こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2019年2月4日

Society 5.0って何?

聖学院大学人文学部児童学科
小川隆夫

皆さんはこのSociety 5.0という言葉、どこかで聞いたことがありますか。内閣府のホームページには次のように書かれています。

サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)
狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。

出典: 内閣府 (https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html)

実は1月29日(火)に内田洋行のユビキタス協創広場でNEW EDUCATION EXPOが開催されました。そこで文部科学省初等中等教育局の高谷浩樹情報教育・外国語教育課長の基調講演があり、冒頭で話されたのがSociety 5.0でした。
私もとても新鮮でしたが、Soceity5.0とは新しい価値やサービスが創造され、人々に豊かさをもたらす新たな社会のことだそうです。そこでは暮らしや働き方も変わり、今、学校で教えていることは、時代が変化したら通用しなくなり、人工知能の急速な進化が、人間の職業を奪うのではないか予想されているそうです。
新学習指導要領改訂の方向性も、予測できない変化を前向きに受け止め、主体的に向き合い、自らの可能性を発揮し、より良い社会と幸福な人生の作り手となるための力を子どもたちに育むことになっています。もちろん新学習指導要領総則にも
・情報活動能力の育成
・学校におけるICT環境整備とICTを活用した学習活動
が書かれていますので、文部科学省がいかに力を入れていることが分かります。

温度差があるICT活用

このように文部科学省は教育現場でのICTの活用の推進に努力しているわけですが、実は自治体ごとにかなりの温度差があって、なかなか進まないのが現状のようです。実際、私が小学校に伺うと、活用どころか文部科学省から配布されているLet’s try!やWe Can!の電子データが学校用のパソコンや先生方のパソコンにインストールされてないことがあります。その原因は自治体のICTに対する関心の高さや予算の違いもありますが、自治体ごとのセキュリティーポリシーによって学校ではインストールできないということもあります。これではICTの活用がなかなか進まないわけです。
最近、文部科学省はSmall Talkはじめ、各種の最新情報をYouTubeで通して公開していますが、YouTubeの利用を認めていない自治体もあるのも現状です。YouTubeは英語教材の宝庫ですので残念です。

小学校英語にもICTを

このセミナーでは私も講演しましたが、小学校英語にもICTをもっと活用できたらいいなと思います。
新学習指導要領では「言語活動を通して」という言葉が小中高を繋げる外国語教育のキーワードとなっていますが、電子教材を上手に利用することで「言語活動を通して」子どもたちに「気付き」を促がせるものがたくさんあります。
皆さんはI wantとI'd likeの違いをどう扱っていますか。We Can1のUnit 8 What would you like?のトピックですが、「would は丁寧な言い方の時に使います。」と説明するのでは「言語活動を通して」ではありません。こんな時、電子教材では、ビュッフェスタイルのレストランの場面が出てきてスイーツコーナーの前に男の子(こうせい君)が立って、こんなことを言っている映像を観ることができます。

 

Wow, nice sweet!
Cake, ice cream, fruit, parfait and daifuku.
They look so yummy.
I want...fruits and a parfait. Ice cream for grandmother and grandfather.

We Can11 指導編p.78

どうですか。wantを使って一人ごとのように言っていることがわかります。

次はシェフがいるスープとサラダのコーナーです。電子教材ではシェフとこうせい君のお母さん、お父さんのやりとりを絵を見ながら聞くことができます。

シェフ: Hello, what would you like?
お母さん: Hello. Ummm...
シェフ: Corn soup, potato soup, carrot soup and miso soup. The potato soup is cold, not hot. What would you like?
お母さん: I see. Everything looks so delicious. I’d like carrot soup for me and corn soup for my mother and my father.
シェフ: Ok, carrot soup for you. Corn soup for your mother and father. Here you are.
お母さん: Thank you very much.
お父さん: I love vegetables. I want lettuce, carrots and corn. I want Italian dressing on my salad.

同pp.78-79

シェフがお客様に向かって話すwouldを使った表現とお母さんが答える時のI'd likeを使った表現、最後にお父さんが独り言かお母さんに言うようにwantを使った表現があります。電子教材を使うとwouldは丁寧な時に使う言い方などと説明しなくても、子どもたちは実際に言葉を使っている状況を観て、聞いて違いに気付くことができるのです。
いよいよこれからSociety 5.0なのですから、授業にも電子教材を上手に使っていけたらいいですね。


レポート一覧に戻る