こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2021年3月28日

教科書は紙派、それともデジタル派?

聖学院大学人文学部児童学科
小川隆夫

3月も中旬を過ぎたあたりから初夏のような日があったり、急に寒くなったりと外出の時はどんな服を着るか迷うような日々が続いていますね。私は花粉の季節が終わるのをひたすら待ち望んでいます。さていよいよ今年度も終わります。私の大学も卒業式をなんとか行うことができました。感染対策のため讃美歌に包まれる卒業式ではありませんでしたが、オルガンの音が響くチャペルで卒業生を送り出すことができて嬉しかったです。

ところで皆さんは、教科書は紙がいいと思いますか?それともデジタルでもOKでしょうか。昨年末から3月にかけてデジタル教科書のことが新聞を賑わしています。実は一口にデジタル教科書といっても3つの種類があります。1つ目は紙の教科書がデジタル化された「学習者用デジタル教科書」、2つ目が動画資料やアニメーション、ワークシートなどの教材がついた「学習者用デジタル教科書・教材」、3つ目が教員用の「指導者用デジタル教科書」です。すべてタブレットを使えば自由に拡大縮小ができますし、電子ペンで書き込みができるようになっています。

文部科学省は2024年度に本格導入を目指しているようです。しかし、紙の教科書は無償ですが学習者用デジタル教科書を全児童・生徒に無償配布するには巨額な費用が必要となります。もちろんこれを政府は既に織り込み済みという声もありますが。2024年度というのは小学校教科書の改訂の時期にあたるため、この改定を契機にデジタル教科書を導入するのではないかということです。

今の子どもたちはデジタルネイティブと呼ばれていますので、大人が心配するよりもすんなりとデジタル教科書を受け入れることでしょう。導入した学校では子どもたちからは概ね好評のようです。先生から見ると毎回プリントを用意する手間が省けるというメリットがあります。しかし、保護者からすると授業の足跡がわかるノートがなくなり、タブレットを見ないと何を勉強しているかわからないという心配の声もあるとか。

昨年行ったオーストラリアで、保護者から単語のスペルはiPadが自動で修正してくれるので覚えているのか不安だし、鉛筆やペンを持って自分で書くことが少なくなっていいのかしらという声を聞きました。担当の先生に伺うと、学校としてはその分余計に図書室の絵本や本を充実させて読み聞かせや本とタブレットの両方を使って調べさせる課題に力を入れているそうです。図書室を見た時、納得しました。写真をご覧ください。これが公立の小学校の図書室です。スタッフのサポートも手厚く、休み期間中も外から直接入室できるように工夫するなど、紙ベースの本がいつでも身近なところにあること、その良さを忘れさせない努力がされていました。これは私たちも参考にすべきところです。

さあ、4月から新しい年度です。4月1日、私の大学では入学式です。こちらも残念ながら規模を縮小し学科ごとに時間をずらしての実施です。いよいよ中学校で新学習指導要領での指導がスタート。外国語科の教科書を使って勉強した中学1年生はどんな活躍を見せてくれるか楽しみです。

まだまだ感染症対策が必要な毎日ですが、元気に新学期を迎えましょう。


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