こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2012年10月5日

子どもたちの『自律を目指した』活動案

2012年10月5日
子どもたちの『自律を目指した』
活動案

小学校英語指導者(J-SHINE)育成トレーナー
枚方市小学校英語指導助手・樟葉小学校勤務
松延亜紀

レポート:小学校英語の現場から

行事の多い2学期が始まりました。
小学校では運動会への取り組みがスタートし、子ども達は妙にテンションが高かったり、疲れていたりするので児童の状況に応じて授業の工夫が要る時期でもありますね。 さて、今月は9月号に引き続き「『自律を目指した』明日の授業に役立つ活動案」についてステップごとにいくつかご紹介させて頂きます。

私は各レッスンで「インタビュー活動」を必ず取り入れています。また、レッスンの最後にはたいてい「発表活動」を取り入れています。発表形式は様々ですが、いずれも「自律」に繋がると考えるからです。個人では「自律と自立」。
そしてペア、グループ発表では「仲間との共学における自律」です。英語はコミュニケーションを取る道具です。英語を使う事が楽しいと感じる体験を小学校の間にたくさんし、発表する事で自分のことをもっと英語で伝えられるようになりたいと感じてもらう事が「自律した学習者」になると考えています。

では、そのゴールに向けてどんな活動を取り入れているかをご紹介します。
まず授業の取っ掛かりを作る大事な活動であるウォーム・アップ(英語学習に入りやすくするための活動)です。私はここに必ず歌かチャンツを使います。理由は二つあります。

一つは「外国語活動のスイッチを入れる」。二つ目は「英語の音やリズムに慣れる」です。
「高学年は歌わない」とよく言われます。確かに低学年に比べると高学年は選曲や導入を工夫しなければいけませんが、まずは、指導者が楽しそうに歌って見せる事で子ども達も歌ってみようと思うのだと思います。
もちろんキーパーソンは担任の先生です。担任の先生がじっと立っていても子ども達は歌いません。普段見せない担任の姿を子ども達は楽しそうに見て気持ちがほぐれ少しずつ口が動き出します。音楽で英語のハードルを下げて誰もが授業に入りやすい空気を作ることを大切にしています。ポイントは馴染のあるメロディーの歌を使う。リズムに乗りやすい、歌いやすいものを使う事です。
たとえば外来語と英語の比較に使えるmpiの“バナナじゃなくてbananaチャンツ”は外国語活動に慣れていない先生にも扱いやすい教材です。

次に導入で取り入れる「聞いて発話する活動」ですが、指導書にも出ている「キーワード・ゲーム」を子ども達は嬉々としてやります。
やり方は二人の間に消しゴムを置き、指導者がキーワードを決めます。指導者の後について児童は発話し、キーワードが出たら消しゴムを取り合うゲームです。単語を繰り返し聞いて発話するのに効果的です。時数が進めば、これを文章の繰り返しに使う事も可能です。たとえば『Hi,friends1』のLesson4で14-15ページの語彙を使い“I like ~. ”の文章を用いて活動をする際、指導者は単語だけではなく“I like apples. ”とセンテンスを言ってキーワード・ゲームを行います。キーセンテンス・ゲームですね。子ども達が繰り返し聞いても飽きないで楽しく発話できるような活動をいくつか行い、積極的に発話できるようにしていくのが導入部分の活動のポイントです。

導入が十分出来たら次は「発話を促す活動」です。
『Hi,friends2』の指導書にある“ミッシングゲーム”や“ステレオゲーム”も発話を促すために、簡単に出来る楽しい活動ですが他にも、おはじきを使った“ボンゴゲーム”もこの活動に使えます。 まず、先ほどのページの好きな絵4つにおはじきを置く、あるいは鉛筆で印を付けるなどさせます。そのページの絵カードを袋に入れ、児童が1枚引きます。
今学習しているターゲットセンテンスを使って、りんごの絵ならば“Do you like apples?”などと、児童から担任に質問させます。
担任は答えを言い、りんごの上に印を付けていた児童は1ポイントもらえます。このように続けていき、最初に選んだ4つの絵カードが全て出た児童は“Bongo”と大きな声で言います。いずれの活動も気を付けなくてはいけないのは、児童は既にターゲットの文章が一人で言えるようになっている事。「発話を促す活動」を言えないうちに行っては意味がありません。

発話が出来れば「インタビュー活動」を行います。
インタビューの結果をどう扱うかがポイントです。この間行ったのは『Hi,friends1』のp21にある「市場調査」です。インタビューの結果からこのクラスの「一番人気の色を予測する」と言うのを行いました。予測した後好きな色調査を挙手で行い実際の結果を出しました。 「予想通り」や「予想に反した」結果を知って子ども達の「イェ~イ!」や「へ~」の声が聞こえておかしかったです。

最後に「発表」です。これまでは用意された言語材料でたくさん活動してきましたが、発表では自分が言いたい事を発表させるようにしています。
「伝えたいことを英語で言えるようになりたい」と感じてもらう事を狙いとしています。発表前に用紙に「発表で頑張る目標」を書いてもらいます。終了後は「自分の発表を振り返って」と「友達の発表を見て」の気付きを書いてもらいます。
対自分、対他者について気付きを得る事でほとんどの子が次の発表の課題を見つけて書いています。「次は顔をあげて発表する」「○○さんみたいにすらすら言えるようになりたい」など子ども達がハードルを自らあげ、挑戦していく姿が見られます。
また「言いたいことが英語で言えるようになりたい」と感じてくれる子もいます。いずれも『自律した学習者』ですね。

ご紹介した簡単に出来る活動をステップごとに取り入れる事で、子ども達は、「楽しく遊んでいるうちにいつの間にか言えるようになった」と振り返りに書いています。
積極的に取り組ませる、大きな声で発話するなどポイントを押さえてやれば体験的な活動から習得できるものはたくさんあると感じます。 ほんのちょっとした工夫が生きてきます。大切なのは指導者が単元それぞれの目標設定をしっかり行い、活動の一つ一つに繋がりと意味を持たせる事です。その為にもJTEの専門的な知識と“引き出し”豊富な担任の先生とのコラボレーションは必要不可欠です。


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