聖学院大学人文学部子ども教育学科
小川隆夫
いよいよ大学は今年度の最終授業週になりました。私はこの時期、同僚とともに4月から教職に就く4年生を対象に着任前研修会をやっています。今年で3年目になりますが、この研修会は受講したい学生だけが集まる自由参加方式です。今回は8名の学生が参加しました。
今回のテーマは「ALTとのTT授業のすすめ方」です。講師はアメリカ生まれのRobert Rowland准教授。彼はさいたま市教育委員会でALTを指導する仕事に携わっていましたので、小学校現場のこともALTの仕事内容や勤務体制、そして彼らの気持ちもよく分かっています。
まずはALTの平均勤務期間は何年、平均年齢はいくつというクイズから始まりました。もちろん全国平均です。答えは2.5年と29-30才だそうです。なぜ、こんなことを聞いたかというと学生たちは自分たちよりも人生経験が多いALTとTTをすることになり、ALTからすると新任教員は10才も年下なため子どものような人と働くのかと思うそうです。しかし、年上だからと言っても小学校で働いた経験が1、2年の人が多く、まだまだやり方がわからずただ頑張りたいとだけ思っている人も多いのだとか。そこで最初はお互いのやる気を大切にして教員としてリスペクトし合うことが何より大切だとか。
また、TTを成功させるためには、ALTだったら「こうしたことは分かっているだろう」「これは学んでいるだろう」「これはやってくれるだろう」などという思い込みや期待はすべて捨てて、最初からどうして欲しいかをはっきり言うことが重要だそうです。
そんな訳で授業の前にALTと話し合うことは次の3つ。
What will you teach? |
何を教えるの? |
What will the students learn? |
子どもたちは何を学ぶの? |
What will each teacher do? When? |
教師はいつどこで何をすれば良いのか? |
この3つを事前にしっかりと打ち合わせしておけば、ほとんどの授業は順調に進むそうです。
今回、学生たちの関心がもっとも高かったのは「授業後のふり返り」Make a sandwichというお話でした。
授業の後は写真のようにサンドイッチの上と下にPraise を置き、真ん中にSuggestionを挟んだ振り返りをするのが理想的とか。
PraiseではThank you for ~.を使って、Thank you for being energetic. Thank you for giving clear instructions. Thank you for praising students. などと良かったことを述べます。
そして、Suggestionでは、Next time, please try to~. を使って、Next time, please try to speak more simply. Next time, please try to use easier vocabulary. Next time, please try to speak with more students. などのように次の授業がさらによくなるような提案をするわけです。
これを建設的な批判Giving construction criticismと言います。批判というと日本語ではあまりよろしくないように受け取りがちですが、多面的に何かを考えて次に繋げていく重要なプロセスであると考えるとよいそうです。
この研修会は春になると教壇に立つ学生たちに私たちからのちょっとしたプレゼントでした。学生たちからは「少しの工夫でALTとのコミュニケーションの質が高まり、児童と楽しめる授業づくりができると思うので、今日の学びを活用したい。」「ほめ方や指摘の仕方はALTに限らず、同僚や子どもとの関わりでも効果的だと感じた。」などという感想がありました。彼らのこれからの活躍を祈って研修会を閉じました。