際に自分が住んでみると、マイノリティの存在になってみる経験ができる。マジョリティが物事を決めているということを知り、マイノリティとして問題を解決していくという経験をしてみるのが大事。

○日本の義務教育における英語教育改革では「知識の獲得」をすることから「知識をどう使うか」に焦点が当てられてきた。その点は現在の学生の姿勢に表れており、間違ってもいいから話してみようという傾向は高まっていると感じる。

2024年11月14日 留学ニュース 留学プレス編集部
https://www.ryugakupress.com/ef-epi-2024/

EFの順位はカテゴリーがあり1位から9位までが「非常に高い」、「9位から31位が「高い」、32位から61位が「標準」、62位から92位までが「低い」、93位から116位が「非常に低い」になります。92位の日本は「低い能力レベル」のカテゴリーに入ります。これは「観光客として英語を話す国を旅することができる」「同僚とちょっとした会話ができる」「同僚からの簡単なメールを理解できる」能力だそうです。

2011年の初回調査で日本は14位でした。しかし、その当時40か国だった参加国が増えるとともに順位を下げています、藤田先生の指摘のように日本があまり変わらない間に他国の英語力が向上しているのではと考えられます。確かにここ何年かで韓国や台湾、タイでスターバックに入ると若い店員さんが流暢な英語で話してくれました。

小学校英語が教科化されたのが2020年、その年に6年生だった子どもたちは2026年、3年生として外国語活動で英語に親しみ5.6年生の外国語科で学んだ子どもたちは2030年に18歳になります。その時、このデータがどう変化するかが楽しみになってきました。

いよいよ寒さが本格的になってきました。皆様、お元気でお過ごしください。

EPI英語能力指数の全体レポートは https://www.efjapan.co.jp/epi/ から見ることができます。


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