こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2021年10月30日

英語アドバイザー研修会がありました

聖学院大学人文学部児童学科
小川隆夫

急に寒い日が多くなった気がしますね。街ではコートを着ている人も見かけます。紅葉の便りもあちこちから届くようになりました。私は玄関のフラワーポットに寒さに強い花を植えてみました。

さて、非常事態宣言が解除されて1か月、日常生活が少しずつ戻ってきたような感じがします。私の大学では10月の1週目から対面授業が始まり、キャンパスでは休み時間になると学生たちが教室を移動している様子が見られるようになりました。しかし、授業はすべて座席指定で行われていますし、学食は孤食と黙食が原則です。学生たちが友達とおしゃべりを楽しみながら昼食をとる姿が見られるようになるにはもう少し時間がかかりそうです。

今月は都内の小学校で英語アドバイザーの研修会がありました。その区ではALTの他に日本人アドバイザーがいて、小学校英語教育をサポートしています。毎回のレッスンプランの相談や研究授業の指導案作成の支援、ALTと担任の仲介、実際の授業でのサポートと英語の授業に関わるほとんどを支援する英語の専門家の方々です。

この研修会は年に2回実施されます。今回は全員が研究授業の動画を観てから参加し、まずはその授業をした先生への具体的な助言についても研修しました。その先生は英語に苦手意識がある高学年の担任の先生でALTに頼りがちな授業になっていました。また、教室英語はセンテンスベースではなく1言単語がほとんどでした。子どもたちは先生の言いたいことを分かってくれていましたが、他学級の子どもたちでは難しかったと思います。

私がまずアドバイザーの方々にお願いしたのは、まず先生が自立できるような細かなアドバイスをして欲しいということでした。その先生は採用時から同一校に勤務していますので、やがて他区の学校へ転勤します。他区ではALTや英語アドバイザーがいるとは限りません。ひと昔前でしたら、ALTがいればALT任せの授業が行われているようなこともありましたが、今は担任の先生が主導です。やがて外国語専科が配置される計画ですがまだまだどうなるか分かりません。特に低・中学年を担当した場合は、ほぼ担任の先生が授業を行うことになるでしょう。そのためにも日々の授業の中でこうした先生が自信を持って指導できるように細かなことでもアドバイスして欲しいのです。

実際、研修会の前に私は直接、授業者の先生にアドバイスをしました。その細かなことのトップが教室での立ち位置でした。ALTとのTTでは苦手意識がある先生に共通していることはなるべく目立たない位置にいることです。この先生は教卓を挟んで左、ALTは右にいましたが、やり取りをするとどんどん黒板の方に下がっていくのです。つまり子どもたちから遠くなります。昔ならALTが話し始めると子どもたちの視界に入らないところに移動してしまう先生も多く見られましたがそれと同様です。ALTとのTTなら2人がアイコンタクトを取りながらコミュニケーションを取れるような位置に立って欲しいのです。これだけで子どもたちが受ける先生の印象は大きく変わるのです。まさに些細なことなのですが非言語コミュニケーションの観点から見るととても重要なことなのです。

一言単語が多い先生の解決策はスクリプト(台本)を作ることです。小学校の先生は他教科でも研究授業などでは発問計画を作成して授業に臨むことが多いものです。それによって授業中に子どもに投げかける言葉が洗練されます。英語でもスクリプトを作って、授業の流れに沿った教室英語が使えるようになると授業がスムーズになります。通じているか心配で言ってしまう日本語が不要になりますし、文法的に正しくても誰もそういう言い方をしないような日本人英語を使わなくなります。やさしい英語だけでも子どもたちを動かせることがわかると自信に繋がります。そして、徐々にスクリプトがなくても教室英語を上手に使うことができるようになるのです。実はこのスクリプト作りは面倒だと思われがちなのですが、数回作ると要領がわかるようになり、先生たちが実力をつけるのにうってつけなのです。こうしてどの授業もひと手間かけて実践していくうちに上達していくのですね。

アドバイザーはJ-SHINEの資格を持っている方々も多くいます。いつも担任の先生を見ているアドバイザーだからこそできる支援の1つに、担任の先生の自立のための支援を入れてくださると嬉しいです。


編集後記
先生がお教室で使う英語のことをTeacher Talkと呼びます。mpiにはこのTeacher Talkに特化した教材「リズムで覚える 教室英語ノート」を発売しています。
英語だけで授業をしたい先生の教室英語練習に最適な教材です!

商品コード: 6721
価格: 2,178円(税込)
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小学校英語や英語教室で「英語で英語を教える」際に大切なのはSimple, Short, Same, Slowの4つのSです。
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初級プログラム第3回 英語で英語を教えよう 1

日時: 2021年12月15日(水)10:00~15:00
受講料: 9,350円(税込)
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