こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2017年9月5日

英語キャンプ キーワードは“Emotion”

聖学院大学
小川隆夫

今年の夏は読者の皆様はどう過ごされましたか?私は8月の中旬から4泊5日の「英語キャンプ・World School」で山梨県の清里高原に行ってきました。

私がこのキャンプのコーディネーターを担当して4年目、今年は小学6年生130名とALT20名、小学校の先生25名、大学生5名、教育委員会のスタッフ数名が参加しました。最近、あちこちの自治体や民間で英語キャンプが流行っていますが、ここは14年の歴史があり草分け的な存在です。
キャンプ中、生活はすべて英語で行われますが、英語のレッスンは1クラス8名から9名で15クラス、指導はALTと日本人のTTで9回行われます。そして、最終日にこのキャンプの目玉、グランドフィナーレがあります。ここではレッスンで使った英語を中心に自分たちでストーリーを考えて演出し、小道具を作り、全員の前で成果を発表します。数年前にケーブルテレビでこのキャンプの様子が放送されてから、この最後のグランドフィナーレまでの努力の様子をみんなが知ることになり、保護者も子ども達もグランドフィナーレを目標に参加するようになりました。

 

毎年、このキャンプにはキーワードがあります。初日のオープニングセレモニーで私とALTリーダーで発表します。今年は“Emotion”です。私とリーダーがやりとりを通して“Emotion”ってこういうものだよって英語と全身で表現して伝えました。あえて日本語にはしません。子ども達の推測力を伸ばすのもキャンプの目的なのです。面白いにことに子ども達はレッスン中もことあるごとに“Emotion”を口にしていました。解散式で代表の子どもが英語という言葉には、そして、ALTとのやり取りにはいつも“Emotion”があると話をしてくれました。きっと5日間を通してそれぞれが“Emotion”の意味を感じ取ってくれたのだと思います。

 

このキャンプがこうして14年も続いたのには、きめ細かなたくさんの工夫があるからだと思います。まずは参加する小学校の先生には2度の事前研修と1日の全体研修が行われることです。全体研修会の午前中はレッスングループごとに参加する子ども達と顔合わせをしてゲームを楽しみます。参加者同士も初顔合わせだからです。午後にはALTとともにすべて英語の研修が行われ、全員に10分間の模擬TT授業を行うという課題も出されます。現地では翌日の授業のために毎日1時間の打ち合わせを英語で行います。もちろんALTとのコミュニケーションを目的にしていますので和気あいあいとした雰囲気で行われますが、日本人の先生は全部で7人のALTとTT授業を行うというシステムですので、なかなかハードです。こうして日本人の小学校の先生のコミュニケーション能力の向上も考えられています。

また、このキャンプは充実したサポート体制でも特筆しています。15クラスのALTの他にヘッドティーチャー4人とALTリーダーが授業中は常に巡回し、授業の進行具合をチェックしながら、歌を披露したりデモンストレーションに参加します。10人の生活指導を担当する小学校の先生も常に子どもたちの様子を見守り体調や不安をなくすように配慮しています。もちろんキャンプですから、レクリエーションの時間やハイキング、キャンプファイヤーも計画されています。

帰ってからいつも思うことは、この英語キャンプは子ども達にはもちろん大きな収穫がありますが、指導者の小学校の先生にも得るものが多いようです。実際、先生の英語が日々上達していくのがよくわかります。ALTの指導技術も向上していきます。

実は企画している私も、子ども達からも先生からも、そして、ALTからもいっぱい、いっぱい学んでいます。

これが終わるとすぐに2学期、秋です。


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