こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2009年11月2日

英語活動とは「先生が活躍しない授業」

2009年11月2日
英語活動とは「先生が活躍しない授業」
~愛知県の英語教育推進特区でアシスタント~
愛知県豊橋市立大清水小学校英語活動SA
J-SHINE小学校英語上級認定指導者
酒井 順子
レポート:小学校英語の現場から

(1)英語支援者として小学校に入るようになったきっかけ
 4年前、市の広報紙を見て小学校英語活動スクールアシスタント(以後、SAという)という仕事を知りました。民間の英会話学校の子供英会話講師をしていた私は「経験を活かして少しでも地域に貢献したい!!」という思いから応募し、採用されました。

(2)現在の活動状況
1.学校現場
 私の住んでいる豊橋市は、現在英語教育推進特区で、平成19年度より市内の全小学校で年間35時間英会話の授業が行われています。そのうちの20時間を私たちSAが学級担任のアシスタントとして活動に関わっています。3・4年生を日本人アシスタントが、5・6年生を外国人講師(ALT)が担当しています。
2.学級担任とのかかわり
 授業のプランは、市で作成されたスタンダード版のテーマ別活動案を参考に、担任の先生が立案してくださっています。長期の休みを使ってのSAとの入念な打合せに加え、直前にもFAXで具体的な活動案のやりとりを行っています。そのFAXには必ず「今週も元気良く楽しく、活動を盛り上げていきましょう!!」というようなコメントをつけてくださり、どの先生もSAと一緒に授業を作り上げていくという姿勢が素晴らしいです。
 大清水小学校で3年目となる今年度は、理想的な担任主導の授業が行われています。
 例えばクラスマネージメントや英語を使うモデル、SAとのデモに子どもの心を惹きつけるよう上手に行ってくださいます。私はTT(ティームティーチング)の意義やそれぞれの役割分担が分かるまでは、「全てを任せてもらって行う方が楽なのではないか?」と正直思ったこともありました。しかし、それでは意味がありません。TTには理由があり、それぞれの役割を上手に果たしていくことが子どもたちと一体化できるコツだと学びました。子どもの状態を一番よく知っている担任の先生が立案されたものに、少しでもプラスαのアイディアを提案できるよう、私は常にネタ帳を片手に歩いています。「このテーマならこの曲、あのチャンツ、これはコミュニケーション活動がある」というように、セミナーや研修には積極的に参加し、自分の引き出しを増やす努力をしています。
 また、授業中は出来る限りOnly Englishで行うようにしています。しかし、初めて与える英語の印象はとても重要なので「英語だけでも分かる!!」と、子どもたちに自信をつけてもらえるように工夫をしています。方法として最初はクラスルームイングリッシュのみ→次にプラスChallenge time!と授業中の一部分だけ集中して聞いてみる→更にゲームのルール説明を英語で聞く→最後はほとんどを英語のみで、というように段階を経て行っています。非言語要素も理解を助ける大きな割合を占めています。そのために大きなジェスチャーや表情を豊かに表したり、褒めたりすることも忘れずに行っています。
3.使用のMPI教材と子どもの反応
 MPI教材は、カタカナ表記が多いカテゴリーを学ぶ際に『バナナじゃなくてbananaチャンツ』を、また『英会話たいそう』はウォームアップで必ず取り入れており大人気です。その際はジェスチャーをクラスで考えたり、単語を入れ替えて変化を楽しんだりしています。どちらも大変好評で放課中も子ども同士で歌い踊っており、その姿に感動します。
 また毎回の子どもたちの振り返りカードはとても参考になり、その生の声に耳を傾けながら次回の授業への取り組みを考えています。
4.個人での取組み状況
 子供に英語を教えるという点では、小学校の英会話活動と英会話学校も仕事に変わりはありません。しかし小学校で一度に多数の児童を教えることは、今までに無い経験でした。実際に活動を始めてからも配慮すべき点が複数見つかり、一年目にして壁に当たりました。また、教材を熟知していることと、活動を提案することは異なります。自分に足りないものを補うために、昨年、松香フォニックスの初級・中級講座を受け勉強しました。それが今、大変役に立っています。

(3)今後の課題・目標
 私たちSAは3・4年生を担当している為、いかに5・6年生への活動につなげていくかが大切な役割だと思っています。初めて英語に触れた2年間で「英会話は楽しい!!」「もっと知りたい、話せるようになりたい!!」という気持ちを持って5年生へいけるようにしたいです。その為に「ゲームで負けるから英会話は嫌いだ」とならないように、「競争」ではなく「協力」するアクティビティを取り入れ、「もう知っていることだからつまらない」とならないように発見のある授業を心がけています。またそれぞれ子どもの持っている能力を引き出せるバランスのとれたコミュニケーション活動を大事にしていきたいです。
 ある講座で「子どもが活躍する授業とは?」という課題が出されました。様々な答えが飛び交った中、「先生が活躍しない授業である。」という結論を講演者の先生から聞いたときに、新しい発見が生まれました。「授業は指導者がするもの」という観念を覆されたからです。確かに英会話活動に限ってはその通りだと常に実感しています。やらされているのではなく、「子どもが自ら話したくなる活動」「子どもが主体になれる授業」を作り続けるよう、努めていきたいです。


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