こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2018年9月28日

ある小さな自治体の試み(4) 子どもたちのSWITCH ON!®

小学校英語支援団体 Friendly World
神戸女子大学 非常勤講師
長谷川和代

PC操作に慣れてこられた先生たちは、子どもたちと一緒にSWITCH ON!を真似し言われるようになってきました。子どもたちに取って、『先生が自分たちと一緒に言ってくれている!』と感じることは大きな喜びです。子どもたちを観察していますと、担任の先生の姿を目で追っているのが分かります。『先生が一緒に言っている!』と喜んでいるのも手に取るように分かります。
『担任の先生っていいなぁ』
『うらやましいなぁ』
と思う瞬間です。先生が一緒に楽しんで授業をされていると、クラスに一体感が出ます。そうなると、子どもたちの口も動きます。小学校の先生は授業の仕掛け人です。見事ですね。

オアシスとなったSWITCH ON!

さて、1学期も終わりかけると、We Can!の内容が入ってきます。Hi, friends! よりも内容が高度になっています。英語の情報量が多いので、先生も子どもたちも背伸びし、フラフラになる時もあります。息切れもします。もう、いっぱい、いっぱいだと思われることもある状態です。その中で、ある担任の先生が、
「We Can!は難しいです。でも、SWITCH ON!の時間があるので助かります。SWITCH ON!の時間は楽しんだらいいですね」
と言われました。私は、
「そうですね。SWITCH ON! はStoryも易しいので一歩一歩進んでいけます。字もゆっくり進んだらいいですよね」「SWITCH ON!で楽しみましょう」
と応えました。先生の口から「楽しんだらいいですね」という言葉。すごくうれしかったです。

We Can!の高度さに比べると、SWITCH ON!(私たちはGrade1の段階です)の英語は簡単で親しみやすいです。We Can!の内容が入ってくるにしたがって、SWITCH ON!の時間はいつの間にか外国語活動の時間のオアシスのような存在となっていました。先生も笑顔でホッとして、自分のペースで進められる時間となりました。また、子どもたちへの発問も板についてきました。授業のオアシスになるほどホッとした時間となるなんて、想像もしていなかったことでした。そして、その上、おまけまでありました。

We Can!にはLet's Watch and Thinkという英語の映像を見て何を言っているのか推測する活動が新しく入りました。最初から単語を教え、練習するのではなく、既習事項を使いながら、目標表現に気づかせるという新しい指導法の導入です。そこで、私たち支援者は、Let's Watch and ThinkもSWITCH ON!と同じように、1回目は『何が聞こえたかな』で挙手して発表する。2回目は、『もう一度聞いてみよう。今度は何と言っているかな、注意深く聞いてみよう』で挙手発表するのを提案しました。先生方は聞き方の進め方に慣れておられるので、すぐに「そうしましょう」と採用になりました。

We Can!のLet's Watch and Thinkを、SWITCH ON!のSTORYと同じ手順で行う中での発見を書きます。それは、子どもたちに聞く力がついてきたことの発見でした。その場面を目の前に見たのは、6年生、We Can!2 Unit3 He is famous. She is greatの単元でした。Let's Watch and Think2のFishelleの映像を見て、Fishelleが何を言っているか聞き、2回目はもっと注意深く聞くという活動の後、子どもたちは手に持った色付きの手作りカードをFishelleが言ったように並べます。2回聞いただけでしたが、まぁ! なんと!
「分かる!分かる!」
「“I study math.”と言っていた」
等と口々に言い、このように次々と黒板に貼ってくれました。2回聞くだけで、キーワードを聞き取ることができ、それを元にカードを並べることまでできました。
字を読んで貼っているのではなく、絵を見て貼っている子も多くいました。おかげで、文の構造に気づく活動がやりやすくなりました。

 

We Canは聞く活動=input活動がたくさんあります。でも、どこに注目して、どう聞き取るのかの細かな指導の方法は書いてありません。多くの小学校がまず聞こえてくる単語に注目させるなど、SWITCH ON!でする指導をしているとは考えられません。ただ聞いているだけでは聞く力を伸ばすことは難しいと思います。SWITCH ON!を使っている子どもたちはSWITCH ON!を通して、聞き方のポイントを教えてもらいながら聞く力を養っています。この基礎となる聞く力はWe Can!のListeningにも大いに役立つこと、先生と子どもたちが楽しんだり、ちょっと挑戦したりしながら取り組めるので、難易度にも無理がないことが分かりました。1学期間の試みでこんなにも先生方が実感される成果がでるとは予想外でした。

夏休み後はどうなの?

一学期の終り頃は、下記の英語を一緒に言おうでした。


Jim: Hi, Dad.
Dad: Good morning, Jim.

Jim: Hi, Mom.
Mom: Good morning, Jim.

子どもたちはStoryの英語を皆覚えているところから、登場人物のセリフを言うところまで進みました。簡単な英語ですよね。これなら言えるでしょうと思われるでしょう。

 

さて、2学期の支援校は、運動会の練習と共に授業が始まりました。外国語活動も運動会の練習の後のけだるさの中で始まりました。条件が悪いです。いつものように、挨拶が終わると、SWITCH ON!の時間となります。心配でした。StoryはHappy Birthday!です。一度やっておりますので、2周目となります。今度は【字幕ON】で再生です。字幕は画面の下側に出ますので、疲れているはずの子どもたちが字幕を見ようと上半身を伸ばし始めました。英語の読み方を習っていないので読めないにもかかわらずです。一か月聞いていない内容ですが、2回目を見る時は、担任から「一緒に言ってみましょう」の指示がありました。下記の内容です。字を見ると、「えー!難しい」と思われると思います。ところが、これは、Jimのお誕生日の出だしと、プレゼントをもらった後のセリフですので、物語の山です。子どもたちからすると、「わぁ~!ありがとう!」の気持ちを込めた言葉です。そう思うと、子どもたちが言いたい英語となるのが分かります。

みんな:Happy Birthday, Jim.
Jim: Thank you.

Jim: Thank you for the nice present, Tom!
Tom: You're welcome.
 

私が今回もビックリしたのは、“Thank you for the nice present, Tom!” “You're welcome.”の箇所。映像の音声と全く同じように嬉しい気持ちで言えるのです。全員が言えるというのではないと思いますが、声を出している子、体で表現している子、口を動かしている子、ほとんどの子が画面を見て言おうとしていました。 夏休みをはさんでいますが、一か月で進歩していると思いませんか?誰一人、「難しいから言えない」という声を発した子はいませんでした。言わされているのではなく、言いたくなる言葉、言えるかもしれない言葉だからでしょう。物語がどういうわけか小学生の心に訴えるものだからでしょう。私の次の関心は、「ここまでうまく行っているけど、「壁」があるのか?」です。


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