こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2019年11月29日

ファブ5に学ぶほめ方

聖学院大学人文学部児童学科
小川隆夫

寒い毎日が続いていますが、皆様、お変わりありませんか。今週、私の大学では、クリスマスツリーの点灯式が行われ8mを超える大きなヒマラヤ杉に美しいイルミネーションが灯されました。そして、教員の部屋の廊下にもたくさんのツリーが飾られ、キャンパスが華やいできました。クリスチャンの大学にとってクリスマスはとても大切な行事です。これから全学でのクリスマス礼拝も行われますが、いよいよ今年も終わりに近づいたなと感じています。

ところで皆さんはNetflixってご存知ですか。映画やテレビドラマが定額で自分のスマホやタブレット、PCなどで楽しめるものです。その配信番組の「クィア・アイ」が今とても話題になっています。
番組には悩みをかかえる一般の人の心を開き、外見も内面も改造してしまうFab5(ファブファイブ)と言われる5人組が登場しています。
参考: https://www.cinemacafe.net/article/2018/06/08/57080.html

なぜ、この話題を取り上げたかと言いますと、今月、ある小学校の先生から子ども達をほめるコツを教えてくれませんかと言われたからです。実はこのFab5の相手を理解し思いを伝えようとする言葉が素晴らしいと評判で、特に彼らのほめ方は子どもに英語を教える人にとってとても参考になります。

ちょうど朝日新聞のアエラ(2019/12/2)が、『英語で気持ちを伝えたい』という特集で「クィア・アイ」を取り挙げていました。記事によればFab5の英語でお手本にしたいのが「ほめる表現」だそうです。それはすごく簡単でI like ○○.You are ○○. とシンプルであることです。
記事の中に登場するジャーナリストの鈴木あかねさんは「I like your hair. I like your shirt.というだけで場が和む。最強のほめ表現です。フェイスブックの『いいね』もgoodでなくlike。客観ではなく主観ですよね。」と言っています。「You are ○○.に入る形容詞も、greatやwonderfulだけではなくFab5はgorgeous, fabulous, cute, lovely, adorableとありとあらゆるほめ表現で相手をほめ倒す。ただしあえて言えば同じ"きれい"でもbeautifulは精神的な美しさも含み、gorgeousは見た目のみのという違いはあります。beautiful heartやbeautiful mindとは言いますが、gorgeous heart, gorgeous mindとは言いません」(鈴木さん)

私はかつてこのコラムで書いたことがありますが、I like ~.を使ってほめることを奨励していますが、Fab5も同じでした。

たとえば、教室では次のような表現が使えます。

I liked your gestures.
I liked your picture.
I liked your skit.
I liked your smile.

p.18『リズムで覚える教室英語ノート』mpi

I statementという言葉がありますが、自分の言葉で主観的に言うと相手に伝わりやすいです。前述の小学校の先生にもI like~.で子ども達をほめてくださいとお願いしました。子ども達は先生が自分のどこをほめてくれたのかがわかり、ただ単にVery Good!と言われるよりも何倍も嬉しいのです。

余談ですが子どもは褒められた時、どのレベルで褒められたかということを結構気にしています。絵や作文、小テストに花丸をつけて返すと何重丸かしっかりと数える子どもがクラスに何人もいます。私は学生たちに花丸をつける時も一丸ずつ離して丁寧に五重丸にしなさいと教えます。子どもによっては一筆書きのような丸だととてもあやふやな評価と受け取ることがあるのです。

Fab5の英語は、他にも参考になることがいくつもあります。彼が多くの人たちから支持されるのはほめるだけではなく他に3つの注目点があるからです。1つ目が彼らの「気遣い」です。日本語でも同じですが何かを指摘する時は、「まずほめてから」というテクニックを使っています。I have so much respect for you, but~.(とても素晴らしいと思うけど、でも~。)、こうして相手を肯定する前置きをおいてから、butで本題に入っているのです。
2つ目が相手にいつも敬意を払い、礼儀正しいこと。3つ目が彼らの「共感力」が高いことです。人に共感する時、彼らはI'm sorry.やSorry to hear that.(お気の毒に)より一歩踏み込んでI remember those feeling.(私も同じ経験をしたことがある)という表現を使っています。これだけで相手は同じ目線で向きってくれる感じがするのです。(アエラ,p.14~15)

これから年末の慌ただしい毎日ですが、時間がある時、Fab5の番組で彼らのコミュニケーション能力を観るのも良いでしょう。蛇足ですが、お試し期間を使えば無料で楽しむこともできます。


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