こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2019年11月1日

推測力を高めたい!

聖学院大学人文学部児童学科
小川隆夫

いよいよ上着が必要な季節となってきましたが、小学生が通学する様子を見るとまだ半袖の子もいて、子ども達は元気だなと改めて思っています。そういえば小学校には1年中半袖シャツと半ズボンで過ごす子が学年に1人はいたような気がします。今日はちょっと時間があったので庭の手入れをして花を植え替えてみました。家の周りがぐんと秋っぽくなりました。

さて、今回のテーマは「推測」です。ある5年生のクラスでWe Can! 1のUnit 6の授業を見たときのことです。電子教材でLet's Watch and Thinkを視聴していました。

 

You can see many pyramids in Egypt. The pyramids are very big and old. You can ride on a camel. It's fun. (We Can!1指導書p.56)

そして、視聴後でした。先生は「先生、リスニング苦手なんだよね。」「難しかったね。」「大変だったけど、聞き取れた?」と子ども達に話しかけました。きっと、それは先生の正直な気持ちかも知れません。ネイティブの発音に慣れていない先生にとっては本当に難しいのでしょう。しかし、子ども達がわかったことをメモ欄に書く前にこれを言ってしまうと、子ども達は「先生だって苦手で難しいのだからわかるわけないよ。」「全部聞き取れないけどいいの。」と思ってしまうでしょう。
この授業の最後にある振り返りの時間に、子ども達からは「Let's Watch and Thinkが大変でした。」「Let's Watch and Thinkが難しかったです。」という感想が続出した時、やはりなと思ってしまいました。

このLet's Watch and Thinkの目標は「わかったことをメモしよう」です。わかったことというのはスクリプトにあるすべての単語と文全体の細かいところまでわかったことではないのです。ましては聞き取ることではありません。
また、多くの人によくありがちなのですが、日本語では何気なく聞いたり読んだりしていても、英語ではすべてがわからないと、あるいは聞き取れないとわかったことにしないのです。リスニング中、1つの単語がわからないとそこで聞くのをやめてしまうこともあります。どうやら、私たちは「推測」して英語を聞くことや読むことが得意ではないようなのです。この先生のリスニングが苦手というのもすべてをわかって聞き取れないからと思っているのかも知れません。
しかし、現在、小学校の英語では推測することをとても大切にしています。文科省の小学校学習指導要領にも「推測」という言葉が何度も出てきます。この授業はテキストの世界地図の中にあるスフィンクスの絵を見てエジプトに思いを馳せることから始めています。電子教材では英語を聞きながらエジプトの国旗、ピラミッド、ラクダに乗った人を観ることができます。英語で分からない部分があってもそれを補って推測させてくれるものがたくさんあるのです。子ども達は豊富な資料と推測によって負担感なくわかったことだけを書けるように導かれています。私たちがこれから小学校の授業に関わる時はなるべく子ども達が推測する機会を多くとって子ども達の「推測力」を高めていく必要があります。
そういえば、大人が語学に強くなるためには「あいまい耐性」を強くするのが良いそうです。あいまいなことに対して強い人は外国語の学習に強いとか。あまり細かなことを気にせずにあいまいでも良しとし、この秋は英語の絵本や本を推測しながらどんどん読み、字幕なしで映画を楽しみたいものですね。


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