こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2018年5月26日

名古屋のセミナーがあつかった

聖学院大学人文学部児童学科
小川隆夫

今月は毎日暑い日が続きますね。5月12日(土)、この日も暑いでしたが私は名古屋に出かけました。八事(やごと)にあるイオンカルチャーセンターでのセミナーです。名古屋はなんと10年ぶりになります。懐かしいmpi会員や近隣の大学の先生、小学校の先生、自宅で教えている方など、大勢の皆様に集まっていただきました。中にはわざわざ浜松からお越しいただいた方もいらっしゃいました。ご参加の皆様ありがとうございました。

今回のセミナーは『小学校英語教育を担う指導者とは』というテーマでした。

実は担任主導という言葉がやっと定着してきたかなと思っていたこの時期に、急に文部科学省は小学校英語専科主導にシフトするのではという話があちこちから聞こえるようになりました。これは4月7日の新聞各紙に

文部科学省は6日、全国の公立中学・高校に通う生徒の英語力を調べた2017年度の英語教育実施状況調査の結果を公表した。中3で「英検3級程度以上」の力がある生徒は前年度より4.6ポイント増の40.7%、高3で「英検準2級程度以上」は2.9ポイント増の39.3%だった。政府は20年の東京五輪などを見据えグローバル化に対応するため、17年度までにそれぞれの割合を50%にすることを目標としていたが、達成できなかった。

と発表されたため、これがきっかけになり小学校では英語専科が教えるような施策になるのではと、心配する声が大きくなったわけです。そもそも英検の結果だけで英語力を判断していいのかということもありますし、お金がかかることですから優秀でも受験できない生徒もいるのではと思います。さらに、英検対策をするかどうかで結果は大きく違うでしょう。そして、最大の問題は小学校英語専科が教えれば英語力が上がるのかということです。

実際、すでに各地でその動きが見られているようで多くの問題も生じています。採用されたばかりで小学校担任の経験もない初任者が英語専科になったり、中学校の先生を急に小学校に回したりというようなこともあり、ずっと英語を教えるために頑張ってきた担任の先生たちがはずされ意欲をなくしたという話も聞きます。

 

小学校英語の良さは担任が関わっていることだと思います。ただ単に英語を詰め込むだけではないのです。「ネイティブ信仰」にもつながることですが、かつてネイティブを雇用していれば英語教育に熱心に取り組んでいると勘違いしている学校や自治体が多くありました。これも最近は財源に限界があるのかずいぶん減ったように思います。小学校英語専科も一時的なブームになり結局効果はあまりなかったというようなことになるのではと危惧しています。

先日読んだ鈴木克義先生の「英語は小学校からでは遅すぎます!」という本の中に、山梨県のイマージョン教育を実践しているマリア国際幼稚園が紹介されていました。ここではネイティブの先生がいるのに日本人の担任が主役でネイティブはサポート役なのだそうです。事務長の先生は最初からコミュニケーションが成立しているから、日本人が教える方が英語が伸びると話しています。小学校もクラスの子どもたちと人間関係が成立している担任が主導するからこそ、良い英語教育ができるのではないかと思います。

今こそ担任の先生たちに力をつけてもらうチャンスなのです。可能ならばそこにJ-SHINE資格*を持った地域人材やネイティブがサポートする形で入るのが良いかと思います。あくまで担任主導で英語専科を雇用したとしても担任をポートする形にするのが一番良いかたちではと考えます。
名古屋ではこんなお話をしながら、全員でWeather Songを歌って踊り大盛り上がりになりました。さらに2次会に参加してくださった方々とはこのお話が延々と続きました。私はこうした参加者の皆様と一体になれるような講座が大好きです。近い将来皆様の地域に行くこともあるかも知れません。その時はぜひご参加くださいね。

*小学校英語指導者認定協議会

また、6月からmpi J-SHINE資格取得必修講座が大阪・東京の2か所で始まります。

6日間の講座で、「小学校英語はじめる教科書」の共著者である東先生と分担して講師をしますが、私の担当日は6月9日、16日、17日。東京会場は7月28日、8月4日、5日です。10時から17時までというハードな日程の講座ですが盛りだくさんの楽しく充実した内容になるように努力します。もちろん最新の小学校英語事情もお話ししますので、すでに資格をお持ちの方の参加もお待ちしています。mpiパートナー会員の方やmpi認定のJ-SHINE資格をお持ちの方はご希望日のみの受講もできるようですのでお問い合わせください。

それでは皆様、時節柄、どうぞご自愛ください。

参考文献:鈴木克義(2010)『英語は小学校からでは遅すぎます!』幼年教育出版.
参考資料:時事通信 https://medical.jiji.com/news/13664


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