こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2012年1月6日

枚方市JTE研究会

2012年1月6日
「枚方市JTE研究会」

小学校英語指導者(J-SHINE)育成トレーナー
枚方市小学校英語指導助手・樟葉小学校勤務
松延亜紀

レポート:小学校英語の現場から

 大阪枚方市の小学校にJTE(英語活動助手)としてお手伝いをさせて頂いて5年目になります。昨年6月に枚方市の小学校英語活動について取り上げさせて頂いたので、今回はそこで立ち上げた研究会についてご紹介をさせて頂きます。

 枚方市でJTEとして採用していただいて3年目の春、現場の状況が依然変わらない事に焦りを感じ始めていました。現場の先生との指導案についての細かな打ち合わせが十分に出来ず、本当の意味での担任T1の授業も実践できずJTEとしてどうしたらよいのだろうかと思い悩んでいた時に、小学校英語活動に長く携わっているJ-SHINEトレーナーの友達に相談すると「いい組織があるのだからまず横の関係を強めるためにも研究会を立ち上げてはどうか」とアドバイスをもらい「なるほど」と思った私は早速枚方JTEの仲間に相談し準備を進めることにしました。これが研究会立ち上げのきっかけです。

 枚方市は春と夏にJTEを対象にした研修があります。その場で研究会立ち上げについての案内を配布し、また近隣の小学校に入っている知り合いにも連絡するなどして広範囲に研究会への参加を呼びかけ、多数を集めてスタートしました。しかしその後は他市の方の継続的な参加は難しく、枚方市20数名のJTEのうち8名ほどで細々と活動を行っていたのですが研修の際に口コミで案内するうちに今では半分以上、15名近くが毎回集まるようになりました。

 例会では指導案のアイデアシェアを主に取り上げていますが、小学校で使えそうな教材の指導法を学ぶために講師を招いて指導者向けのワークショップを開く事もあります。これまでにも英語ノートの単元を利用して小中連携にも繋がる活動をされている他市のJTEの方や国際理解を活用した小学校英語を実践されている方をお招きし、授業案を紹介して頂きました。JTEの指導案作成の力を付けていく為にこういった機会も積極的に設けてきました。またJTEの仲間を通じて外山節子先生をお招きしてご指導頂いたときに指導案作成に効果的なMultiple Intelligences(IQでは測れない8つの知能を人はそれぞれ一組持っているというガードナーの理論)を紹介して頂き、それからはマッピング(どんな内容を取り入れ、活動に導きどのように発展させ、ゴールへつなげるか)の手法を用いて多重知能を意識した指導案の流れを作れるようになりました。それまでは私自身例会をどうまとめて良いのか戸惑いがありましたが、これを利用する事で指導案の流れが作りやすくなったと思います。

 定例会では単元のアイデアシェアだけでなく担任の先生とのTTの進め方や外部講師としての立場や悩みなど様々な気持ちのシェアもしお互いの支えの場になっていったと思います。内容も回を追うごとに充実して行き、素晴らしい教材が毎回生み出されています。その教材を使いたいときに使えるように教材を共有できるサイト(Sky Drive)を作りました。パソコンに詳しい仲間が調べてこのサイトを開設してくれたお陰で単元ごとに絵カード、ワークシートやパワーポイントといった手作り教材を保存し皆でシェア出来るようになりました。この会はそういった仲間の協力が大きく、ここまで発展して来られたのだと思います。

 今後の研究会としての課題は一人でも多く現場の先生にこの例会に足を運んでもらえるようにすることです。子ども達の実態を把握している担任がT1で授業を進める事は不可欠で、自信を持って授業を行って頂くためにもこの例会に参加していただいて意見交換しながら指導法を研究する事で更に良い授業が出来ると思います。

 またJTEとしての課題は校内研修の充実です。現場の先生方は授業の準備、子ども達のケアや校内部会などで大変お忙しいです。その中で特別に外国語活動(以下外活)に時間を割くという事はむずかしいのは傍で見ていて感じます。市内で行われる研修も主に英語の中核教員(外活授業の研究担当教員)が参加されるだけです。毎年同じ先生方が5,6年を受け持つわけではないので、外活の研修が広く行われる為にも校内研修を充実させる事が大切かと感じています。その為にJTEがそれなりの力を付ける事は必須です。
 先日依頼を受けて校内研修を行う際、この夏J-SHINEトレーナーとしてお手伝いさせていただいたJ-SHINEフォローアップセミナーの内容を参考に先生方に「45分の授業の流れ」と「TTの意味」について実際の授業を体験していただきながら行いました。それでも1時間ほどの研修で「小学校英語は教えるものではなく子どもたちが主体になって活動し、相手に伝えたい気持ちや相手について知りたい気持ちを英語を通して育む」という事を理解していただくには限界があると感じています。しかしこういう校内研修を行う事で体験的に先生方に外活を理解していただく事が一番伝わりやすいと考えています。

 私の学校では5年生の英語担当教員が夏の研修を終え「担任がやらなくては」と意識を持ってくださり、私の指導案を元に自分のアイデアを入れながらT1で授業を始めてくださっています。出来るだけ先生の「やってみよう」というお気持ちを尊重しながら「ここはこうした方がいいですが、先生はどう思われますか?」とお尋ねして先生の考えを理解した上でアドバイスするように配慮しています。「T1でやって見よう」と思ってくださる先生方の気持ちを大切にその数を増やす事が本当の意味の「小学校英語」の始まりだと思います。

 必修化に伴い少し動きが出たように思います。まず英語担当教員がT1の授業を実践してくださる事が現場に反映していくことと思います。まだ一部ですがこの動きがいい波を作り、そしてその波が違う方向に進まないようにトレーナーとして更に力を付け、上手にアドバイスをしていきたいと思います。
 次回は静岡県でご活躍の戸塚様にお願いします。よろしくお願いします。


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