こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2024年4月29日

教員に魅力を感じるがためらう

聖学院大学人文学部子ども教育学科
小川隆夫

新学期になり初々しい1年生の姿でキャンパスは活気に満ちています。この時期の学生食堂はいつもいっぱいで昼食難民が出てしまうのではと思うほど混雑しています。

そういえば2月に行ったニュージーランド研修ではオークランド大学のカフェテリアでランチを食べていましたが、その値段にはため息が出てしまうほどでした。カフェのメニューで一番安いカレーが1,000円、ちょっとしたものは1,700円から2,000円、コーヒーが一杯700円、水のペットボトルが350円という具合でした。ラーメンやカレー、うどんが300円台で、一番高い日替わり定食が500円台で食べられる日本の学食はなんと学生にやさしいのでしょう。

さて、4月11日からは9月に教育実習を控えている3年生に外国語科指導法の授業が始まりました。私の大学では教育実習前に音楽科指導法と外国語科指導法の単位を取ることが決まっていますので、学生にとっては絶対に外せない授業なのです。そんな中、4月27日のNHK NEWSWEBに、『教育実習で“教員になりたくない” 教員に魅力を感じるもためらう学生』という記事がでました。これは名古屋大学大学院の研究チームが昨年11月、教職課程を履修したことがある全国の大学3年生と4年生、620人を対象にアンケート調査を行った結果です。

その中で2週間以上の教育実習経験者の347人(42%)が「教員になりたくないと思うようになった」と回答したそうです。このうち7割の学生は「やりがいを感じた」と回答しているそうで、教員の仕事に魅力を感じつつもためらう学生が多いことが分かりました。結局、回答があった620人全員のうち、教員免許の取得を辞めたのが149人で、その理由でもっとも多かったのが、

「自分は教員に向いてない」 76%
「ほかに将来就きたい職業が決まった」 71%
「長時間労働だと知った」 64%
「保護者対応に自信がない」 64%

ということです。確かに以前に比べ教育実習を終えた学生に採用試験を受けないと決める学生が増えているように思います。現場を知り「魅力ある仕事だと思っても心身を崩してまで働けない」と感じるのでしょうか。

東京都は、4月24日、昨年度の新採用教員のうち1年以内に離職した教員の割合が4.9%になったと発表しました。小中高の教員として採用された3,472人のうち169人が1年以内に辞めたそうです。前年度が108人でしたから1.6倍に増えたことになります。離職理由は自己都合が159人で、その半分は病気が理由とか。これは民間の離職率12.0%に比べると低いですが、やはり長時間労働、保護者対応などは大きな負担になっていると考えられます。相変わらず教員が不足している現状の中で、採用する側としては長時間労働や保護者対応の改善をするとともに、一般企業とすぐに比較できる今だからこそ具体的対策などを学生たちにアピールする必要がありそうです。

私の授業では、教育実習で外国語科の授業を任されてもひるむことなくできるように、現在は教室英語の練習が続いています。「英会話たいそう」の96の表現をまず覚えることにしていますが、これだけでも子どもたちとの英語のコミュニケーションがずいぶんスムーズになるものです。今年はこの学生たちが一人でも多く教員なりたいと思ってくれるといいなと思いながら授業をしています。

参考文献
NHK NEWSWEB
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240427/k10014435351000.html

読売新聞オンライン: 新人教員の4・9%が1年以内に離職…3年連続の増加に都教委「安心して働ける環境整えたい」
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240424-OYT1T50229/


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