こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2014年5月23日

『児童が活躍する外国語活動』All Englishから生まれるチャレンジと喜び

2014年5月23日
『児童が活躍する外国語活動』
All Englishから生まれるチャレンジと喜び

長野県茅野市日本人講師兼スーパーバイザー
J-SHINE(小学校英語指導者認定協議会)トレーナー
mpiパートナー会員 仲沢 淳子

レポート:小学校英語の現場から

小学校の授業風景で、All English (※1)と聞くと、どんなイメージが思い浮かびますか?
ALT(※2)やJTE(※3)が、子どもたちの前で、流暢な英語を話している姿、又は、日本語の使用を禁止されて、とまどっている先生や子どもたちの姿を連想するでしょうか?

私が勤務している小学校でも、All Englishを基本に、日々英語活動が行われています。
そこには、ALTの英語に必死に耳を傾けるHRT T(※4)や、伝えたい事が英語にならず、とまどいを感じている子どもの姿があります。
この“何とも言えない緊張感、じれったさ”が“分かった!”に変わる瞬間、 喜びや感動が教室内に溢れる、という場面もこれまで何度も目撃してきました。“分からない”と“分かった”のギャップが大きければ大きい程、子ども達の満足感や達成感も増すようです。

小学校の現場に入りたての頃、私はJTEの役割は、子どもたちの前でできるだけたくさん英語を話し、聞かせる事だと解釈していました。しかし、それだけでは会話のモデルを示すことは出来ても、 主役である子どもたち自身に、英語で活躍できる経験をさせてあげる事が出来ません。現場に入ったものの、初めの頃は、HRT、ALTに次ぐ3人目の先生(JTE)の意義が何なのか、今一つ掴みきれ ずに、何となく授業に携わっていました。

そのような中、“せっかく英語に特化した立場で学校にいるのだから、できる限り現場のお役に立ちたい。”と思うようになり、J-SHINEの指導者育成トレーナーを目指す事を決心しました。 そして、第二言語取得や指導法についての勉強をしていくうち、徐々にJTEとは何か、の答えが見えてきました。その答えとは、スタートとゴールのギャップを、専門知識を使って解決すること。 正しい手立てがあれば、All Englishでも、いいえ、All Englishだからこそ、子どもたちが楽しく活躍出来る、と言うことに気づいたのです。それこそが、JTEの腕の見せ所だったのですね。

英語onlyでも“ついて行きたい”と子どもたちに思わせる方法の一つとして、私が特に大切にしているのは“導入”の部分です。いかに子どもたちを引きつけ、注意を持続させるか。 舞台裏担当者としては、HRTやALTにも導入の意義と方法を分かりやすく伝えなければなりません。この辺りは、英語力、日本語力だけでなく、コミュニケーション能力も問われます。(これに関しては、まだまだ修行中です!)

4月、新しく来たALT にも“この最初のステップを大切にしてね。”と伝えました。最初の授業はALTの自己紹介だったのですが、好きな果物や趣味等を伝えるのに、ALTは本物の果物、ゴルフクラブ、写真、本etc.とたくさんのモノを 背負って学校に来てくれました。もちろん、子どもたちの食いつきと集中力は、言うまでもありません。日本語を一切話せないALTですが、そんな事は全く問題にならず、むしろ、“言葉は通じないのに、一緒に笑えるんだ!“と子どもたち にはプラスの要素になっているように見えました。

そして、つい先日、日頃の成果とも言うべき、私のJTE人生にとって、新たな糧となるような嬉しい出来事がありました。朝、英語ルームに行くと、ALTがニコニコ顔で、“昨日、6年生のある女の子が、HRTからの伝言を伝える為に、 放課後僕の所に来たんだ。”と言うのです。“それがね、お互い言葉が通じないものだから、大変だったんだ。”と。なんと、“明日の何時から何時までは、○○の為英語ルームが使用できない。”というHRTからのメッセージを伝えるのに、 その子は45分間、黒板に絵を描いたり、片言の英語やジェスチャーで頑張ったと言うのです。

そして、ついにやっと通じた時、二人は、“やったぁ!!やったぁ!!”“Yes!! Yes!!” と一緒に叫んだそうです。その話を聞いた時、私は自分がその場に居合わせなくて良かった!”と思いました。 もし、その場に私がいたら、45分間も待てたでしょうか? 恐らく、しばらくは見守っても、通訳をして、本物のチャレンジと感動の機会を奪ってしまったのではないかと思います。 待つことの大切さ、を分かっているつもりの私でしたが、そんなに辛抱強く伝えたい思いを実現させる子がいるとは、想定しておらず、正に”目から鱗“の出来事でした。
と同時に、ひょっとしたら普段教室内で、不要な説明を加え、無意識に子どもたちの達成感を奪っているかもしれない、と反省しました。 その子の辛抱強さと、分かるまで待ってくれたALT、どちらからも学ぶものがあり、希望をもらった気がします。
本番は予期せず、どこでも起こり得るのですね。教室の中でも外でも、子どもたちが自信を持って他者との距離を縮める経験ができるよう、HRT、ALT、子ども達を導きつつ、互いに学び合う、それがJTEとしての今の私の楽しみであり、課題でもあります。

*1:All English 活動を英語だけで進めていくこと。100%でなくてもそれを目指していくこと。
*2:ALT 外国人指導助手
*3:JTE 日本人英語指導者
*4:HRT 学級担任

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