こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2019年10月2日

タイで英語を使ってみると?

聖学院大学人文学部児童学科
小川隆夫

9月の中旬、久しぶりにタイに1週間ほど行ってきました。今回はバンコクから国内線に乗り換えてチェンライに入り、チェンマイを経由してバンコクに戻るルートを選びました。昔、タイでは英語が通じずに苦労した覚えがあります。今回はどうか楽しみにして行きました。まず最初に行ったチェンライ、チェンマイではホテルやレストラン以外ではまだまだ通じるという感じではなかったと思います。高層ビルが増え、鉄道網もずいぶん充実してきたバンコクではどうだったでしょうか。

 

タイでは1996年から小学校での英語教育が始まり、今年ですでに23年目に入ります。まずは街をぶらぶらしてアジアンティーク・ザ・リバーフロントに行ってみました。再開発のきれいなエリアでレストランから雑貨やおしゃれなお店がいっぱいでした。その中の1つ、オリジナルTシャツ専門店を見つけて入ったところ、店長とおぼしき若い男性に声をかけられました。なんととてもわかりやすい英語で接客も抜群です。へえ、バンコクもこうなったんだ。街中でもずいぶん英語が通じるようになったなと思いました。ところがです。その後、すぐそばのセブンイレブンに入ってコーヒーを注文するとかなりあやしいのです。また、癖が強すぎて外国人にはとても聞き取りにくい感じがしました。その後も市内のいたるところで同じような経験をたくさんしました。

各国の英語力をランク付けしているEF Education Firstが公表しているEF EPI 英語能力指数(EF English Proficiency Index)2018年版によると、タイの英語力は世界で64位(88か国中)です。(タイの英語の実践については以下の文科省サイトからアクセスできます)。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/015/siryo/attach/__icsFiles/afieldfile/2018/01/24/1400697_001.pdf

かなり長い時間をかけて積み上げてきたタイの英語教育ですが、まだまだ成果として表れるまでに至ってないのが現状のようです。その要因の一つにタイ語の習得の難しさにあると言う人がいます。日本語と比べると漢字がない分、文字の数は少ないのですが声調(イントネーション)が5つあり、声調が違うと意味が違う単語になるようで単語に付ける声調記号や文法の例外規則も多く、習得するのが難しいそうです。タイの小学生はタイ語の学習にかなりの時間が取られるのではないかということです。また、小学校で英語を教える先生の専門性の問題や国民性がシャイのためだといわれたりもしています。いずれにしてもタイの英語教育にはまだまだ改良の余地がありそうです。
私が、癖が強くわかりにくい英語だと感じたのは、タイ人は語尾のLをNの音にしてしまうことが多いからだそうで、これはタイ英語の特徴の一つでりんごも「アップン」となり、語尾を上げて言うのが通常だとか。慣れるまで聞き取るのが大変そうです。

日本の英語力もこうして外国の人から見られているのだろうなと思いました。特に来年はオリンピック・パラリンピックで世界中から大勢の人が来日します。タイが64位だったEF EPI英語能力指数で日本は49位でした。前年より0.54ポイント下落の51.80(前年実績52.34)で49位(同37位)とランキングを大きく落とし、3年連続で「低い」英語能力レベルにとどまっています。
来年4月から小学校英語教科化がスタートします。アジアの国々をはじめ、世界は日本の英語教育の成果をじっと見ているのではないかと思います。ぜひ成功させたいものですね。

こちらのサイトとても興味深いので是非、訪問してみてください。
EF EPI英語能力指数とは?
EF EPI英語能力指数の2018年報告書はこちら

ではまた来月!


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