松香洋子の元気ブログ

2017年7月22日

 「フォニックスは小学校でどのように取り扱われるべきか」(於千葉大学)

今回は千葉大学の2年生、山本恭輔さんが所属するNPO法人企業教育研究会のお招きで、教育学部へ講演会および討論会へ出向きました。山本さんとは、高校生の時に卒業論文としてフォニックスを取り上げて賞をもらったことで知り合いました。このNPOでは年に67回の会合を開き、今回は116回目ということで、その熱意が伝わってくる皆様でした。

 

千葉大へ行ったら、以前、付属小学校で勤務していた山口先生の実践が懐かしくなり、まずはそれからお話しさせていただきました。

山本先生の当時の授業は、

  1. フォニックス・ジングルのポスターを各教室に貼って、全校放送で毎日のようにそれを聞かせて、子供たちが自然とまわりにある英語を読み始めるという自立学習の実験的な実践。

  2. Brown Bear, Brown Bear What Do You See?  (Eric Carle) の絵本を使って、子供たちが自分のバージョンをつくる。ケーキ屋、日本の歴史等

  3. エリック・カール研究ということで、英語版と日本語版の絵本をグループで発表する。

  4. かなり高度な英語の本を読み聞かせる。

 

つまり、山口先生は、フォニックスを使って子供たちが自立して読んでいく力をつけながら、日本語の力を利用しながら英語を掴ませる、ということを実践されました。このようにして育てられた子供たちが、山口先生が読み聞かせるギリシア神話の英語絵本に真剣に耳を傾ける姿が今でも記憶に残っています。

山口先生は、その当時はまだ言葉も聞かれなかったアクティブ・ラーニング、自立学習、教えない授業を見事に実践されました。

 

本日のテーマ その1

  1. フォニックスってなんですか?

  2. 小学校でどこまでやるの?

 

この日の参加者は、大学生、大学院生、教授、教員、行政の方々などバラエティーに富んでいて、フォニックスを知っている方もしらない方もいたので、まずはフォニックスの勉強をしていただきました。フォニックスのルール一覧表、フォニックス・ジングルからはじまり、発音の仕方、文字あて、単語の音出し読み、3文字単語のファミリー語読み、聞いて書く指導のほか、SWITCH ON!を使って、ストーリーという英語のかたまりから入り、映像を見ながら発音練習をする、ルールごとの単語の読みの練習などをしていただきました。

 

小学校では、最低限、子音・母音・子音の3文字単語、(hat, pen, box等)までは聞き取れる、通じるように言える、読める、読める単語は書ける、センテンスの中で認識できるということを練習していただきました。

 

本日のテーマ その2

 

  1. 小中連携について
  2. 小学生に適したフォニックスの指導法

 

「小学校」では、まず音声的に始めることが何よりも大切です。歌やチャンツ、ゲーム、絵本、様々な活動を通して、体験的に、なるべく多量の英語に慣れることが必要です。そして5年生になったら、聞いたこと、言えることが読めるようになり、6年生になったら、センテンスの書き写しができる、というくらいの段階を得て、中学校へ進学したらよいだろうと考えています。

 

「中学校」では、英語学習の出発点が変わったということは広く認められるようになってきていて、小6、中1ギャップというのは解消されてきている中学校もあると思います。そうすると今度は、中1、中2ギャップとことが問題になってきますが、中学校では小学校で慣れた英語の音声を大切にし、どこまでもコミュニケーション体験を大切にする一方、3年間にわたって、中学校の先生たちには、

  • 11つの音を出しながら、単語や文を読んでみせる(音読み)
  • 発音をしながら、文を書いて見せる(音書き)

を実践してほしいです。これは読めない、書けない生徒を生み出さない基本的な方法です。

 

 

参加者からの質問

 

Q: 文法指導は必要でないのか?

A: 小学校、中学校では、会話文、記述文などの中に文法があるという教え方をしてほしいです。つまり、単語と文法を先に教えて、それを使って会話文、記述文を読ませ、言わせるという従来の方法ではないとうことです。その例として、Show and Tellをしながら文法を練習することと、スポーツの3種類の言い方(play+ボール、一人でするスポーツ、アジアのスポーツ)を使って、練習をしていただきました。文法というのは、理解するより使えるようになるのが何より大切ではないでしょうか?

そうやって小、中を終えて、基礎的な英語らしい文をたくさん学んだら、高校では、入れ替え用の高度な単語を覚え、より深い内容を、多量に聞く、話す、読む、書くにつなげてほしいものです。

 

Q: 単語だけを並べるブロークン・イングリッシュでも黙っているよりよいか?

A: 英語は基本的にセンテンスを使って話す言葉ですから、初めから文の単位で教えていけば単語だけを並べることはなくなる筈です。日本語の特質は語順が厳密でなく、主語をしばしば省くということです。でも英語は主語と関係性を大切にする言葉ですから、単語だけで話すことは基本的にない、と理解した方がよいのです。単語だけを並べて話させるということは、つまり、何も教えていないと同じということです。

 

Q: 支援学級での英語指導

A: 年に4回、ALTが訪問してくれるのであれば、授業の流れをいつも一定に考えておけば、その都度慌てなくてもいいのではないでしょうか?つまり、まずは歌とか挨拶、次にコミュニケーション・ゲーム、数字やアルファベットの練習、フォニックスの練習もいいかもしれません。ここで、簡単な人と関わることを大切にする英語ゲームを体験してもらいました。

 

Q: その他の質問、ALTの活用、アルファベットとローマ字指導の関係など

A: ALTにはやってほしいことを明確に指示して協力してもらうことが大切。ローマ字はヘボン式に統一して使っていくのでよいのではないか、ということを話しました。

 

講演会、討論会が終了後、懇親会、二次会とあり、そうは言っても派遣法によってALTにまったく指示ができないとか、子供たちが将来も英語を使いそうにないから英語はいらないと言うとか、高校生は授業中に寝るとかだけでなく、学校にこないという手も使うとか、現状の厳しい中で戦っている先生方のお話をたくさん伺いました。

でもこのNPOのように、理想を掲げ、それに向かって決して諦めずに実践をしていくことが一番大切だとまた、また、思った一日でした。皆様、ありがとうございました。


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