こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2023年4月28日

50万人の留学生は誕生するか

聖学院大学人文学部子ども教育学科
小川隆夫

5月8日からの新型コロナの感染法上の位置付けが5類に移行するのを受けて、空港での水際対策が4月29日に終了しましたね。入国する際、ワクチンを3回以上接種した証明書などの提示が不要となり海外渡航がずいぶん気軽になりました。

新学期を迎えた大学では夏休みの短期海外研修の募集が再開し、あちこちにポスターが貼られ説明会が開催されています。待ちわびていた学生も多く会場には予想以上の数の学生が集まっているようです。さて、こうした短期留学は学生にとても人気がありますが、本格的な長期留学を目指す日本人学生は増えているのでしょうか。

4月27日、政府の教育未来創造会議で、2033年までに「海外留学する日本人を50万人に」「日本への外国人留学生を40万人に」するとの目標を掲げた第2次提言がまとまりました。この提言では日本人留学生について長期留学15万人、中短期留学23万人、高校段階で12万人を目標とし、外国人留学生は大学、専門学校、日本語学校で38万人、高校で2万人の受け入れを目指すことになります。

前回、韓国の英語塾について書きましたが、韓国では海外の大学・大学院への留学は一般的で、日本経済新聞(2023/02/21朝刊)によれば2019年で21万3000人、同年の日本人留学生は6万1989人、人口が日本の半分の韓国ですが3倍もの学生が留学するとのこと。韓国の場合はそのまま海外で就職する学生も多く優秀な人材が戻ってこないことがありこれはこれで問題のようですが、韓国では多くの学生が仕事はグローバルビジネスが当然と捉えているのでしょう。

産業能率大学がコロナ禍前まで3年に1度調査をしていた「新入社員のグローバル意識調査」によると2017年では新入社員800名中60.4%が海外で働いてみたいと思わないと答えています。しかし「日本はグローバル化を進めるべきか」の問いには79.5%が進めるべき、どちらかと言えば進めるべきと答えています。では誰がグローバル化を推進したらよいのでしょうか。また、「海外で働きたくない理由」には63.6%が「自分の語学力に自信がないから」と答えています。
こうして考えると韓国はグローバル化のために「自分の語学力に自信がない」とは言わせない教育を実践してきたのかも知れません。同新聞には21年度の韓国のTOEIC平均点は679点で、日本より100点ほど高いと出ていました。この結果に直接関係があるかはわかりませんが韓国の小学校英語の授業時間は日本よりかなり多いようです。3、4年生は日本の年間35時間に対し韓国は68時間、5、6年生では70時間に対し102時間、卒業までの授業時間は日本が210時間、韓国が340時間と130時間もの差が出ることになります。

日本の小学校英語が2020年教科化されて4年目、教科として教わってきた子どもたちが就職する2030年代には留学生50万人の目標が達成し「自分の語学力に自信がないから海外で働きたくない」などと言う調査結果がでないような時代になって欲しいですね。

産業能率大学「第7回新入社員のグローバル意識調査」
https://www.sanno.ac.jp/admin/research/fm3fav0000000hbz-att/global2017.pdf


編集後記

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