How どう評価するのか。
Can Do 評価には、「できない」はない。
最近、Can Do 評価は、子どもたちを「できる」「できない」に仕分けする評価方法なので小学校にはそぐわない、と考える人がいるという話を聞いてとてもびっくりしました。
いったいどこからそのような誤解が生じるのでしょうか?
Can Do 評価の元祖は、ヨーロッパの共通言語基準CEFR(Common European Framework of Reference)でしょう。この基準には、A1, A2, B1, B2, C1, C2の6レベルがありますが、「旅行」「仕事」「留学」の3つの用途にあわせて、その言語で「できること」を記述するシステムです。
そのどこにも、「できないこと」を申告するような余地はありません。旅行、仕事、留学というはっきりとした目的があるので、その目的に必要な「できる」ことを記述しているのです。
皆さんもよく知っている通り、ヨーロッパでは、EUの設立と共に、EU加盟国の中ではパスポートをなくし、通貨を共通にして、自由に旅行をし、自由に学び、自由に働く、というのを理念としました。そのためには、言語使用に関する共通基準が必要となりました。
例えば、ある人がある国へ行って勉強したいと思った時に、その人の英語力はC1レベル、でもフランス語はB2レベルなどとわかるようにしたというわけです。このCEFRの内容はとても現実的、実生活的で、教養主義ではありません。その人がある言語について「?を知っている」というスタンスではなく、「その言語を使って何ができるのか」ということを表すものです。
今、日本では小、中、高、大の様々な学校がCan Do評価の作成を進めています。その理由は、英語によるコミュニケーション力を評価するとなると、これまでの試験、テストで評価する内容だけでは評価ができないからです。
それでは、小学校ではどのようにこのCan Do 評価を使っていけばいいのでしょうか?
まず理解すべきことは、「できる」が0ベースで、その下はない、ということです。地下にも、水面下にも潜りません。上へ上へと上がっていくというイメージです。ですから、指導者として、子どもにやってほしいこと、そうなってほしいことを記述すればいいのです。皆さんが指導している子どもたちは、英語でどんなことができますか?
例えば、
グループやペアで友だちと協力的に活動ができます。
自分から手をあげて発言できます。
友だちや先生の話をしっかり聞くことができます。
聞かれたことにはすぐに返事ができます。
自分から質問できます。
笑顔で、活動に参加できます。
目線をあわせることができます。
大きな声ではっきりと話せます。
ジェスチャーを適切に使えます。
もっと具体的にあげたければ、
英語で明るく、みんなに挨拶ができます。
英語日直ができます。
「曜日の歌」を歌うことができます。
英語の絵本を集中して聞くことができます。
レストラン(ごっこ)で自分が食べたい物を注文できます。
“Hi, Friends!” などのテキストの内容に沿いたければ、
自分ができることを3つ言う事ができます。
自分が好きな食べ物を5つ言う事ができます。
行きたい国の名前をその理由とともに2ついえます。
自分のことについて5つの文で自己紹介ができます。
簡単な道案内ができます。
つまり、その学年やその学級で目指していることを決めて、それを記述し、◎や○をつけて通信簿に記載すればどうでしょうか?
それでも5、4、3、2、1の成績記載に慣れている日本人は気になります。
「じゃ、にこにこしていればいいのですか?」
「答えが間違っていても自分から手をあげればいいのですか?」と聞かれたことがありました。
国際的にみれば、日本の子どもがにこにこしたり、自分から手をあげたりすることはとても大切なことです。オーバーに言えば、それができたら、小学校英語の目標は半分は達成されたようなものです。だからそこから始めることが大切なのです。
それでも、先生たちはいうでしょう。でも、「できない子どもはどうすればいいのですか」
1つには、目標の設定が悪い、ということがあります。例えば、アルファベットの文字をいくつ書けるか、といったスキル的なことばかりを目標にすれば、出来る子どもも、出来ない子どももいることでしょう。
それよりも、自分の名前のスペリングを聞かれたら、自分の名前をアルファベットで言えます、とか、自分の名前をアルファベットを使って書けます、ということの方が将来も役にたつことではないでしょうか?また、このように限定していけば、できる子どもも増えていくのではないでしょうか?
アルファベット26文字をすべて書くというのは、実生活ではすることがありません。
これまで正解率で成績をつけることになれている先生は、このような褒めっぱなしの評価に馴染むのは難しいかもしれません。
しかし、「自分が何を教えたか」ではなく、それを教えた結果、「子どもは何をできるようになったか」という視点を持つことにより、子どもが将来、そして今も、英語でコミュニケーションがとれることがあるということを認めてあげる評価ができるのです。
まとめ
これまでの「振り返り」の時間を見直して、Can Do評価にしてみませんか?
Can Do 評価の良いところは、
先生が評価したい様々な側面が評価できる。
子どもたちにCan Do 評価をさせることで、具体的な目標を自覚させられる。
子どもたちに自己評価の習慣をつけることができる。
できる/できないではない。
できることを評価し、保護者にも伝え易い。
松香洋子プロフィール
Can Do 評価で進める英語のコースブックWE CAN!
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