こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2022年1月6日

ラジオ講座が人気らしい

聖学院大学人文学部児童学科
小川隆夫

寒い日が続いていますが、お元気でしょうか。皆さんは、この秋から始まったNHKの連続テレビ小説カムカムエヴリバディをご覧になっていますか。私は録画して観ています。上白石萌音さんの英語が上手だと話題になりましたが本当ですね。最近、この番組の影響か、「来年から英会話を始めたいと思っているんですが、ラジオの英語講座はいいですか?」と聞かれることがあります。「もちろん、いいと思います。テキスト代しかかかりませんし、あとは続けられるかですね。」と答えています。ラジオ講座のテキストは4月号が一番売れて月が進むにつれて徐々に売り上げ部数が下がるらしいので、多くの人にとって続けることがいかに難しいかが分かります。

この続けるというのはとても大切です。私の大学では幼児英語の授業があります。私が担当しています。履修者は幼稚園、保育園の先生を目指す学生たちです。秋学期はその学生の中に「君たち帰国子女?」と聞いてしまった2人の学生がいました。2人とも日本で生活していて海外での生活経験はなく、1人がオーストラリアに1週間だけ行ったそうです。

「どうして英語を身に付けたの?」と尋ねると2人とも低学年の時から中3まで、近所の英会話教室に通ってオールイングリッシュの授業を受けていたと答えました。私は思わず「よく頑張って続けたね。」と大人の彼らを小さい子どものように褒めてしまいました。子どもが習い事を途中で挫折せず中3まで続けるというのは本当に難しいことです。保護者にとっても大変です。ピアノでも英会話でも途中で止めずに続けるとそれなりに上達するというのは分かっていても、それがなかなかできず部活だ、受験勉強だと途中で止めてしまう子が多いのです。だいぶ前ですがmpiの本部校で行われた中3の卒業式に参加して、そのスピーチの見事さに驚いたことがあります。やはりその子たちもずっと続けてきた子たちでした。何でも続けないと力はつかないのです。今回、この2人の学生と話して小さい頃から継続して英語を学習することは将来必ず役立つと確認しました。

さて、幼児英語の授業に戻しましょう。今回の課題は1冊の絵本を徹底的に研究して、一人ずつ読み聞かせの発表をすることです。課題の絵本はStar Star Star(mpiの絵本ですが現在は販売が終了しています)です。この絵本は、ストーリーは単純ですが数字をしっかりと発音する必要があります。文字の大きさ・色・位置がページごとに違うのが特徴です。文章がまっすぐに書いてあるところ、弓状になって斜めに書いてあるところとページごとに異なっているのです。そして、星は思わぬところにあります。It's stuck on a bush. It's fallen in a lake. It's stuck in the mud. It's hanging in a tree. It's hidden in a nest. It's rolled down a hole! It's stuck between the rocks! It's flying on a leaf! It's stuck under a tiger! It's fallen in a hippo's mouth! これをどう表現して読んだらよいのか。学生たちにとってはレポート課題よりもずっとずっと大変だったそうです。そして、迎えた12月の発表会当日。ここでは彼らの工夫をちょっとだけご紹介しましょう。

Star, Star, Star

まずはタイトルの紹介です。StarをStar, Star, Starと3回言いますが、2回目のStarになっています。これをどう読むかが最初のポイント。この学生は声の大きさを変えて指を添え、子ども役の学生たちに一緒に言うように促しています。

Look! There's a star. It's stuck in the mud. We found three stars.

ぬかるみの中にある星は色が似ているせいかなかなか見つかりません。子どもに協力を求めて一緒に探そうとしています。

Look! There's a star. It's hanging in a tree. We found four stars!

ページをめくった途端、急に絵本を縦にしました。高い高い木の上の方に星があるような感じがして、思わずすごいと声を出す子もいました。

One, two, three, four, five, Six, seven, eight, nine, ten. Liftoff

数を数えていくと文字が大きくなっていきます。そして最後Liftoffの一声とともに大空へと星が勢いよく上がっていきます。急に高く持ち上げられた絵本によって、星が空に向かって飛び出した感じがしました。

こうして学生1人ひとりがそれぞれ自分なりの読み聞かせをしていくと、私では考えられないような読み方に出合うことができました。これなら現場に出て、どんな絵本でも子どもたちが十分楽しめるように読むことができるだろうなと嬉しくなりました。学生たちも満足した様子でした。

絵本を何冊も読むことはもちろん大切ですが、1冊を研究して読み聞かせの練習をするのはとても良い勉強になりますね。

※写真掲載を快く承諾してくれた学生たちに感謝します。


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