こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2014年6月23日

『児童が活躍する外国語活動~英語を使うチャンスをいかに提供するか?ゲームクリエイター?JTE~

2014年6月23日
『児童が活躍する外国語活動』
~英語を使うチャンスをいかに提供するか?
ゲームクリエイター?JTE~

大田原市英語活動指導員
J-SHINE(小学校英語指導者認定協議会)トレーナー
mpi会員 大伴 久美

レポート:小学校英語の現場から

“I want to be a game designer.” 高学年の締めくくりとして将来の夢を語るレッスンでとてもよく聞くフレーズです。しかし子どもたちの間では「ゲームクリエイター」という言葉がはやっているようです。誰もがまずこちらの単語を言うほど大変人気のある職業。 常日頃ゲームをひねり出す作業に頭を悩ませるJTE(*1)は英語を教えることが本業ですが、同時にゲームクリエイターでもあると思っています。

「ゲームクリエイター。」私のことか?とJTE。
一句できた。

英語活動に欠かせないゲーム。毎回JTEとして教案を作成するときに頭が痛くなる部分でもあり、また作りながらわくわくする部分でもあります。
小学校英語関係の講話やセミナーに参加すると、「リアルな活動」の重要さを強調され、ドリルを避ける、答えのわかった質問をしない、子どもに嘘を言わせないなどなどの教えを賜り、心の底から納得。会場を出たときの高揚感ったらありません。 「ああ、これで私もあすから素晴らしい指導ができる!」だけど現実は家に帰ると、教案を前にその教えをどうすれば日々の活動に当てはめることができるのか?という壁にぶち当たります。

ワークショップで見せてもらったデモは自分が知らなかったアイディアで、デモを行っている先生方もとても楽しそうだった。これだ!と思って授業で使ったら、思わぬ穴があった、なんてことも一度や二度ではありません。
なぜうまくいかなかったか?それはゲームに勝つために英語が必要ではなかったからでした。デモは大人の世界。現場は子どもの世界です。英語をしゃべらせたい大人の事情なんて知ったこっちゃないのです。ただただゲームを楽しみたいのが子どもです。 英語を言ってくれなかったとしたらデザインに問題ありです。こんなこと書きながら自分で耳が痛い・・・。痛いついでに最近やってしまったゲームの失敗作をこっそりご披露いたします。

4年生の授業で「友達を紹介しよう」をやりました。大田原市は平成17年から英語特区として小学校1、2年は年間16時間。3年生から6年生までは35時間の外国語活動(英語)を行っています。
ターゲットは “This is my friend, ○○.” と言って友達を紹介し、紹介された同士で “Nice to meet you.” ” Nice to meet you, too.” と握手を交わす会話でした。
ゲームとして用意した活動は、班で輪になり右の人を左の人に紹介し、全員終わったら “Finish!” と叫んで着席する、という単純なもの。ところが一つのグループで一通り見本デモをやって見せたにもかかわらず、始めてみたら大混乱。 うまくいくグループもありましたが、左隣の人を紹介するはずが右の人を紹介してしまい、いつの間にか流れが逆になっていたグループもあったり、と終わったときには多くの子どもたちの頭に??マークがついていました。

原因は単純明快。全員に「情報のギャップがない」ことが混乱の元でした。お互いを知っている度合が皆一緒の状況の中で、「知っている人だけれども、知っている人に英語を使って紹介する」という取り決めが今一つ呑み込めていなかったのです。
ところが次の週、4年生全員がうまく友達紹介をすることができました。
どんな奇跡が?いえいえ、奇跡じゃなくて成功の鍵は「ALT(*2)」です。レッスンの冒頭、復習のコーナーを設け「ALTに全員友達紹介」を行いました。
次の座席の人をALTに紹介し、その児童とALTが “Nice to meet you.” “ Nice to meet you, too.”と握手をする。順に次々に紹介していき、最後の人は最初の人をALTに紹介してクラス全員で “Finish! ”というゲームでした。

このALTは2年前からこの学校に勤めていて、児童も知らないはずはないのですが、それでも「クラスメイトではない人に(しかも外国人に。だから英語で。)クラスメイトを紹介する。」という活動の要の部分がすっと心に入って行ったようです。 先週の混乱が嘘のようにスムーズに最初の児童にバトンが帰ってきました。
自称「ゲームクリエイター」おおいに反省した次第です。
リアルな状況を作り出すのにALTは欠かせないと再確認。児童が「英語を使ってみる」と言う体験に「ALT」はとてもとても大事な存在なのでした。
それ以来、決してゲームのデザインで失敗することなく子どもたち全員が英語を正しく使いながら活動を楽しんでいます・・・・、と言いたいところですが、成功打率10割には達しません。
(これに関しては、まだまだ修行中です!)

「ゲームクリエーター」としてのそんな夢のような目標をめざし、日夜子どもたちが今関心のあることの情報を収集し、英語を言わせる必要性を盛り込み、知らず知らずのいわゆる「ズル」をさせてしまう穴をふさぎながらゲーム作りにいそしんでいます。  「ゲームが楽しかった!」という振り返りカードのコメントを読みながら、「英語を使う活動になっていたか?」自分自身振り返りの毎日です。

*1:ALT 外国人指導助手
*2:JTE 日本人英語指導者

小学校英語を民間でサポートする「J-SHINE」については こちらから


レポート一覧に戻る