聖学院大学人文学部子ども教育学科
小川隆夫
小中学校が夏休みに入り、各自治体では教員研修が始まりました。私は先週2つの研修を担当しましたが、その1つにはALTの参加があり、久しぶりの再会にハグして喜び合った人もいました。ALTはもちろんAssistant Language Teacher(外国語指導助手)のことですが、7月14日の朝日新聞朝刊に驚くような記事がありました。そこにはなんとこんなことが
ALT、生活困窮、低賃金訴え、食事は給食だけ、安いスーツで授業
やはり背景には自治体のコスト削減問題がありそうですが、記事には「月収は20万円弱、1日1食に切り詰め、職場の歓送迎会もお金がなくて断る」とありました。
2000年にかけて、たくさんの外国の若者が日本でALTとして働き始めました。まだまだ日本円も安定していた頃で、国が関わるJETプログラムで来日したALTは特に恵まれていて、飛行機はビジネスクラス、住まいは自治体が斡旋してくれ寝具から生活用品まで教育委員会の担当者が事細かに面倒を見てくれたそうです。もちろん民間会社の派遣ALTもそれなりの待遇で雇われていたようです。それが今はどうでしょう。
記事によれば23年度文部科学省調査の結果、公立小中高校で働くALTは1万8127人。その雇用形態は3種類で民間会社の派遣が34%、JETプログラムが28%、自治体独自の直接雇用が20%とか。つまり、かなりのALTが民間会社から派遣されていることになります。大阪市の労働組合「ゼネラルユニオン」が全国のALT600人を対象にした調査によれば、平均年収は派遣が247万円、直接雇用が348万円、JETが375万円とか。ここから住居費、光熱費、健康保険、食費、生活費などがかかるわけです。世界的に見ても給料の低い日本でALTはかなり厳しい生活をしていることがわかります。特に派遣ALTは節約生活を余儀なくされているようです。
ALTによって指導技術の差が大きいことは確かです。しかし、多くのALTは日本の子供たちと一生懸命に関わって少しでも英語力が向上するように努力してくれているように思います。彼らが安心して働ける環境をつくることも日本の英語教育を前進させるうえで重要なことではないでしょうか。
8月は例年やっている東京都荒川区の4日間の英語キャンプに14人のALTと参加します。90人弱の6年生と山梨県清里で英語だけの毎日を過ごしますが、私たちスタッフも彼らと仲良く楽しい時間を過ごすのが英語キャンプ成功の秘訣です。お互いにリスペクトし合い充実した4日間を過ごしたいと思います。
編集後記
記事内の朝日新聞の記事はこちらから
小川先生に講義をお願いしているJ-SHINEプログラムは10月19日よりスタートします。詳細はこちら