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2017年2月27日

新指導要領によせて その2(全3回)

mpi松香フォニックス会長 松香洋子

レポート:小学校英語の現場から

CEFR, CAN-DO, Active Learningについて
今回の指導要領で、最終的に使用されなかったのが、この3つの横文字です。
指導要領でそれを使うと、それだけが一人歩きをして、様々な誤解を招くということで、この3つのことは指導要領の基本となっているが、用語そのものは使わない、という判断だったと聞いています。しかし、ここでは、この3つについて考えてみたいと思います。それが今回の指導要領を理解する上でキーワードだからです。

1.CEFRとは何か?

CEFR (Common European Framework) 皆様がご存知の通り、ヨーロッパで開発された基準です。言語についての部分だけをいうと、
・20年以上の研究を経て、2001年に欧州評議会(Council of Europe)が発表した。
・観光、ビジネス、留学の3つの分野で言語を使用するのが目的
・自分が行きたい国の言語をどのレベルまでできるかを示すためのもの。
・A1からはじまり、C2まである。
・日本で今回、用いようとしているのは、B2まで。

この基準を日本で用いるには、以下のような問題があります。

・ヨーロッパにおける実用本位の基準で非常にレベルが高い。
・学校での外国語教育を視野にいれていない。
・日本で利用する場合、一番やさしいA1でも基準が高すぎる。
・そこで、A1の下をいくPre-A1を設定しているが、その他にもJunior CEFR 基準とか、日本版基準を作ろうという研究者の動きがある。

それなのに、なぜこの基準を文部科学省が利用しようとしているかというと、 それは他に世界共通の基準がないからでしょう。この基準を無理でも利用することで、どうにか、日本の英語教育の基準を示そうとしています。

2.Can-doとは何か?

・Can-doというのは、文字通り、「~ができる」、ということ。
・CEFRの基準では、それぞれのレベルでできることが「can-do」で示され、世界ではじめて外国語はそれを使って「~ができる」、ということのために学ぶのであるということを示すことができるようになった。
・Can-do statement という言葉もあり、つまり、~ができるという内容を文にして表記すること。

今回の指導要領では、CEFRの基準を参考にしながら、文部科学省は以下のような小学校卒業時までに達成したい基準を発表しています。
ここで注目したいのは、聞く、話す、読む、書く、の4技能ですが、話す、の部分が「やりとり」と「発表」に分かれているため、5領域になっていることです。

「外国語」等における小、中、高等学校を通じた国の指標形式の目標(イメージ)たたき台

小学校 (CEFR レベル Pre-A1)
◆聞くこと
・アルファベットの発音をきいて、どの文字であるかがわかるようにする。
・挨拶や短いごく簡単な指示をきいて理解することができるようになる。
・ゆっくりとはっきりと、繰り返し話されれば、自分に関することや、身近で具体的な事物をあらわすごく簡単な語句や文を聞き取ることができるようになる。

◆読むこと
・ごく身近にあるアルファベットの文字を識別し、発音することができるようにする。
・音声で十分に慣れ親しんだごく身近で具体的な事物をあらわす単語をみて、その意味を理解できるようになる。

◆話すこと(やりとり)
・挨拶やごく短い簡単な指示に応答することができるようにする。
・相手のサポート(ゆっくり話す、繰り返す、言い換える、自分が言いたいことを表現するのに助け船をだしてくれるなど)があれば、自分に関することについてごく簡単な質問に答えることができるようになる。

◆話すこと(発表)
・定型表現を用いて、簡単な挨拶をすることができるようになる。
・自分の身の回りの物事に関するごく限られたことについて、簡単な語句や文を用いて話すことができるようにする。

◆書くこと
・目的をもってアルファベットの大文字と小文字を活字体で書くことができるようになる。
・例文を参考にしながら、音声で十分に慣れ親しんだ語句や文を書き写すことができるようになる。

3.Active Learningとは何か?

この用語は、今回の新指導要領が発表されるまで盛んに使われていましたが、最終的には、「自主的、対話的で、深い学び」という日本語で表記されることになりました。どちらが分かりやすいかは、それぞれの人の受け止め方があるでしょうが、これは、1980年代の臨教審の時代から、日本の教育全体がかかえる大きな問題を解決するための方策として審議されてきたそうです。 満を持して今回、いよいよ大きく舵を切ったという感がありますが、決して新しいことではありません。

Active Learningとは、
・教師が一方的に講義をするといった従来の指導法を切り替え、生徒が自主的に、対話をとおして、深い学びができるように教師は子どもを支える事。
・知識そのものは、現在においては調べ学習をし、検索をすればいくらでも手に入るので、教師が生徒に知識を与えるという必要はない、または大幅に減ったということがActive Learning導入の背景にはある。
・生徒が自主的に学べるようにするには、ペア活動や、グループ活動を多用していく必要がある。つまり、生徒間での学びが大切な要素である。
・生徒が活動を楽しんで、それで終わってしまわないように、そこに何らかのLearning が達成されていることが保証されなくてはならない。

以上を読むと自分には難しいことだと思う人もいるかもしれませんが…

・子供に英語を教えている人は、すでにActive Learningを実践している筈である。なぜかというと、子供は一方通行なレクチャーをおとなしく聞くのが苦手である。
・子供は体験主義者で、自分が体験しないことは理解ができない。だから、子供を教えている教師は必然的にActive Learningを支援している。
・Active Learningの反対は、Passive Learningであるが、中学、高校と年齢があがるにつれて忍耐力が増すため、教師が一方的に教え、それを生徒が受け身で学ぶということが可能になる。
・しかし、英語をコミュニケーションのツールとして使えるように指導することが目的であれば、Passive Learningでは絶対にその目的が達成できないことは明白である。

以上を考えると、これからの課題は…

・中学生、高校生など、内容が高度になればなるほど、それをどうやってActive Learningにもっていくかが教師に問われている。
・生徒側の意識改革も必要である。積極的に参加するのでなければActive Learningは成立しない。そのためのしつけ、例えば手をあげて自ら発言する、right or wrongだけではなく、自ら考える癖をつける等が必要になる。
・Activeに学んで、その結果、どのようなLearningがおきたかを想定し、それを評価していく方法が必要である。
・Activeに学んでいる間の、態度、参加度も評価の対象にしたい。

以上、今回の学習指導要領の背景にある3つの用語を解説しましたが、これを読んでくださる読者の皆様も、ActiveにLearningしてくださるようにお願いいたします。



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