2020年より小学校での英語は中学年から導入し、高学年では教科化の実施となることが、間もなく決まりそうですね。現場では教科化に向けて、様々な憶測が飛び交っていますが、皆さんの周りでは、小学校の英語活動は、現時点でどんなことに焦点が当てられていますか?
小学校段階でのゴールには、ご存じ“コミュニケーション能力の素地を養う 。”という事があげられていますが、“そもそもコミュニケーション能力の素地 って何ぞや?”と未だにモヤモヤしている方も多いと思います。そこで今日は、このゴールについて、考えてみたいと思います。
まず、当たり前ですが、人が二人以上いないとコミュニケーションは成り立ちません。しかし、それは必要条件であっても十分条件ではありません。メッセージを送る側、受け取る側がいれば良い、というわけではないのです。実はここに意外な落とし穴があると私は思っています。
つまり、人数が集まればコミュニケーション活動ができるかと言うと、そうではないのです。そこには絶対不可欠な、もう一つの要素があるのです。それは、メッセージを送る側の“伝えたい”気持ち、そして受け取る側の“分かりたい”気持ちです。言われてみればどうってことのない、簡単な事ですよね。
でも、実際の活動の中では、この“伝えたい”“分かりたい”という要素が忘れられたまま、行われている事が時々あるのです。
ある高学年クラスで、“Do you like〇〇?”というフレーズが出てきた時の事です。 ALTが、HRTと“納豆は好きですか?”というやりとりを通して、意味を伝えようとしました。納豆が好きか?と聞かれたHRTは“Yes, I do.”とにこやかに答えました。
次に、HRTからの質問に対し、ALTは顔をしかめて、”No, I don’t.”と答えました。すると、児童から“あれ?”の声が。
実は、このALT、普段は、児童達と一緒に給食を食べている中で、“納豆はおいしい”と言っていたのです。 授業の後、ALTに“どうして本当は好きなのに、嫌いと言ったの?”と聞いた所、
“外国人は納豆が苦手という設定の方が面白くなると思ったし、“No, I don’t.”もインプットしたかったから。”と。なるほど、意図は分かります。が、児童が見ていて“受け取りたい”と感じるのは、やはり身近な人の真の情報なのです。そこには“現実性”がなくてはならないのです。
ALTには、“嘘の設定に基づいてやるより、現実味のある設定の方が児童は真剣にやろうとするよ。”とアドバイスし、ALTも納得してくれました。 他に、良く見る例として、“How old are you?”と聞かれて、児童の前で実年齢を言うのはちょっと恥ずかしい、という理由で“I’m 100 years old.”や、“I’m 20(はたち).” 等と答えている場合を見かけます。
確かに、ユーモアという視点では、それもありなのかもしれませんが、先生が自分の年齢を言う時、児童達は、例え何歳かを既に知っていたとしても“先生が自分の歳を言うぞ~。”とわくわくしながら息をのんでいるのです。そのような児童の反応の方がその後の活動が生き生きとしてくるのは言うまでもありません。
要は、“相手に親しみを感じるか”、がコミュニケーションが成立するかしないかの分かれ道なのですね。お互いの真の情報があってこそ、“へぇ?、もっと知りたいな。”という“聞く姿勢”も生まれるわけです。児童が、先生やクラスメートに親しみを感じた瞬間、自発的なコミュニケーション活動が生まれるのだと私は思っています。
そこをもし、ALTやHRTの指導者側がうっかり見過ごしてしまっているようであれば、分かりやすく気づかせてあげるのがJTEの役割だと思っています。
最後にもう一つエピソードをご紹介しますね。 ある4年生のHRTから聞いたお話です。 好きなスポーツについて、一人一人が“I like 〇〇.”と答えているうちに、そのクラスにはバレーボールが好きな児童がたくさんいる、という事が判明したそうです。
でも、そんな事実は今まで誰も把握していなかったとか。そこで、児童達の提案で、“今日の休み時間、みんなでバレーボールやろうよ。”ということになり、早速その日からバレーボールがクラスで行われるようになったそうです。 4年生ですので、皆がI likeのフレーズを言えるようになったか、と聞かれたら、そうではないかもしれません。
でも、より良い人間関係作りに発展した、という意味で、外国語活動としては立派に成立した事になりますよね!”とHRTがおっしゃっていたのがとても印象に残っています。
今小学校で大切とされている、コミュニケーション能力の素地を養うというゴール。 教科化になった後も、“伝えたい”“分かりたい”気持ちを育てるという方向性は、変わらないのではないか、いや、変わって欲しくない、と願う私です。
小学校英語を民間でサポートする「J-SHINE」については
こちらから
|