こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2022年6月17日

英会話たいそうで通じる英語を

聖学院大学人文学部児童学科
小川隆夫

大学では春学期の授業が半分終わりました。1年生も学生生活にすっかり慣れてきたようですが、学食にはテーブルの上にアクリル板が置かれたままで黙食が奨励されています。友人たちと楽しくおしゃべりをしながらのランチにはもう少し時間がかかりそうです。

今週からは幼稚園の先生を目指す学生たちの幼稚園実習が始まりました。緊張するとピアノがうまく弾けないと直前までピアノの練習をしている学生もいてピアノの練習室は遅くまで賑わっていました。

小学校の先生を目指す3年生は9月からの教育実習にそなえて最後の仕上げです。私の大学のルールで実習までに全教科の指導法を履修することになっています。そのほとんどが2年生の秋学期までに開講されているのですが外国語科導法と音楽科指導法だけが3年生の春学期に開講しますので、この2科目の単位を取らないと教育実習に行けないのです。そのためか外国語科指導法は水曜日の1限という学生にとってはあまり嬉しくない時間帯の授業ですが抜群の出席率です。

この授業では毎回チャンツや歌を使って英語のリズムと音を感じながらたくさんの英語表現を口にする練習をしています。しかし、多くの学生から自分の発音がどうも日本人っぽいので通じるかどうか心配だという話を聞きました。もちろん今は世界共通語としての英語ですから通じることが重要で日本語なまりの英語でも問題はないと励ましますが、あまりにも英語のリズムやイントネーション、音声とかけ離れてしまうと通じにくいので何とか学生たちが自分たちの発音に自信が持てるようにさせたいと思っていました。

そこで、新しい試みとして「英会話たいそう」のCDにある歌と表現を徹底的に聴いて発音、リズム、イントネーションの真似をする練習を始めました。授業で練習し、家で徹底練習した後、大学の授業サイトに音声データで提出するという方法です。私はその音声を聴いて一人ずつコメントしています。

今週はNo. 4の「What?わからないことは聞きかえそう」です。「英会話たいそう」は全部修得すると96の表現が使えるようになります。それらを通じる英語として身に付けたら小学校の先生として大きなメリットになります。教室英語として使える表現もたくさんあります。

授業では学生が将来役に立つようにミニレクチャーも行います。④What?では41番Do you have a pen?で「connotation含意」について説明しました。日本の英語教育ではYes, I do.と答えるように練習するのがほとんどですが、「英会話たいそう」ではこの背後に潜んでいる意味の「貸して」という「含意」を意識して、返事がYes, I do.ではなくJust a minute. になっていると話しました。さらにすぐに手渡すならHere you are.と言うと自然だと説明すると学生たちはこの「含意」にとても興味を持ったようです。

また、Do you speak Japanese?ではCanではなくDo you ~?とどうして尋ねるのか、Yes, a little.のような便利な一言を覚えておこうなども付け加えます。こうすることにより学生たちは「英会話たいそう」の表現は単なる子どもの教材ではなく、自分の英語学習にも使えるなと思ったようで一生懸命練習して音声データを送ってきます。録音して自分でも聴いて提出することで発音を意識するようになり毎回上達していきます。今まで発音について1人ずつフィードバックをもらった経験はなかったはずです。

たった96の表現ですがこうしてていねいに練習することで絵本の音読などにも良い影響が出てきています。

今回は「英会話たいそう」の大学での利用方法を紹介してみました。


編集後記

この記事の著者である小川先生が講師を担当するJ-SHINE講座がまもなく開講します。
J-SHINE資格を取得して、未来を担う子どもたちをサポートしませんか?

小川先生からは以下のようなメッセージをいただきました。

2020年4月に小学校外国語科が教科になって3年目になりました。小学校現場ではICTの活用が急速に進み外国語の授業でも大いに活用されています。児童は様々な資料にアクセスすることや知らない単語を調べ、発音を聞くこともできます。Show and Tellの画像もいとも簡単に作成してしまいます。しかし、英語専科教員がまだまだ少ない現状の中でより質の高い英語の授業を実践しようと思えば、ICTだけでは補えるはずもなく、担任の先生は多くの時間をかけて準備をしなくてはなりません。

現在、多くの自治体で英語アドバイザー、英語支援員、ALTとしてJ-SHINE資格者が活躍しています。その方々のサポートによって担任の先生は生き生きと授業を行い、児童は充実した授業を楽しんでいます。mpiのJ-SHINE講座では小学校で英語を教えるための専門知識を学ぶことができます。興味がある方はぜひ受講し日本の英語教育、そして、子どもたちの将来のために貢献していただけると嬉しく思います。


レポート一覧に戻る