松香洋子の元気ブログ

2012年11月20日

大学入試が変わる?

11月5日(日)東京四谷の上智大学で、上智大学創立100周年+英検設立50周年のコラボにより、大学入試用のまったく新しい英検『TEAP』のお披露目会がありました。最高の秋晴れの日でしたが、一日どっぷりこの問題を考えました。

<当日のタイムテーブルと内容>

第1部(10:00~12:00)挨拶と講演
英検協会、文部科学省、上智大学からの挨拶のあと、講演が2つありました。

1)吉田研作教授(上智大学)
<TEAP 開発の経緯と日本の英語教育への貢献について>
「どんなに英語教育を改革しようとしたって、結局、入試が変わらなければ何も変わらない」本当にその通りです。日本の英語教育関係者が何百回も耳にし、また、自らも口にしたフレーズです。「それなら入試を変えよう!」と真っ向から勝負にでたのが吉田研作教授です。
あしかけ4年の歳月をかけ、イギリスのテスト専門研究機関の協力をえて、現存する国際的、国内的な、検定、資格試験、入試等をくまなく比較検討し、妥当性の実証をしながらすすめてきたそうです。

2015年から、上智大学の英語の入試をTEAPで実施する。
複数回、受験することができる。
はじめはListening, Readingのみ。その後、Speaking, Writingも加わる。
CEFR(Common European Framework)のA2, B1, B2のあたりのレベルにし、大学生が入学後、英語を使って様々なことを学んでいくのに十分な英語力があるかどうかを総合的に判断するものとする。
このような入試を一般化することにより、大学の授業がさらにグルーバル化し、活性化したものになり、高校の英語の授業も、「やっぱり英訳」「やっぱり文法」になるのを阻止する波及効果をねらう。
などのお話がありました。

2)中津原文代 (CRELLA)
<妥当性の検証データに基づくスピーキングテストの開発>
英国の権威あるテスティングの研究機関で研究を続けている若き女性研究者です。
将来のスピーキングテストは、① interview ② role play ③ monolog ④ 発展的なinterview の4種類としたい。
①の「質問に答える」が中心になるテストにとどまらず、②のようにお互いのやりとりがあるテストが必要。
③では、理由つきで自分の意見を述べられるようになり、また他者の意見を検討できるようになり、④ではさらに比較、検討、推測などができるのが望ましい。コンピュータを利用してもよいが、画面の向こうには生の人間で対応したい。
などのお話がありました。

どうやったら、スピーキング力がはかれるのか、ぜひしっかりしたものを開発してほしい、と切に願いました。

第2部(13:00~14:20)TEAP 開発と活用
出題範囲、トピック、語彙等はどのような基準で決定されていったのか?この検定が受験者にいかにフイードバックされていくのか、入学時だけではなく、入学後も、卒業時まで引き続き英語力を検定できるシステムつくりを目指しているなどの報告がなされました。

第3部(14:40~16:00)パネル「大学入試と日本の英語教育」
文部科学省の太田氏、外語大の根岸教授、立教大の松本教授、英検協会から柳瀬氏、そして上智大から二人のパネリストがでて、望まれる波及効果や、高校への影響が話し合われました。

第4部(16:10~16:40)記念講演  
スカイプを使って、イギリスのCRELLAの所長のCyril Weir教授の講演がありました。
教授はwritingが専門で、「non-test, real life」ということを何度も述べた。つまり、testのための誰に向かって何を書いているのかわからないwritingでなく、real lifeに密着したもの、また、readingしたものに密着したwriting testをと主張されました。

懇親会 (17:00~)
おいしいワインとごちそうで、いろいろな方々とお話しました。立教大学の松本茂先生にも久しぶりにお会いしました。
英検協会の方々とは、現在、小学生が19万人も受験している中で、もっと子どもの実状に合った英検2級、準1級、1級を作ってください、とお願いしました。


<特に印象に残った発言など>
1 英文和訳の能力とCloze testの結果は相関性がない。
2 英文和訳をしていると英語ができなくなる。
3 英語は世界の言葉なのに、日本の入試は日本人しかできない問題が多すぎる。
4 日本の中学生は英語は将来役に立つと思っているが、自分は英語を使う仕事につきたくはない。新入社員は海外転勤を求められたら、退職も含め考えてしまう。その理由の第1は治安が悪い。英語ができれば治安についての情報を得ることも可能になる。
5 can-do 項目を設定し、何をめざし、何ができるようになっているかはっきりさせる必要がある。
6 ごく初歩的な英会話は大学入試に含める意義がない。
7 韓国では、NEATという国家レベルの検定を設置。将来はこれを日本で全面的に採用するという大胆な計画もありかもしれない。
8 現存の英検と今回開発された入試用の英検とは、体質がちがう。
9 日本は入試の波及効果が大きすぎる。
10  センター試験を受験する50万人の受験生に、TEAPを受けてもらう日がくることが理想。4技能。複数回受験。フィードバックがある、等。

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