こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2017年7月12日

ほめ言葉、そして、ほめられたら

聖学院大学
小川隆夫

梅雨の季節になりましたね。お元気でしょうか。私の大学はちょうど紫陽花の季節です。キャンパスのあちこちにきれいな花が咲いています。紫陽花はたくさんの花言葉を持っているそうです。ポジティブなイメージですと「元気な女性」「辛抱強い愛情」、ガクアジサイは「謙虚」、白い紫陽花は「寛容」、これはどんな花言葉かなと考えながら紫陽花を眺めるのも楽しいですね。

さて、今回は教室での「ほめ言葉」についてです。現場の先生方や学生たちから、授業中に英語で子どもをほめる時、「どうもワンパターンになってしまう。」という話をよく聞きます。先日、学生の模擬授業を見たら“Super!”を連発していました。「“Super!” ばかり言っていたら、子どもはThat’s good!と言われた時、喜ばないかもしれないよ。」と思わず言ってしまいました。

 

もちろん、彼は他のほめ言葉も知っていましたが、いざ使うとなると“Super!”だけが出てしまうとか。かつての私の同僚たちもみんなそんな感じでした。そんな時、『リズムでおぼえる教室英語ノート』(2004, mpi)が大活躍していました。

このテキストは当時私が勤務していた小学校で先生たちがその一言が英語で言えれば授業がうまく進むのにという声をもとに、授業で使いたい英語を集めて編集されています。その特徴は全編が先生と児童のやりとりになっていることです。先生がこう言ったら、児童はこう言うだろうと考えて作られています。

 

例えば4.「発表しよう、ほめあおう」ではこんな感じです。

〈Teacher〉
It's time for our skit show.
Who wants to try?
Any volunteers?
That was great!
You did a good job.
〈Student〉
Okay.
Let me try!
Let me try!
Thank you very much.
Thank you very much.
I liked your gestures.
I liked your picture.
I liked your skit.
I liked your smile.
Well done!  Well done!  Very well done
That was perfect. You did great.
That's right. Very good. That's excellent!
Give them a big hand!
Who's next?

It's our turn.

MEMOとして次のようなことも入っています。

1:コメントの言葉

★よくできた
Yes. Okay. Fine. Right. That's right.
★とてもよくできた
That's excellent/ very good. Perfect. Good job. Super. Fantastic.

2: 「よくなったね」と進歩をほめる言葉も大切

That's better. That's much better. . You're getting better.

3. ほめる時は具体的に

I liked your speech. You were funny. I liked your reading.

4. ほめる相手が一人の時

Give him/ her a big hand.

同僚たちはこのテキストのCDを通勤の車の中や電車の中で何度も聴いたそうです。音楽は、あの有名な住友紀人さんと鶴屋智生が担当してくださり、そのリズムの楽しいこと。音楽のなかにレコード盤のノイズが隠れていたり、聴いていると次々と発見がありました。また、先生役と児童役の声優さんの声が印象的で、教室英語がどんどんインプットできるようです。
実は13年前の1月、このCDのレコーディングスタジオにいました。ものすごく寒い日でしたが、声優さんのアドリブがあまりに見事だったのを覚えています。

そうそうこの中にはlikeを使った具体例がたくさん出ています。 私たちはlikeを使ってほめる習慣があまりないようですが、ネイティブは朝会うと、よく“I like your tie.”などと言って私のネクタイや持ち物をほめてくれました。ぜひ、子どもたちのパフォーマンスをlikeでほめてあげてください。喜びますよ。

“Your English is very good.”とほめられたら、何と答える?

このテキストで私たちがもう一つ伝えたかったことはこれです。私たち日本人はこうほめられると、”No, it’s not. My English is poor.”と謙遜してしまいがちです。これは日本語であれば何の問題もありませんし、いわゆる謙遜の美徳です。
しかし、英語圏の文化では自分を卑下することや、へりくだることは好まれません。こんな時は、まず、“Thank you.”と答えます。「いや、そんなことはありません。」などと、謙遜していてはコミュニケーションが円滑に進んでいかないのです。私たちはほめられたときには少し謙遜するのが当たり前という文化の中にいます。しかし、これは日本人独特のコミュニケーション行動なのです。このテキストでもこの部分で、

That was great!
You did a good job.
Thank you very much.
Thank you very much.

と、すぐにThank you.と答えるようになっています。ここには子どもたちが大人になった時に異文化誤解を生まないようにしたいなという思いが込められています。

私たちは教室英語を何気なく使っています。しかし、こうしてほめられた時、どう答えるとスムーズなコミュニケーションになるかを子どもたちに伝えたいものです。「忖度」という言葉が流行り、文脈・意味背景から情報を読み取る日本の文化に中にどっぷり浸かっている私たち日本人ですが、より良い人間関係を気づくために「言葉」のやり取りを多く行う英語圏の文化についても考えておきたいものです。

次回は7月です。いよいよ夏本番です。お体を大切にお過ごしください。


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