こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2021年1月8日

スピーチ・コンテスト

聖学院大学人文学部児童学科
小川隆夫

寒い毎日ですが、読者の皆様はお変わりありませんか。12月は小学校の1学級の上限児童数を35人に引き下げることが決まったという嬉しいニュースが流れましたね。21年度から5年間かけて2年生より実施していくそうです。小学校全体で上限人数が引き下げるのは約40年ぶりだとか。私としてはやっとここまでこぎつけたかという感じです。財務省は学級サイズを小さくしても学力向上につながらないと主張したいようですが、貧困、虐待、発達障害など担任の支援が必要な児童はますます増えていますし、多国籍児童が多いクラスもあります。担任は勉強を教える以外にも目に見えない多くの仕事をやっていることを知って欲しいものです。実際、学級担任として働いた経験では40人と35人でその差はとてつもなく大きく感じました。

さて、先日ですが、都内の小学校でスピーチ・コンテストがあり、審査員としてお手伝いをしました。こんなご時世ですから体育館には出場者と司会の先生方だけで、在校生、保護者、審査員はZoomの画面を通して観ることになっていました。聞けば、保護者有志の皆さんがZoomの中継をお手伝いしていたようで、学校中のみんなで作り上げたイベントという雰囲気がしていました。

1年生は「好きな食べ物や自分ができること」を大きなジェスチャー付で紹介、何をやっても可愛い、その上、どの子の発表も英語のリズムをしっかりと感じることができました。2年生はGraded Readers(段階別に語彙などを調整している絵本)の朗読でした。少ないセンテンスの中でしっかりと絵本の楽しさを伝えていました。表情と表現力が素晴らしかったです。3年生のテーマは「こんな家に住みたい」です。スクリーンには自分で描いた大きな絵が映り個性的な家が登場しました。子どもの発想は豊かです。4年生は「こんな学校に行きたい」です。これもまずは絵に圧倒されましたし、自分の思いがいっぱい詰まったスピーチは楽しかったです。5年生はGraded Readersの朗読でしたがイギリスの犬の保護施設についてなどちょっと大人っぽい絵本の内容に引き込まれてしまいました。最後の6年生は「自分の宝物」の紹介です。時々アドリブが入りさすがに6年生、代表者としての貫禄も十分でした。この日は最終審査に残った各学年2、3名ずつの発表でしたが、どの子も自信に満ちて堂々としていて立派でした。

私は最後の講評でスピーチ・コンテストを成功させる秘訣について話しました。それは一生懸命練習した出場者がいることと素敵なオーディエンス(聴き手)がいることです。スピーチはZoomで中継して多くの子どもたちはそれぞれの教室で応援していましたが、画面に映らなくても聴いている子どもたちが体育館の中に一緒にいるような感じがしました。

この小学校は数年にわたりスピーチ・コンテストを実施していますが、その当時の副校長先生が参加されていてが、当時と比べ本当に上手になったと褒めていました。やはり継続は力です。スピーチとしての完成度も高いのですが、学年相応の子どもらしいテーマで声の出し方や話し方や立ち位置、ジェスチャーまでよく研究していました。

大雪のニュースが流れた寒い日でしたが、心温まる一日となりました。

そういえば12月21日の日本経済新聞には政府がデジタル教科書の利用制限を撤廃するというニュースが出ました。今までは授業時間数の2分の1未満という文科省令があったようですが、これを改正して紙の教科書と同様に使えるようになるそうです。25年度からすべての小中学校で導入するようです。これから来年も教育は目まぐるしく変わっていきそうですね。


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