こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2019年12月26日

さらに豊かな言語活動を目指して

聖学院大学人文学部児童学科
小川隆夫

寒い日が続いていますが、皆さんお元気でお過ごしでしょうか。12月21日、聖学院大学で第19回小学校英語指導者養成講座が開催されました。今回も全国から現役の先生や民間指導者、学生などが集まってくださいました。

今回は3つの講座があり、第1講座では「『言語活動を通して』どう指導していくのか?」、第2講座では「Planning and Play: ALTとのティーム・ティーチングの向上~人材を最大限に活用するために~」、第3講座では「3観点のバランスを考えて学習指導と評価~基本的な方向性と取組み~」というテーマで進められました。

第1講座では、私が豊かな言語活動を目指して、実際に活用するためにテキストも変化しているという話をしました。

 

Hi, friends!1というWe Canの前のテキストを覚えていらっしゃいますか。懐かしいですね。このLesson 8には「夢の時間わり」を作ろうI study Japanese.という単元がありました。わかりやすい内容だったせいかWhat do you study on Tuesday? I study math, social study, P.E. and music on Tuesday. などという練習が日本中の小学校で行われました。しかし、体育、音楽、家庭…などはstudyという表現でいいのでしょうか。私はとても違和感がありました。

やがて、We Can 2になるとこの表現はUnit 3でWhat do you have on Monday? I have math, English and P.E. on Monday.となりました。haveならどの教科で使ってもOKですよね。こうしてテキストも時代とともに改善されています。2020年4月から高学年は教科書が使われます。7つの出版社から出されたどれかが使われることになります。各社とも内容はWe Can!を参考にしていますが、それぞれが工夫を凝らした構成になっていると思います。もしかしたら良い悪いではなく微妙な表現の違いあるかも知れませんので見るのが楽しみですね。関心のある方はぜひ複数の教科書を見ていただきたいと思います。たぶんどれも安価ですが実際に購入できるのは来年春と言われています。

さてさて、今年もたくさんの研究授業を見せていただきました。「小学校の先生方、なかなか頑張っています。」というのが実感でしたが、年末ですからこれからさらに豊かな言語活動を目指すにはどうしたらよいか考えてみました。1つめは子ども達にいっぱいたまってきている語彙や表現を授業で活かすことだと思います。現在、1年生から英語をやっている学校も増えていますし、3年生から外国語活動をかなり熱心にやっている学校もありますので、子ども達にはたくさんの語彙や表現が音としてインプットされているはずです。それをもっともっと活かして欲しいです。

例えば、We Can! 2のUnit 3 He is famous. She is great.と言う単元では動物が自己紹介しています。テキストにはうさぎの顔をともに下のようなイラストが並べられています。

I play the .
I want a new .
I like .
I want nice .

英単語とイラストを見ただけでは、これだけの表現がわかればいいのだなと思ってしまいますが、実は音声を聞くと下のスクリプトのように聞こえてきます。

Hi, I'm Carrotina. C-A-R-R-O-T-I-N-A, Carrotina. Nice to meet you. I play the recorder. My recorder is very old. I want a new recorder. I like carrots. Do you like carrots? I want nice carrots.

自己紹介の時に自分の名前をスペルアウトしています。挨拶をしています。リコーダーがとっても古いから新しいリコーダーが欲しいと理由を言っています。私はニンジンが好きだけど、あなたは好きと聞いて、nice carrotsが欲しいと言っています。音声データでは今まで子ども達が培ってきたものをどんどん活かしています。教室ならもっともっといろいろなことを子ども達が言ってくれるはずです。それを上手に引き出して欲しいのです。
2つ目として、テキストや教科書・指導書の情報を最大限に活かすことだと思います。冒頭の自己紹介部分は場面を設定してホテルでのチェックインの練習でも使えると書かれています。なるほどです。ちょっとした半端な時間にできますね。また、この部分のように英単語とイラストで内容が可視化されているページを使うと動詞、目的語の位置に慣れることができまし、単数、複数もわかってきます。

小学校の先生は全教科を教えますから予習が大変です。私も若い頃、毎日、授業の準備にかなりの時間を割きました。しかし、何年間かやっていくうちに教科書の会社が変わっても指導要領が変わっても、その時間に大切なことが徐々に分かるようになってきて教科書も上手に使いこなせるようになります。そうした意味で2020年の春から教科としてスタートして数年経てば先生方も教え方のコツや教科書の使い方のコツを掴んでいくのではないかと期待しています。

来年度も現場で頑張っている先生方、民間の指導者の皆様の立場に立って、このコラムで応援メッセージを送りたいと思います。
それでは、どうぞ素敵な休日をお過ごしください。


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