こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2022年12月25日

絵本を上手に読む秘訣 -1冊を徹底研究-

聖学院大学人文学部児童学科
小川隆夫

私の学科には幼稚園・保育園で働くことを目指す学生がたくさん学んでいます。そんな彼らのための英語の授業が、私の担当するSmile English(幼児の英語)です。
この授業は幼稚園・保育園で子どもたちと英語で楽しく遊べる指導者を養成するために開講して4年目を迎えました。授業では全員が「英会話たいそう」の96の表現を自由に使えるようになること。朝やお昼、お帰りの時に子どもたちと英語でやり取りができるようになること。英語の歌やチャンツをなるべくたくさん自分のものにすること。そして、「英語の絵本」を自信を持って読めるようになることを目指しています。

昨年度の課題絵本はStar, Star, Star(mpi松香フォニックス)でしたが、今年度はChomp, Chomp, Chomp(mpi松香フォニックス)です。どちらも残念ながら現在は販売されておりませんので手に入れることができませんが、絵本の音読の特訓にはまさに最適です。

この授業ではまず絵本を1人1冊ずつ渡して、それぞれが1冊の絵本を徹底研究して音読発表会をします。最初はCDを何度も聴いて英語の発音をそのまま真似することから始めます。これがないとただ英語を自分流の発音でダラダラ読んでしまいます。いわゆる日本語英語で終わってしまいますのでこの最初の練習が極めて大切です。そして、その後、実際に子どもの前で絵本をどう見せるか、顔の表情や視線はどうすればよいか、擬音や効果音をどう表現するかを考えます。徐々に慣れてくると1ページごとに子どもと対話しながら読むDialogic Readingをやりたいと考える学生が現れ、絵を指さしながら子どもに質問したり、複数あるものは数を数えたりします。

そして、1カ月の練習後、12月最後の授業日に音読発表会をしました。当日は同じ絵本でも読み手によってこんなに違うものかと思うような素晴らしいパフォーマンスを見ることができました。

私は絵本を上手に読むようになるための秘訣は、たくさんの絵本を使って練習することではなくまずは1冊を徹底研究してていねいに練習することだと思っています。特にChomp, Chomp, Chompのように文章が少なく絵にたくさんの情報が詰まっている絵本は、指導者の力量が試されます。どう絵を見せて、どう英文を読んで、どう指をさして、どんな音が必要なのか、間、ページをめくるタイミング、子どもたちを見る視線、先生の顔の表情までが重要になってきます。こうした地道な練習をすることで絵本の音読に自信がつきます。練習方法が分かっていると後は自分の工夫次第でさらに上達していきます。

この日、こうした大学の学びによって、外国人指導者に頼らなくても小さな子どもたちと英語の絵本を楽しめる頼もしい指導者がまた十数人誕生したことを嬉しく思いました。


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