こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2018年12月27日

簡単そうで難しい「言語活動」を通して

聖学院大学人文学部児童学科
小川隆夫

12月22日の土曜日、聖学院大学では18年目を迎えた小学校英語指導者養成講座が行われました。今回も全国からたくさんの指導者の皆様に集まっていただきました。今年の特徴はより実践に即した研修を望んでいる参加者が多いことした。
私はLet's Try!1,2を使用し、こんな工夫をしたらもっと授業が楽しく、充実しますよということを話しましたが、強調したことは、新学習指導要領では以下のように小学校、中学校、高等学校まで一貫して「言語活動」を通してコミュニケーション能力の育成を目指しているということです。

 

小学校中学年
外国語による聞くこと、話すことの「言語活動」を通してコミュニケーションの素地となる資質能力を育成すること目指す。

小学校高学年
聞くこと、読むこと、話すこと、書くことの「言語活動」を通してコミュニケーションの基礎となる資質・能力を育成することを目指す。

中学校
聞くこと、読むこと、話すこと、書くことの「言語活動」を通して簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝えあったりする。

高校
言語活動及びこれらを結びつけた統合的な「言語活動」を通し情報や考え方などを的確に理解したり表現したりして伝え合ったりする。

しかし、全国各地でいろいろな授業を見せていただくと未だにひと昔前のやり方やスキルベースでやっている授業も多く、なかなか「言語活動」を通して、つまり実際に言葉を使いながら目標に向かっていくことは難しいのかなと思うことがあります。

学生に「言語活動」を通して英語を学ぶ体験を

そこで、私は小学校の教師を目指す学生たちに、自ら「言語活動」を通して英語を学ぶ体験させて教師として送り出したいなと小さな試みを始めました。彼らは国語や算数は、自分自身の経験で初めてでも何とか授業ができます。しかし、英語は「外国語活動」の初期に授業を受けた学生が多くその記憶もあいまいで、中学校英語の印象が強いためどうしても中学校と同じやり方に走りがちです。もちろん何度も児童役になり授業を体験させるわけですが、自分が受講経験のない授業を行うことはハードルが高いものです。そんな彼らのために目を付けたのはスカイプ英会話レッスンです。フィリピンの英会話学校と提携して毎日25分ずつ3か月間連続でとにかく話してみるという試みです。募集して集まった勇気ある挑戦者は10人、大学から受講料の補助を受けて12月中旬にその計画はスタートしました。進捗状況や受講状況は私がモニターできます。ある日、受講の様子をそばでみているとWhat's your favorite food? と尋ねられているだけなのに、頭が真っ白状態になったようで、「ええと、ええと。」がやたらに多くなっています。授業中、子どもたちに教えるために模擬授業で何度も何度も使っているはずなのに、いざ自分が生徒になるとすぐに返事が出来ないのです。それでも、回数を重ねて毎日やっているうちに講師とも何となくコミュニケーションが取れるようになっているようです。ある日、講師からは「文法のルールのことばかり考えないでいいんだよ。後でわかるから。」と言われていました。私が経験させたかったのはまさにこれです。さあ、3か月間の言語活動体験、どんなふうになるか楽しみです。後で報告します。

そして、もう一つの試みがグローバルキャンプです。2019年2月12日から5日間、学内で英語だけで9時から17時までアクティブラーニングによる授業を受けるという模擬留学体験です。英会話イーオンとの産学連携で行われますが、埼玉県の補助金を得ておりますので、埼玉県在住、在勤、在学の高校生、大学生、社会人の方々も参加できます。

小グループに分けて英語だけで授業が進み、常に能動的な行動が求められます。最後には旅行会社社員として自分たちが新規開拓した目的地を売り込むなどのプレゼンテーションを行われます。

 

英語だけを使う環境に身を置くだけで、少しずつ参加者に変化が見られます。まさに言語活動を通して化学反応が起こるようなものです。今年度で3回目になりますが、今回はどんな変化が参加者に起こるか楽しみです。
参加ご希望の方はHPをご覧ください。2019年1月14日まで参加を受付けおります。
https://www.seigakuin.jp/events/globalcamp/

それでは皆様、素敵な年末年始をお過ごしください。


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