こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2019年7月30日

『曖昧さ耐性』を強くしたい!

聖学院大学人文学部児童学科
小川隆夫

暑い日が続いていますが、読者の皆様はお元気でいらっしゃいますか。


出典: https://www.tokaikisen.co.jp/ourship/jetship/
(画像をお借りしました)

私は7月も札幌のJES(小学校英語教育学会)、小学校の授業研究会、教育委員会主催の教員研修会などと忙しく動き回っておりました。そして、月末の26日には大島に日帰りで行ってきました。大島というと遠いというイメージですが竹芝桟橋から朝8時発のジェット船に乗って1時間40分で到着です。

 

台風が近づいてきていたため、波が大きくないか?などと心配しましたが、まったく揺れることもなく写真のように飛行機の機内のような室内で快適にくつろぐことができました。大島ではいくつかの島の小学校から英語担当の先生方が集まって熱心に研修が行われました。皆さんいい色に日焼けして健康的なのが印象的でした。こうした自然豊かなところでの勤務もいいなと思いましたが、離島ならではのご苦労も多いようです。

 

さて、今月、この大島を含めていくつかの教育委員会の研修を行いましたが、先生方からリスニングに自信がないんですとか、いつもこう言いたいなと思いながらも間違ってしまうのではとなかなか言えないんですという皆さんに共通した悩みを伺いました。

今、小学校英語では『推測』という言葉が大切です。相手は何を言っているのだろうと推測することです。私たちは普段、新聞や本を読む時、意味は分かるけど読み方が分からない漢字、文脈の意味は分かっても正確には意味がわからない言葉に出合うことがよくあると思いますが、あまり不自由を感じてないと思います。母語では意識せず自然に『推測』しているからです。英語でもこれが大切なのです。学生を見ているとTOEICのリスニングで1つわからないとすぐに全部わからないものとしてそこで諦めてしまうなんてことがよくあります。英語での推測の習慣ができてないからです。

意味が全部わからないと前に進まないと実際のコミュニケーション場面でもなかなか円滑に進まないでしょう。だいたいこういうことかなと考えながら先に進めることでリスニング力も向上しコミュニケーションも豊かになります。これを『曖昧さ耐性』と言います。『曖昧さ耐性』は英語で言えばAmbiguity Toleranceです。『曖昧さ耐性』が強い学習者は第二言語学習のいくつかの側面で有利である(白石他、2009)と言われています。実際、私の周囲を見ると『曖昧さ耐性』が強い人たちにはアクティブで新しいものにどんどん挑戦していくタイプで語学にも強い人が多いような気がします。

これから小学校で英語に携わる先生方は『曖昧さ耐性』を強くしていくといいかなと思います。『推測』して考えて曖昧でも気にしないようにして英語の授業を行うとずいぶん気持ちが楽になり、リスニングだけでなくスピーキングにもプラスになると思います。

子どもは本来、全部わからなくても気にしません。指導者が全部わからせようとするとどんどん気にするようになってしまいます。この夏休み、気持ちがリフレッシュする時です。『曖昧さ耐性』が強くなるようにちょっとだけ意識するのもいいかも知れません。

私の8月は教員免許更新講座、公民館での英語の絵本作り、5日間の英語キャンプと夏休みならではのイベントが目白押しです。どのイベントもポジティブに楽しむつもりです。

皆様、どうぞ素敵な夏をお過ごしください。

参考文献
白畑知彦・冨田祐一・村野井仁・若林茂則(2009).『英語教育用語辞典』大修館書店


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