こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2024年8月30日

McDonald'sを通じる発音にするだけで

聖学院大学人文学部子ども教育学科
小川隆夫

この夏は天気が大荒れでしたが、皆さん、お元気でお過ごしでしょうか。
私は8月23日から26日まで恒例になりました東京都荒川区の6年生を対象にした英語キャンプWorld Schoolで山梨県の清里に行ってきました。これは荒川区が20年前に始めた6年生対象の英語合宿で今年も元気な6年生が90人近く参加し20人のALTと現役の先生方、そして私の学生9人と英語漬けの3泊4日を送りました。

そうそう、清里は一昔前?は軽井沢と並ぶ避暑地でおしゃれな店やカフェがたくさんあったところです。今はアウトレットや目立った観光地がないせいかどうも元気がなくなっています。ここへは都内から高速を使って簡単に行くことができますが、この日は夏休みも終わりに近い土曜日で大渋滞に工事が重なり、朝8時過ぎに都内をバスで出発し、途中昼食を取りましたが宿舎に到着したのはなんと14時近く。かなりの長旅になりました。

今回の6年生は2020年、5・6年生に教科書が採用された時の3年生。中学年の外国語活動から高学年の外国語科にしっかりと連携させなくてはと学校も先生も気持ちを新たにして始まった学年です。さて、彼らの英語はどうだったでしょうか。話す英語にリズムが感じられて発音が良く照れずにしっかりと話す子が多いというのが第一印象でした。そして、何といってもコミュニケーションへの積極性がありました。今回、休み時間や手が空いている時は誰にでも英語で話しかけてサインをもらってよいことになっていましたが、見ているとどんどん話しかけてCan you sign here?と言っているのです。4日間で130人近くのサインを集めた子が複数現れるなど物おじしない態度に感心させられました。

レッスンは1グループ10人程度で行われましたが、キーセンテンスやキーワードがしっかりと発音できるようになれば全体のやり取りがスムーズになると改めて感じました。例えばWhere do you want to go?が自信をもって言えるようになるとアンサーもしっかり言うことができ、その後のやり取りも順調になります。学校の授業ではなんとなく過ぎてしまう時間でもWorld Schoolではグループごとに日本人の先生とALTがついてやり取りの回数も格段に増えるからでしょう。

たまたまスキットショーの練習をしているグループを見ているとMcDonald'sの話題が出ていました。McDonald'sの発音がみんなバラバラでなんとなく全体の統一がとれていません。そこでALTに世界中の誰にでも通じるMcDonald'sの発音にして欲しいとお願いしました。するとどうでしょう。短時間でスキットショー全体がぐんとレベルアップしたのです。1つのキーワードをしっかり言えるだけで全体が変わるのです。子どもたちに染みついている日本語発音を通じる発音に変換できるのも一人一人に目をかけられる英語キャンプだからだと思いました。

最終日はWorld Schoolの総仕上げとしてグランドフィナーレがありました。各チームがレッスンで練習した英語表現や自分たちが今まで学んできた表現を組み合わせて台本を作り、練習とリハーサルを繰り返しながら5分間の劇を完成させます。条件はどこかにパンチライン(おち)を入れること。そんな条件、今までにつけられたことはなかったと思いますが、英語の絵本の読み聞かせを1年生からたくさん経験してきた彼らはそれをしっかり受けとめていたようで、どのグループも最後にクスっと笑ってしまうような劇に仕上がっていました。グランドフィナーレを観るためにWorld Schoolに参加したいと言う現役の先生がいましたが、グランドフィナーレはたった4日間で英語力、コミュニケーション力、表現力、結束力をぐんと高める魔法の発表会のようです。

清里高原は涼しいかなと思いましたが、朝晩が少し爽やかかなと感じる程度で後は30度を超える暑い毎日で急な大雨もありました。しかし、たった4日間でしたWorld Schoolに参加した子どもたちにとっては最高の夏休みになったのではと思います。もう11回も参加している私にとっても素敵な思い出が増えました。


編集後記

記事内の英語キャンプの様子を荒川区公式youtubeで公開しています。
もう10年以上開催されている歴史のあるキャンプです。是非こちらもご参考にしてください。

小川先生に講義をお願いしているJ-SHINEプログラムは10月19日よりスタートします。詳細はこちら


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