松香洋子の元気ブログ

2013年5月2日

大西泰斗先生の講演会を聞きました。

4月21日(日)、福島県郡山市で、文法の参考書をたくさん書かれ、NHKのテレビ番組でも活躍中の文法学者、大西泰斗先生の講演「話すための中学校英語」を聞きました。私なりに参考になることもたくさんありましたので、参加できなかった方々のために、報告書を書きました。
以下の報告では、【 】に記載されている文は、私のぶつぶつです。


前提
中学校英語というのはとても大切で、文法の内容から言っても仮定法をのぞき、すべて網羅している。それなのに、中学英語だけで使いものにならないのはどうしてか?それは文法の教え方がよくないから。

ポイント1 
例えば、中学校では、on=~曜日に、in=~月に、at=~時に、というように前置詞を限定的に教えるが、その限定こそが英語学習の将来的な発展を阻害する。せっかく児童英語では概念を広くしかけているのに、中学英語は幅を縮小しすぎている。
【児童英語では、onは左手の拳に右手がのる、inはひろげた左手に右手が入る、atは小さなポイントをさす。これが基本概念。】 

ポイント2
英語は配置の言葉で、配置が何より大切。1つ1つの単語やフレーズを分析するのではなく、その配置に注目するのが大切。I know, I like, I don’t like,などとはじめにきたら、まずはそれを理解し、その後に単語や文が続く。英文法を解体し、品詞という考えをやめ、配置だけをしっかり教えるべき。車のエンジンの中はわからなくても、パソコンの内部はわからなくても、我々はみな車を運転し、パソコンを使っている。英語もしかり。使い方を教わればよい。
【私と一緒にこの講演をきいた(通訳をしている)人の感想。
英語を使おうとしたり、また英語を使って仕事をしようとするなら、頭からどんどん理解していくのは当然。学校文法ではそうでないのか?】

ポイント3
英語で短縮形があるのはbe動詞だけである。どうしてか?意味が薄いから。だから話をする時には、John's busy. のようになる。
【話せる英語、通じる英語、聞いてわかる英語にはこの理解が大切】

ポイント4
時制の一致は自動的に加える。中3で教える時制の一致は、すべて一致させるというのが大原則。例外は、「不変の一致」といった文法事項ではなく感覚を教えるべき。
【ある時、あるサラリーマンの方から『僕の英語はどうですか?』と感想を求められたことがあった。その人は積極的な人でどうにか英語を通じさせるすごいスキルがある。しかしまったく時制の一致ができていないので、それに気をつけたら英語のレベルがぐんと上がる、とアドバイスしました。】

ポイント5
受動態は能動態から作るわけではない。ネイティブは形で意味を判断していく。書き換え問題など必要で無い場合が多い。
【同感です。】

ポイント6
参加者の質問から。アメリカに2度行ったが、疑問文が使われていない、という印象をもった。それは本当か。答え。例えば、Do you like …?という代わりに、You like it, huh? You like it, no? You like it, right? などはたしかに使われる。しかしDo you like...?の形がなくなるといったことは絶対にない。
【しっかり学ばせたい文法事項の一つだと思います。】

ポイント7
参加者の質問から。3人称単数現在のsを上手に教えるコツは?答え。それはない。3単現のsは感覚と結びついておらず、落としても文の理解に支障はない。逆に言えば感覚が通わないため慣れてもらう以外有効な教え方はない。3単現sには意味はないが、常に付け忘れれば教養が疑われる項目。そんなことにならないためにがんばろうと励ますしかない。
【同感です。】

ポイント8
参加者からの質問。I like you. を否定文に書き換えよ、と言った意味を無視した問題がでるが、このようなことをする価値はあるのか?答え。外国語として学ぶので、どうしても筋肉トレーニングみたいに練習する必要があることはたしか。
【同感です。】

ポイント9
参加者からの質問。I’d like my steak rare.のような構文は、my steak is rare.というようにそこに文がある、という考えをたしてあげるとわかりやすいのでは? 
【そのような分析的な教え方より、私なら、I'd like my steak medium, medium-rare, well-doneを教えます!】

ポイント10
英語教員としては、どのような勉強が必要か?答え。いつもペーバーバックを買って読んでいる。なるべく会話文が多いものを買い、英語の現実をとらえようとしている。また、YouTube等を利用して本物の音声にもふれる。英語という海の中を泳いでいくには、現実の英語との格闘が必要。
【その通りですね!】

大西先生からのエール。
今、文部科学省から、大学、高校、中学、小学校まで、英語教育の改革の波がおきようとしている。これから2年間は混沌とするかもしれないが、大きなチャンス。試験に受かるためだけの英語ではなく、本当に使える英語、話せる英語に転向しよう。
【お互いにがんばりましょう!】

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