こどもと英語ニュース ~レポート 小学校の現場から~

2015年12月25日

松香洋子の私的小学校英語教育論

2015年12月25日
松香洋子の
私的小学校英語教育論
第9回 教科化にむけて考えてみたいこと ~後編~

mpi松香フォニックス会長
松香洋子

レポート:小学校英語の現場から

ー私の提案ー

課題1
どうやったら、先生中心でなく、子どもが活躍する体験活動にすることができるのか?子どもに何を体験させたいのか?

○ 英語日直という制度をもうけて、3~4人の児童が、あいさつ、今日の気分、天気、曜日、日付、天気、などをやりとりする。日直は全員にまわるようにする。どの子も前にでて英語を使う体験をする。
○ まずは単語を練習して、それを文にいれて使うという従来の展開ではなく、I want to go to Italy/France/Canadaという文から始める。行きたい国、見たいもの、食べたいものを言うというところから始める。 まず単語からはじめ、それを徹底させるという手法をとると、子どもたちがやりたいことを表現するところまで到達しないので、コミュニケーション活動になりにくい。
○ ペア活動、グループ活動を多用する。それによって全員の子どもの参加度を高める。
○ ペアやグループで練習したことを皆の前で発表する時間を儲ける。人前で英語を話す自信をつける。
○ 先生がゲームのやり方を示したら、なるべく早く児童に仕切らせる。
○ 子どもにクラスを進行するための表現、褒める言葉など、児童のためのClassroom Englishを教える。

課題2
どうやったら、学級担任が主体的に指導できるか?

○ 学級担任がいつも黒板の中央の位置に立ち、ALTや地域人材はそのとなりに立つ。
○ HRTが必ず活動を開始する。そしてその後、進行役をすすめる。
○ まずはその日のトピックにあわせて、HRTとALTや支援者とのsmall talk(軽い雑談)をやってみせる。今回の内容ならば、これまでに行った海外の国とか、エスカルゴは食べたことがあるか等。英語によるコミュニケーションの見本を児童にみせる。
○ ゲーム、ペア活動、グループ活動をたくさん取り入れるには、学級担任の力が必要。日頃他教科でやっている児童を中心とするペア活動やグループ活動の経験を外国語活動の時間でも生かす。
○ ALTの先生に自分の体験、出身地のことを話してもらうようにHRTがしむける。今回であれば、観光地であるハワイの話がなかったのは残念。生の情報を子どもたちに届け、興味をもたせる。 (横浜市では全国にさきがけて国際理解教育を実施し、様々な国からゲストがきて、そのゲストが提供することをHRTや児童と一緒に楽しむ、という活動があるため、英語活動の時間にはこのようなことはやらない、となっているのかもしれない。)

課題3
どうやったら、中学校へ進学する前に、小学校でやるべきことを明確にすることができるのか?カリキュラムと評価ということ。

○ 今回、みせていただいた内容は将来的には4年生向けだと設定すると、子どもの知的関心と内容が合ってくるものと思われる。
○ 6年生でこの内容をするのであれば、各国の名所、食べ物、スポーツなど、さらに深めた内容が必要と思われる。調べ学習と組み合わせるなども考えるといい。他教科でやった内容、児童が日々に体験していることを英語とむすびつけるCLIL(教科内容と英語を結びつけていく学習)の方向をさぐるのも1つの解決法であると思われる。
○ 中学校の英語教育から考えれば、小学生がどのようなコミュニケーション活動に慣れてから中学校へ上がってくるかが関心事であろう。あいさつをする、QAをする、ALTに質問する、スキットをする、ミニスピーチをする、ゲームをする、歌を歌う等、さらに幅広い活動に慣れていくことが大切。
○ 子どもの参加度を高めるにはどうしたらよいのか、を真剣に考える必要がある。教科になれば、そして中学校へ進学すれば、だまっていればその時間が無事に過ぎていくような授業方法、内容は許されない。どの子どもも必ず参加する、ペア活動、グループ活動のやり方を工夫する必要がある。
○ 中学校の英語教師側からみれば、子どもたちがどのような英文、単語を練習してきたかが一番気になるところだろう。例えばここでは、I want to go/ see/ eat/buy/tryという表現を使いました、と明確にできるとよいと思う。もちろん、中学校でも後に同じ表現をスパイラルに取り上げるのが自然である。
○ 聞く、話す、読む、書く、の順番を大切にしながらも、5、6年生になれば、文字で裏付けしてあげることで単語も発音しやすかったり、文も言いやすいようになる場合が多いので、どこから文字をいれていくのかも設定が必要である。
○ 振り返りカードをCAN-DOに変えていくことも1つの解決法になると思う。その日にやったことを記述する、楽しかったかを記述するだけでなく、それを通して、自分が何をできると感じかを主観的にとらえる事ができるようにさせていくというのも通信簿の成績記載にも繋がっていく方法であろう。

松香洋子プロフィール


レポート一覧に戻る